序章&第一章・盗賊退治
前書き。
更新は週一ペースで。一応、構想は練ってあるのでネタ詰まりは無いと思いますが、いろいろ大変な時期だったりしますので、時折遅れるかも知れません(汗)
どうかお許しを……
あ、ブラバタって略してくれるとありがたいですw
ブラックバタフライ
↓↓ ↓↓
ブラ バタってことでよろしくお願いします!
2 序章
世の中は、混沌としていた。まさに、黒の時代であった。そんな時代に、水を得た魚のように現れたのが、魔王である。人々は、魔王と呼ぶのを避け、こう、異名をつけた【闇を得た蝶、漆黒蝶】と。漆黒蝶は、数々の地域を占領し、まるで世界を手玉に取るような、そんな風に、漆黒蝶は世界を侵略していったのである。
3 盗賊退治
小さな村が、あった。そのころは、そこが世界のどの位置にあるかすらわかっていなかったが、本能的に、彼らは自分らの村を小さいと認識していた。そんな村をどうして盗賊が襲うのか、それを知っていたのは、ナット村、二十七代目村長、アルバートのみであった。
「ふう」
村長のため息が漏れる。
「村の若者は、殆ど殺されてしまった……あと残るは……フー、グリン、リック」
「あと、俺が居る」
二階から下ってきた、青年が言った。
「なぁ、親父。そろそろ、俺も自立しなきゃなんねぇ。そのための第一歩として、俺に、盗賊退治を任せてくれよ」
「……。馬鹿なことを言うものではない。お前は、二十八代目村長だぞ!」
「何かあったとき、村人任せにしなきゃなんねぇ様な、お前みたいなヘボ村長にはなりたくないんだ!」
「何だと、ロキ! ふざけたことを言ってるんじゃないぞ!」
「ふざけてんのはお前だろ、クソ親父! 戦わなければ、明日は無い。そういってたのは親父だろ?」
……二十七代目村長の息子ロキは、青春真っ只中とは言え、多少、過度に親に反抗するところがあった。昔からチヤホヤされていたので、付け上がっていたのかもしれない。だが、彼は、正義感に溢れる、最高の村長になれる器であった。
「はぁ……」
何で、俺が怒られなくちゃなんねぇんだ! 俺はみんなの気持ちを代弁しただけだ。心の叫びは虚しくも、自らの心の中で反響し、胸が疼いた。
「こうなったら、死んででも、盗賊を倒してやる」
そう言って、向かった先は、ナット名物【ベンの武器屋】であった。
「おい! ベン。いい武器あるか?」
「おぉ。アルバの息子さんじゃないか。何、武器ならたくさんあるよ。学校で使うのかい?」
「お、おう。できればカッコイイ剣がいいんだけどな」
「……ちょっと待ってろよ」
「ふう」
ロキは思わずため息を漏らした。ベンさんと、親父は親友だ。さっきのことを、親父に言うかもしれない。そうなると、任務は、早く遂行しないとな。
ロキは一人で、仕事人ごっこをしていた。さびしいものである。
「おぅ。お待たせ! これなんかどうだ? 短いがなかなかの切れ味だ。素人が、太刀振り回すよりか、百倍使えるぜ」
「ダガー(短剣)か……。一番強い武器を参考に見せてくれよ」
「ふ、自信家だね。ウチで一番強い剣は、君の身長よりでかいよ。、それでも見るかい?」
「……え」
思わず声が漏れた。
「ま、ほかならぬ、アルバの息子さんの頼みなら、しゃあねえ。聞いてやるよ。少し待ってろ……いまそこの武器庫から……」
「まった! いいから、この剣、いくらだ?」
「え、いいのかい? ま、いいっていうんなら、とめないけどな。そのダガーはタダだ」
「タダ? そ、そりゃいくらなんでも……」
「……言いたくは無かったが。俺は気づいてるぜ。がんばってくれよ。この村の復活のためにな」
「え! あの、あの……親父には……」
「わかってるさ。俺も男だ。お前の決しんの硬さはわかってるぜ」
「サ、サンキュー。必ずこの村を変えて見せるぜ!」
「ああ。期待しているぜ!」
強い味方が増えた。今日の深夜。アジトに乗り込もう。そこで、そこで、アイツらの仇を討つんだ!
