天原翔の日常
三枚舌と縊り姫
「暑っちぃ......」
朝から数えて何度目になろうかという恨み言を、天原翔は頭上の太陽へ向けて言い放った。
季節は八月、世間は夏休みシーズン真っ只中だというのに、うだるような暑さに晒されながら今年から母校となった高校へと彼が歩を進めるのには理由があった。
補習である。
彼は今年の春、中学を無事卒業し高校へと進学した。県内でも中の上程度の偏差値を誇る高校に、下の中程度の学力しか持たない翔が合格できたのは奇跡としか言いようがないだろう。
そして、希望で胸を膨らませながら始まった高校生活初めての授業、そこで彼は奇跡の代価を支払うこととなった。
そう、授業のレベルが高すぎたのだ。
数学は英語の授業かと感じるほど、上から下までXやらYやらアルファベットで敷き詰められた暗号文の羅列であった。
そして一方の英語は英語ではなかった。
おそらくドイツ語か何かの授業を誤って選択してしまったに違いない。
そう現実逃避せざるを得ないほどレベルが高かったのだ。
必死の努力もむなしく、中間、期末テストでは校内最下位という称号を獲得し、進学早々進級を危ぶまれた彼は晴れて補習の運びとなったわけである。
身から出た錆、自分自身でもそれは十分に理解している、しかし理解したことで不甲斐なさが消えるわけもない。
「暑っちぃ......」
そんな感情をため息として吐き出すかのように、またも彼はサンサンと輝く太陽に向けて、恨み言を放つのだった。
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その後も考えうる限りの愚痴を溢しながら彼は学校へと到着し、三階にある自分のクラスの扉を開く。
「よお、遅かったじゃないか」
「これで三馬鹿トリオが集合だね」
「登校早々不名誉で馬鹿丸出しなあだ名を付けるのは止めろ。本気で凹む」
すると、そこには幼馴染みである、岩国大悟と結城凜花の姿があった。
彼らとの出会いは小学校入学前まで遡る。
先の戦争の体験者であり生還者でもあった翔の祖父は、いざというときのためにと様々な武術を彼に体験させた。
その時に大悟の祖父が開いている総合格闘術の道場を訪問する機会があり、彼との初対面を果たしたのだ。
道場を訪れる頃には、翔のスタイルは剣道に固まりつつあった。そして才能もあり、周囲にかなり持て囃されたため、子供らしく調子にも乗っていた。
そんな中で行われた大悟との模擬試合。
勢いよく振るう翔の木刀は虚しく空を切るばかり。反対に大悟の狙い済ました拳は翔の顔面に吸い込まれ、翔の延びきった鼻っ柱は物理的にも精神的にも叩き折られることになったのだ。
そんな物騒な出会いではあったが、この敗北によって翔は努力の大切さを学びなおすことができた。
以来彼とは軽口を叩きあう友人として、お互いを高めあうライバルとしての関係を続けてきたのだ。
同時期に、結城凛花とも幼馴染であった大悟の紹介で知り合うことになった。
彼女も彼女で明るくはきはきとした性格だったために翔と気が合い、今まで友人としての付き合いを続けてきたのである。
そしてそんな彼らが、なぜ翔同様補習という極めて不名誉な舞台の席についているのかというと、これまた単純な理由である。
二人はそれぞれ柔道と華道の推薦で入学している。
そのため入学試験の評価もある程度優遇されていたのだ。そして二人揃って勉強嫌い。奇跡の対価を支払うことになるのは当然だった。
三馬鹿トリオという凛花の言葉に自分も含まれていることで、補習が始まる前から若干心に傷を追いつつ翔は席に着いた。
