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東方projectの二次創作(東方オリキャラメイン)

宇佐見菫子という少女と幻想郷

作者: とある幻想郷帰還者

 宇佐見菫子と私には決定的な違いがある。

 それは超能力者か凡人かなどではなく、進む者か魅了されて止まる者かの違いである。

 私から言わせれば、宇佐見菫子という少女の思考は常識に縛られた現実と異なり、幻想郷の人妖の考えに近い。それに対して、私の考えは現の常識に縛られた現実的思考といえる。

 年齢的な価値観の差とも言っていいかも知れない。

 私は現実の苦しさや荒波の厳しさを知っている。それでも尚、進み続ける事を決めた人間であり、永久に続く夢幻の狭間に止まる事を拒んだ。

 彼女は夢の中に自分を見付け、永劫に続く楽園であるだろう幻想郷に魅了され、現実を見ていない。

 具体的に述べるのならば、彼女は超能力者という特殊な立ち位置から他の人間を観察し、自分とは違う事と異能の類いが常識として存在する幻想郷に生を見た。

 そもそも、宇佐見菫子の当時の年齢は高校生の年齢である。現実そのものを受け入れるには精神が未熟である。

 他人は彼女の知識的な達観は見ても精神の成長までは見ていない。

 年齢的な達観の自分と知識人として達観している彼女との違いはそこにあるだろう。


 彼女と初めて会った時は本当に同胞を見るような瞳であった。しかし、私が異なる価値観と凡人なりに幻想郷をあとにした事を知るとつまらなそうな顔をしていた。

 それに私と彼女とでは同じものを見ているようで異なる世界を見ている──というより体験しているらしい。

 それでも彼女からすれば、自分と同じく特異の存在であるには違いない。

 特に彼女が気になっていたのはただの一般人でしかない私が傷一つなく、幻想郷から帰還したのが不思議そうであった。

 そう。私はあくまでも凡人であり、能力らしい能力に開花する事なく、幻想郷に魅入られて幻想入りした身である。

 彼女からしたら私の方が異質なのかも知れないが、それに対して私は単純に周囲に恵まれただけと答えた。

実際、私は幸運だったのだろう。私の滞在させて貰っていた紅魔館では皆、優しく親切であった。

 しかも再就職で就活中だった私に仕事までくれた。配慮されて多少、楽をさせて貰った感じもある。お蔭で現在の仕事に対しても真摯に向き合い、自分のメンタルや体力と相談しながら報告・連絡・相談が出来ている。

 紅魔館の当主であるレミリアお嬢様をはじめ、多くの人に支えられて私は次第に自信を取り戻し、現実に戻った。

 故に私が周囲に恵まれたのは事実なのだが、彼女──宇佐見菫子の見ている幻想郷とは世界線が異なるらしい。

 彼女の見る夢にも紅魔館は存在するが、内容が私とは大幅に違うとの事だ。

 私と彼女は同じものを見ているようで違う世界を見ているようだ。


 なので、私は幻想郷というのは人の数だけ存在し、その基盤以外の世界軸がその人間の見方によって異なるのではないかと考えた。

 私は科学について、それほど詳しい訳ではないが、パラレルワールドに近い何かを観測した可能性が高い。しかし、これについては宇佐見菫子の前では言わなかった。

 観測が人によって異なるという事は結局、宇佐見菫子という少女が体験した幻想郷は他者からは観測出来ない──つまり、彼女がまた孤独になるという事である。

 その事実を察しの良い彼女が理解してないとも思わなかったが、その仮説を口にしてしまえば、この世に彼女の存在を固定するものが否定され、彼女自身が更に現実において居場所を減らす事になるであろう。

 言霊にせず、沈黙するのが適しているだろうと私はその時、判断した。

 沈黙とは、このような時に美徳である。謎は謎のままが良い。暴くのも結果を追求するのも違う観測者がすれば良いだろう。

 しかし、幻想郷を知ってしまい、尚も現世にて魅了し続けられている者はその存在の謎を深く考える事をしない方が良いだろう。

 夢は夢のままが美しいものだ。そこに科学的なメスを入れるのは自身の縋る糸を断ち切る事になり得る事もある。追求し、結果を前に何を想うかはその人間次第だ。

 向かうという意思を持ち、行動に移す事で人は進化し、禁断の実を口にした。

 そして、楽園から追放される身となる。個人的な願いになるが、宇佐見菫子という少女が謎に対して疑問を持ち、科学的なメスを入れるという行動に移らない事を願う。

 彼女が求めたものは対等である。自身と同じ能力を持ち、自身と同じ立場であり、自身と同じものを見る。彼女の現実とはまさにその手の類いなのである。

 だから、彼女は理解もされず、また幻想郷以外の他者を理解せず、現実で孤立する。

 彼女と対等の立ち位置を目指すのであれば、そこをクリアしなくてはならないだろう。


 それまでに彼女が現実に留まれるかが気になるところである。願わくば、現実において彼女の良き理解者たる人間が現れる事を祈るばかりである。

 私と彼女がこれ以上、対話する事は恐らくはないであろう。現世からの完全な孤立が意味する事など想像するのは容易いが、彼女が私の導き出した仮説に到達した時を考えると干渉し過ぎてしまうのは良くはないだろう。

 彼女の幻想郷を否定する気はない。ただ、私と彼女とでは同一の存在ではなく、違うもの──違う世界を見ているのも事実だ。

 宇佐見菫子はいまでも現実で幻想郷の帰還者である仲間を探しているだろう。真に対等で同一の世界を夢見る人間を探す為に。

 最悪な結果を招く前に彼女に現実でも友を作る事が出来る事を願う。


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