――深夜
静々と、時計の音が鳴り響き、いかにも“でそう”な時間。ロキは、ひそかに、身震いしていた。
「こ、こんなに恐ろしいとはな。しかも外は寒いし……」
「グォ……グガァー!」
怪獣と化した自分の父親に、つばを吐きながら、ロキは外に出た。
「おお、予想通りサミィ」
「ロキ君。待ってたよ」
「ベンさん!」
冬の夜に、ベンは身震いした。
「さぁ。これをもっていきな。これはな、昔、俺と、アルバで冒険したときに使ったよろいだ。これを背負えば、百人力だ」
お世辞にも素晴らしい防具とは言えなかったが、涙がでてきた。
「じゃ、ベンさん。行ってきます!」
「おう。無事で帰ってこいよ」
「はい」
笑顔で、駈けていった、ロキを見て、ベンは懐かしい、思い出を思い出していた。
村の中は、囲いがあるので、魔物は入ってこないものの、外は、魔物の巣窟だった。見渡す限りのゴブリン(子鬼)や、スライムがこちらに向かってくる。そのたび、ロキは【少年館、生きる魔物事典】を広げ、弱点などを、突き、戦っていた。
「わ! また来た」
これじゃあ、一歩も進めないよ、とロキは、うなだれた。
「えー何々? スライム(亜)カーペットに張り付いた、玩具の呪いがこもった、魔物。弱点は、なし」
「……なんじゃこりゃ」
そんな感じで、一人漫才をやってるときも、スライム(亜)近づいてくる。
「クソ。こうなったら、テキトーに剣を振り回すしかねぇ」
ブゥン、ブゥン。短剣なのに、短い剣すら、うまく扱えないロキの剣は空を切る。
「ハァ、ハァ」
次第に疲れてくるロキ。戦わなければ、明日は無い。父親の言葉が、頭をよぎる。
「オレは、弱虫になりたくねぇ!」
魂をこめた、一振りは、スライムの体を真っ二つにした。が、スライムは、二匹に増えたのみで、なおも、せめて来る。心臓は? ひょっとして、臓物や血管すらないのか?
「く、やむをないか……」
一度は逃げることも考えた。だが、それでは格好がつかない。ロキはスライム(亜)を握ると、そのまま遠くへ、投げ飛ばした。勝ち目が無い、と考えたのだった。
ロキは、北上した。さすがに、スライム(亜)は珍しかったらしく、二度は出てこなかったし、普通のスライムは、きっただけで、倒れた。ゴブリン、大グモもたいしたことは無いように感じた。そしてついに、たどり着いた。盗賊のアジトへと。
「ここか……」
いや、まだアジトとはわからない。単なる洞穴だ。だが、ロキには確信があった。ロキは慎重に洞穴の外を調査した。その結果、左のことがわかった。
・洞穴の入り口に階段や、脚立はない
・周りに落とし穴などの、警戒措置がされていない
・どうやら、数分前に、大きな男と、子供が出入りしたらしい
結局、これらのことからは何も得られなかったが、とりあえず、入るのを躊躇した。洞穴の深さがわからないからだ。万が一にも飛び降り自殺まがいのことにはなりたくない。ロキは、考えた。
「……!」
閃いた! というような顔をしてみたものの、何も閃かない。なんだかんだで、かなり時間がかかっているな。ロキに、残された選択肢はただひとつだった。
――思い切って飛び降りる。
「時間が無い。急がなきゃ!」
決めるのは覚悟。格好は決めなくていい。死をも恐れぬ覚悟を……。
「十、九、八、七、六……」
自分で自分を追い込む。それしか、方法はないと、ロキは、考えたのだ。
「二、一、零!」
覚悟は、薄っぺらだった。どうやって飛び降りたか? それは『ノリ』だ。いや、やはり、『格好』かもしれぬ。自分は、カッコワルイ親父みたいになりたくない。という、気が、一歩を歩ませたのであろうそんなことを、ロキ自身で考えていた。やがて、その理論的な思考は、恐怖に変わった。滞空時間が、長すぎるのだ。
「これで、俺もお陀仏か……」
なおも、堕ちる堕ちる……地獄のそこにつくのでは? と思ったとき、下に、明かりが見えた。
「……横?」
明かりは、筒状の、洞穴のかべから出ていた。つまり、堕ちるままでは、死ぬ。途中で、なんらかの方法をつかって、横にそれなければならないのだ。
「考えてる間は無い。賭けだ!」
そういうと、ロキは思い切り体をよじらせた。そして、だんだんと、右側による……。ズズズズ……よろいが、壁にぶつかってすれる。幸い、ベンさんのくれたよろいのおかげで痛くない。あと、一メートルほど。生死はそこで、わかれる。
「こ、怖い。怖いよ……怖いよ、オヤジ……」
初めて恐怖を感じた。死にたくない。死にたくない。
ついに明かりの原まで、来た。ここで思いっきり、飛び込む!!!