「やっぱ、補習は俺たち三人だけなのか? そうだとすると、中学時代の先生方に申し訳なく感じるな」
「はははっ、なっちまったもんは仕方ない。それにまだ留年したわけでも、ましてや退学になったわけでもないんだ。先生方だって俺たち卒業生の頑張りをあの青空から見守ってくれてるさ!」
「馬鹿野郎!その言い方だと先生方もこの世から卒業してることになるだろーが!」
幾人かその光景が想像できる老教師の顔が浮かんだが、まだ旅立ちには早いはずだ。
「あはは!相変わらず二人の漫才は息ぴったりで面白いね」
「拾われないボケほど悲しいものは無いからな」
この二人の場合、天然か意図したものかは関係なくボケを積み上げていくため、ツッコミに回るのはいつも翔の役目だ。
「でも、今回の補習は私たちだけじゃないみたいだよ」
「そんなことあるのか? 言いたかないがあんな点数取れる奴なんて俺たち以外にいないだろ」
見るのもおぞましい二桁の数字。赤点の恐ろしさを理解できるのは実際に経験した者だけだろう。
「部分的に正解! 神崎さんは私たちとはいろんな意味で違うからね!」
凛花の声と共にガラガラと教室の扉が開く。そして、一人の少女が入室してきた。
大和撫子を体現したかのような上品な立ち振る舞いと腰まで伸ばした艶のある黒髪。そして多くの人間が美少女と断言できる整った顔立ち。
それが凛花の発した名前の人物である神崎姫野であった。
教室に入った彼女はこちらにぺこりと一礼すると、自分の席である窓際の一番奥に座り、静かに補習の準備を始めた。
彼女に気を使ったのか、続く凛花の声は若干トーンが落ちる。
「うひゃ~、いつ見てもいいとこのお嬢様って感じで眼福だね~」
「お前だっていいとこのお嬢様だろ」
「ふっ、そんな昔のことは忘れちまったよ」
「現在進行形だバカ」
彼女も華道の名家出身。世間一般で言うところのお嬢様であったはずである。
翔から言えることは育て方一つで人は変わるということだけだ。
「にしてもどうして神崎さんが補習なんかに顔を出してんだ?場違いにもほどがあるだろ」
「ふふん、知りたい?」
「まぁ、知りたいっちゃ知りてーけど」
「そうだな、俺も気になる」
「実はね......」
凛花が説明に入ろうとしたその時
「は~い、それじゃあ補習を始めますよ~。皆さんしっかり出席なさってくれていて安心しました~。今年の生徒さんはやる気はしっかりあるみたいですし、私も皆さんが進級出来るように頑張りますね~」
のんびりとした声をあげながら、今回の補習を担当する女性老教師が教室に入ってきた。長年補習を受け持ってきた人物らしく、物事を教えることに関しては学校随一であると噂されている。
今回の補習も彼女の好意によって実現したものだ。
彼女がいなければ三人は補習を担当してくれる教師を探して学校中で頭を下げる羽目になっていただろうし、運が悪ければ入学早々追試からの留年決定が決まるところだったのだ。
間違っても足を向けて寝られない。
「それじゃあ、翔君、初めと終わりの号令をお願いできるかしら?」
「俺ですか?」
「ええ、申し訳ないのだけど毎年補習の授業は意欲評価の関係で、進級が一番危ない子にお願いしてるの」
「「ブフッ!」」
老教師の言葉を聞くや否や二人分の吹き出す音が聞こえてきた。
振り向かずとも大親友達のものだとわかる。せめて出席番号順などオブラートに包んでほしかった所だが、どうせどこかで露見していたことだろう。
「わかりました」
二人への仕返しを心に深く刻み込み、笑顔を作りながら翔は補習に挑むのだった。
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補習も佳境に差し掛かり、総まとめとしての挙手制の問題回答の時間へと移っていた。
最後に出された問題は
( ) Time is it
という英文に、正しい単語を入れるというごく一般的な穴埋め問題だ。
「ヒントは5W1Hですよ~」
「先手必勝!この勝負もらったよ、正解はHowだね!」
老教師のヒントが終わると共に元気な掛け声で凛花が回答した。
「あ~、先生の言い方が悪かったですね。5Wの中から回答してください」
しかし、回答はとんでもない空振りだったようだ。申し訳なさそうに教師が訂正したが、申し訳ないのは彼女の頭であってヒントではないのは明らかだ。
そして凛花のことだ。問題を理解しての回答ではなく、最初に答えて当たっていた場合が一番評価がいいだろうという浅はかな理由での回答だろう
「い、今のは素振り、正解はWasだね!」
わけのわからない言い訳と共に続けて凛花が回答する。
「残念ですが違いますね」
成績は三振のようだ。あきらめたように凛花は机に突っ伏した。
「凛花、仇は取るぞ!Timeなんて時間に関する単語が入ってるんだ。正解はWhenだ!」
今度は大悟が仇などと競い合いそのものを忘れた発言と共に、彼にしては珍しく理屈を絡めた回答をする。
「不正解ですが、考え方は英語の勉強をしていることが伝わっていて悪くないですよ~」
「くっ、無念」
教師に精いっぱいのフォローを貰いながらも残念そうに大悟は机に突っ伏した。
そんな彼に合掌しつつ、翔は心の中で最後まで回答を待った自分の勝利を確信した。
「二人の骨は拾ってやる!正解はWhereだ!」
「あちゃ~、外れですね~。答えはWhatです」
「はえっ?」
どうやら三人揃って地面の肥やしコースのようだ。
選択肢が一つになってから答えるのが正解だったかと、補習の意味を一切考慮しないことを考えながら翔も机に突っ伏した。
「それじゃあ、次の問題を姫野さん、よろしいですか?」
「はい」
そんな茶番劇を三人が繰り広げている間にも、神崎姫野は着々と問題を進め、太陽が中天に差し掛かかるかといったタイミングで帰路についていた。
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夕暮れ時、小高い山の中腹にある道場の中で、翔と大悟の二人は白い胴着姿で向かい合い、日課の組み手を行っていた。
翔は木刀を握る一方、大悟は拳と足にプロテクター目的のバンテージのみ。
何度かのぶつかり合いの後、翔が木刀の有利な距離へと下がろうとした瞬間に、見越していたかのような位置に大悟が回し蹴りを放ってくる。
「フッ!!」
そのままでは側頭部に突き刺さる鋭い蹴り。
「毎回、毎回大技を使いやがって、いい加減見慣れてんだよ!」
翔は首だけを素早く後ろに下げることで躱し、屈みながら居合の構えを取って回し蹴りに潜り込む形で腹部に一撃を加えようとする。
おそらく腕で防がれてしまうだろうが、片足のままで完璧な防御を行うのは不可能のはず。攻撃によって崩れた所にさらに連撃を叩き込んでやろうと翔は考えていた。
「おまえこそ、毎回、毎回カウンターを狙いすぎなんだよ!」
しかし、応じるように答えた大悟の声によって翔はあることに気付いた。
振りぬいたはずの回し蹴りの足が、空中でぴたりと止まっているということに。
(フェイント!?)