「のぉぉぉぉぉぉ」
はい。作戦失敗です。はい。膝は震える。もうだめだ、と思ったとき、閃いた。
「ダガーだ!」
ロキは、ダガーを手に取り、壁に突き刺した。
「ふぅ。これで一安心」
と、思いきや……ポキという、音がして、柄の部分が完全に切断された。またも急降下。もうだめだ、本当にもうだめだ。そう思ったとき、ロキの体は、緑色のオーラのようなものに包まれた。
「ああああああ!」
力が……湧いてくる。これなら――いける! ロキは、壁の小さな小岩をつかみ、まるでロッククライミングのように、壁を登った。そして、ついに明かりの源へ。
「ふぅ」
堕ちているときより、むしろ、今のが怖い。怖い。コツコツという足音を気にせず、俺は進んだ。奥の部屋には、三人の盗賊がいた。鈍い、盗賊たちは、俺が、近づくまで、気づかなかったが、俺が近づくと
「だれでぃ?」
と大声を上げた。
「ロキだ。ナットを襲う理由を教えてもらおうか?」
「……おれぁただ、ロデス様に……」
「ロデス……? 誰だ、それは?」
「言えネェな」
「ならば戦うのみ!」
ロキは、自分でも信じられないようなほど、威勢のいいこえで言った。
「アラァァァ!」
盗賊は、棍をもって戦ってきた。そこで、ロキはダガーを……
「あら?」
ロキが持っていたのは、ダガーの“柄”であった。
「ヤベェ……」
「ヘヘッ! どうやら、御仕舞いみたいだなぁ!」
巨大な棍で、顔を幾度も殴られる。そのたびに、意識が遠のく。
「グハッ!」
痛い。だが、その痛みが徐々に力に変わっていくような気がした。
「あぁぁぁぁ!」
「な、何だこいつ!」
「ボ、ボス! こんな緑色の人間、おっかなくて相手にできないですぜ」
「うるせぇ! お前みてぇな弱虫、どうでもいいんだ、早く“ヤツ”を見張りに行け!」
「うす!」
「ほぅら。ロキさん。早くかかって来い!」
「ああああああ!」
そう言うと、ロキは、ボスに向かっていった。その瞬間、ボスは、棍を振ったが、ロキがチョップすると、メシリと哀れな音をたて、折れた。
「キ、キサマ」
「ああああ!」
みぞおち一発、顔面二発。ボスは気絶した。その瞬間、ロキは、力が抜けて、バタリと倒れた。
「ロキ! ロキ!」
「……」
「ロキ殿!」
「うぅ……」
視界が徐々に開ける。はじめに目に入ってきたのは……マー坊?
「ロキ殿。お気づかれましたか!」
「ああ、マー坊。どうしてここに?」
「いや、かたじけない。盗賊にさらわれてしもうて」
「……(いつものことだがこいつと話していると疲れる)」
「では、ロキ様は私のことを助けに……」
「あ、ああそうだよ。(あのまま奈落の底におっこっちまえばよかったんだ)」
「では、早くここを出ましょう」
「……どうやって出るの?」
「さぁ……。そもそもここがどこであるかわからぬことには……」
「ああ、ざっと地下、百メートルらへんかな?」
「ああ、なら大丈夫です! 私の忍術、『テレポート』を使えば……」
「ああ、そうか。助かったよ。『絶対忍術じゃなくて、魔法だろ……』」
「だが、残念なことに、このワザ、対象者が、一人なのであります」
「ファーーーー!」
「ですから、ここでお別れになります。さようなら」
「ああああ!」
マー坊が「テレポート」と唱えると、マー坊は消えた。
「あの、ク・ソ・ガ・キがぁぁぁぁ!」
小一時間、暴れまわった後、冷静さを取り戻したロキ。上からは、多少の光が確認できた。
「朝か……」
「もう一度、あの、『緑の』にならないかな……」
そして、冷静に考えたとき、ひとつの事実に行き着いた。
「まて、こうすればよかったんじゃないのか?」
1マー坊が俺にテレポをかける
2マー坊が、自分にテレポする
3完璧!