とっさに回避へと方針転換しようとするも、勢いよく地面へと振り下ろされた大悟のかかとは、居合の構えで前に出していた翔の右足の指へと突き刺さった。
「っー!?」
堪えることの出来ない激痛。翔は思わずうずくまってしまう。
のたうち回らなかったのはせめてもの矜持だろう。誰がどう見ても継戦は不可能だった。
「あー、いいの入ったね~。どうする? スプレーいる?」
道場の隅っこでスマホ片手に二人の組み手を観察していた凛花が、カシュカシュと冷却スプレーを振りながら尋ねる。
「痛っつつ......いい......大丈夫だ」
翔はまだ同じ体勢のままうめき声をあげていたが、痛みの峠は越えたのか少しばかり声には張りがあった。
「これで今年は165戦中83勝82敗だな、去年はお前の新しい立ち回りのせいで負け越しちまったが、このままなら俺の勝ち越しだな」
「あー、くっそ、言ってろ」
「うんうん、友情のワンシーンだね。数年後、この友情が引き裂かれるとは三人は知る由もなかった」
「不吉なこと言ってんじゃねぇ。てか誰目線だ。こっちはまだ詰められかけた指のせいで余裕が無いんだよ。余計なツッコミ入れさせんな!」
「え~、案外余裕あるじゃん。それなら組み手も終わったんだし、休憩に行くよー」
そう言って凛花は翔の襟首をつかんで道場の外へと引っ張っていく
「あっ、馬鹿! 堪えてるだけでそこまで余裕は......痛だだだだ!!!」
「はっはっは!俺も休憩するか」
一名の犠牲者を出しながらも三人は道場を離れ母屋へと向かうのだった。
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「でも実際、身を守ってくれる人がいる環境というのは、今のご時世とても大きな物なんだよ!」
二人が胴着から着替えクールダウンを行った後、凛花が急にスケールの大きな話を切り出した。
「ま~た変なこと言いだしたぞ。大悟、叩いて直してやれ」
「よし任された」
「ストップ! ストーップ! 私は正常も正常! アイアムパーフェクトヒューマン! 無力な麗しの乙女の一人としましては、こういう事件が近所で起こっていると信頼できる幼馴染の存在をありがたく感じてしまうわけであります!」
「あー、それか......」
凛花にスマホの画面を見せられた二人は納得した。
それは最近ここら一帯で起こっている奇妙な事件をまとめたニュースサイトだった。
始まりは、とある老人が深夜に騒音をまき散らす近所の若者への脅しとして、高枝切り鋏を持ち出し家へと押し入って誤って若者を傷つけてしまったという、よくある傷害事件だった。
しかし、この事件の翌日に今度は夫婦のトラブルで夫を切り付けてしまった事件、パワハラ上司を滅多刺しにして殺してしまった事件と、この近辺で傷害及び殺人事件が毎日のように起こっていたのだ。
犯人がしっかりと捕まっているということで地域の封鎖や外出の自粛要請こそ起こっていないが、偶然と呼ぶにはあまりにも早い頻度と回数だ。
そのため、この地域に根付いた呪いが形になっただの、テロリストによる治安悪化工作だのいろいろな噂が立てられそれなりの騒ぎにつながっていたのだ。
「確かにここ最近はこの事件ばっかりで、朝のニュースで取り上げてられても、あーまたかって感じだよな」
「あぁ、感覚の麻痺? ってやつが起こってるよな。最初にこの町で事件が起きたときはみーんな家に引きこもってたのに、今じゃ商店街でおばさんたちが井戸端会議だぜ」
「そう!そのことで我が身の幸運を噛みしめていたわけなのです!」
「だとしても実際に刃物持った人間が目の前現れたら、どんな達人でも身がすくむって言うぞ。半人前以下の俺と大悟がいたところで、大して力にはならないんじゃねーか?」
「ちっちっち、やっぱり翔はお子ちゃまだね~。女の子っていうのはいざっていうときに守ってくれるかもしれない肉盾に安心感を感じるんだよ?」
「誰がお子ちゃまだ。それに肉盾じゃやっぱり守り切れてねーじゃねーか!」
肉盾の元々の意味は死兵。要するに捨て駒だ。
人としてカウントすらされてない扱いをされるくらいなら、子ども扱いされても構わないし、こういう強かな異性が身近にいたからこそ、自分の思春期は遅れているのではないだろうかと翔は思った。
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休憩を終えた翔と凛花は、大悟とも家で別れを告げて、岩国家の玄関口で帰る準備をしていた。
「まぁ、そんなわけだから帰りはよろしくね。素敵な王子様?」
「今更遅いだろそのセリフ......」
毎日送り迎えはしているからこそ冗談でも肉盾扱いはされたくないものだ。そんな翔の不満顔をみて凛花は言葉を付け加えた。
「じゃあ、ボディーガードの報酬として何か教えてあげるよ? 流行でもいいし、噂でも勉強でも女の子の情報網でなんでもござれだよ」
「んな、いきなり言われても......」
突然の報酬提示に翔は思わず悩んでしまう。
毎日のように顔を合わせている友人に改めて聞くようなことは少なく、気になったことなどはそれこそ質問してしまうため選択肢は少ない。
勉強についてはドベと二番か三番目で教えあったら、恐ろしいことなるのは明らかだ。流行も女子中心の流行を聞いたところで生かせる場所は少ないだろう。
そうなると噂かと、そこまで考えて翔は学校で聞きそこなった話題のことを思い出した。
「そういえば、昼間に神崎さんが特別だって話してたよな? あれってどういう意味だったんだ?」
「ほほ~う。旦那ぁ、そのチョイスとは色気づきましたな?」
「違うわ! お前が話をもったいぶったから気になっただけだ!」
「ぶー、つまんないのー。まぁ、私もせっかく手に入れた噂を話さないままなの勿体ないし、いいよ。神崎さんってね、とんでもなく古い巫女さんの一族なんだって」
「巫女さん? それって神社とかで神主の補佐とかやる一族ってことか?」
「はい落第!」
「誰が落第だ!」
一歩間違えれば現実になる言葉を、安々と口に出さないでほしいと翔は思う。
「そんなJKが正月バイトでやるようなものじゃありません! 神崎さんの家って神様のお願いを聞いたり捧げものをしたりする本当の意味の巫女さんなんだって」
「ん? んー? えーと...つまり神様のメイドか?」
「え? あー......先生も巫女さんについてはそれしか言ってなかったから......たぶんそれでいいんじゃない?」
その説明と理解だと、二人揃って前述の落第になってしまうわけだが。悲しいかなそれを訂正できるものはこの場にはいなかった。
「まぁそれはそれとして、その巫女さんのお仕事のせいで小っちゃい時から全国の有名な霊山とか霊場で修行してるんだって。そのせいで引っ越したり、授業の遅れを取り戻すために補修に参加してるらしいよ? ほら、一学期もちょくちょく休んでたでしょ?」
「そういえば神崎さんって休みがちだったな。そういう理由だったのか」
病弱な人かと思っていたが、実際はとても勤勉な人物だったらしい。
心の中で思わず頭が下がると共に、嫌々ながら補習に参加している自分を含めた悪友二人が本当にやべぇ奴だという考えを心にしっかりピン止めしておこうと思った。
「まぁ、そんな感じで友達ができる前に引っ越しって生活が続いてるらしくって......今回の補修で少しでも仲良くしてあげてって先生に頼まれたて、昼休みか補習終わりに話そうかと思ってたのに。まさか昼前に彼女は補習を終わらせ、我々は夕方までかかるとは思いませんでしたな教授!」
「その提案をした心優しい先生のことを思うと本当に耳が痛いな助手! 明日は任務を遂行できるように覚悟しておこうじゃないか!」
「そうですね! 幸い明日は今日の宿題から出してもらえるようですしね!」
「は? 宿題?」
そこで翔の悪乗りは唐突に終わった。
聞き覚えの無い単語。家で一人でやっても身につくまいと思い教科書を含めた全てを学校に置いてきた自分。そこから導き出される答えによって、彼の顔からすーっと血の気が引いていく。
「え、まさか忘れてたの? そういえばその話をしてた時の翔、机で燃え尽きて......」
彼女の言葉が終わる前に翔は走り出していた。
「悪ぃ、学校に戻る! 大悟のとこで少し待っててくれ!」
「えー! ちょっとー!」
学校へ向けて全速力で坂道を下る。
この時の自分の選択が、後の悪魔との出会い、そして大戦と呼ぶべき戦いへと続いていくことを今の彼が知るよしもなかった。
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