俺は、「うがー」と大声を上げて地団駄を踏んだ。そのとき
「ロキ殿! ロキ殿!」
「何だよ、クソガキが!」
「村が焼かれておりまする」
「何、詳しく説明しろ!」
「漆黒蝶軍の襲来にございます。ロープをたらしますので、上ってきてください!」
「……えらい古式な」
三十秒ご、ロープがたれてきた。細身で、なんとも頼りない、限りなく糸に近い、ロープであったが、勇気をだして、上った。
「腕が、痛い」
だが、上った。親父、ベンさんが危険にさらされているかも知れないのだ。怖かった。だけど、俺しかいないんだ。
やっと、上った。まず、目に入ったのは、遠くで炎上する、“何か”だった。その何かが南の方角に無いことを祈ったが、羅針盤によると、南の西よりだった。
「あれが、俺らの村か?」
「……恐らくは、ですね。イルガスとかいう男が、仕切っておりました」
「漆黒蝶軍のイルガスか。絶対忘れネェ。行くぞ、マー坊!」
「はい! といいたいところなのではありますが、私、フローグに用があるので、失礼いたします」
そういうとマー坊は走って逃げた。
「あの、ク・ソ・ガ・キがぁぁぁぁ!(part2)」
だが、先ほどのように暴れまわっている間はない。ロキは駆け出した。途中、幾度か、ゴブリンや、スライムが攻めてきたが、無視して、進んだ。やっと村だ、と思ったとき、“ヤツ”が現れた。
「スライム(亜)……」
「ピキー!」
「……それ!」
再び、投げ飛ばした。そして、村に、どんどん近づく。アツイ。熱気が半端無い。
「クソッ!」
これじゃあ、入ろうにも入れないじゃないか!
「思い切って駆け込むか……」
「ああああ!」
ロキは駆けた。走った。ヤバイぐらい。自分が風になるぐらいに。そして、見た。燃え盛る、村、そして、漆黒蝶軍や、倒れる村人を。
「ん? 誰だ?」
「ロキだ……お前はイルガスだな?」
「ふん。インダレンド・ルーガ・ガソダム・スペシャルだ」
「……絶対偽名だから、イルガスで。イルガス! 何故村を襲う?」
「……さあ、戦って、勝ったら教えてやるよ」
「ならば剣を抜け!」
「……」
イルガスは剣を抜いた。そして
「お前ら、手を出すなよ? 俺の獲物だ」
と二十人ほどの、仲間に言った。
「では、勝負」
互いの剣が交わう。それを何度か繰り返す。
「……ハァ!」
イルガスは、後ろに退いた。そして
「……やめろ。何れ、キサマとは戦うことになる。では」
「お、おい、逃げるのか?」
「いや。あともう一つ。ナットの書はいただいたぞ。貴様にこの意味がわかるかな?」
「……ナットの書?」
ロキの頭の中で、ひとつの光景が、ループした。
――何年か前
「お父さん!」
「おお、ロキか」
「今、しまってたのは何?」
「ああ、これか?」
そういうと、親父は、一つの本のようなものを取り出した。
「なぁに? これ」
「これはな、ナットの書と言うんだ。ロキにも、これの意味がわかる日が来るはずだ」
「……今は、わからぬ。だが、時期にわかるはずだ。ナットの書の意味が」
「そうか。では、また会おう、お坊ちゃまのロキ様」
そういうと、イルガスは、意地悪い笑いをあげた。イルガスが完全に去ったことを確認すると、ロキは、自分の家へ走った。
「親父! 親父!」
「おお、ロキか」
命からがらという感じであった。父はもはや、死を待つしかないようなやけどを負っていた。
「ロキ、ナットの書は……無事か?」
「――!」
それほどまでに大切なものだったのか、ナットの書は。俺は正直に言なかった。
「無事だよ。ところで、あのナットの書ってなんなんだ?」
「ナットの書は……古……巨人が……復活の……儀式」
空白がありすぎて、意味がわからない……だが、必ずや、イルガスから、ナットの書を奪い返してやるぜ。
「オヤジ……すまなかった。盗賊は倒した……だから、生きてくれよ!」
「ああ、見えない。ロキそこにいるのか? ロキ、お願いだ、聞いてくれ」
「なんだ?」
「ナット二十八代目村長としての心得だ」
「お、おお」
「一、戦うのは正しきのため。二、戦うのは仲間のため三、戦うのは守るため……」
血を吐きながらもしゃべり続ける親を見て、ロキは辛くなった。
「もういい。もういいよ親父……」
ロキは父を抱きしめた。
「ロキ……お前は、生きろ。そして、戦……え」
「わかった。必ず仇を」
涙としゃくりで、これ以上喋れなかった。父はそこで、息絶えた。徐々に冷たくなっていく、父親に、ロキはキスをして、自分の服を、父の顔にかけた。
「ありがとう……オヤジ」
道に転がる人々、殆どが顔見知りだった。その中にはベンさんの遺体もあった。
「ベンさん……ありがとうございました」
親しかった人に、別れを告げ、復讐のために、ロキは旅に出た。