自らで体験しろと言う事
魔力の話の後に聞かされたことは、主にこの世界の事だった。
この世界の『人』にあたる存在は人間だけでなく、それぞれの動物が進化によって人となっている、地球と同じく球体である、魔法の発達の為、地球程科学が発展していない等、あらゆる事の概要を聞き、やはりよくあるファンタジー、異世界モノだなぁとしみじみ思う戸部だった。だが、この声の主は概要のみで、詳しい説明はしてくれない。
「先ほどから概要というか、簡単な説明しかしてくれていない様に思うのですが、せめてもう少し踏み込んだ事を聞きたいのですが」
「そうしたいのですが、他にも話すべきことがありますし、一つ一つを丁寧に説明していれば本当に夜になりますよ?それに、比較的安全な場所に転移はできましたが、魔物が活発になる夜になるとさすがに安全を保障できませんし」
「ならどこかの町なり村なりの中に飛ばしてくれればよかったのでは?」
「自身のテリトリーの中に突然異物がやってきた時ってどういう行動を取ると思いますか?」
「…なるほど、排除されるか面倒な聴取が始まる、と…でもそんな早くに分かるものですかね?どんな規模でも人数等の把握には時間がかかるものの筈ですが…」
「人がそこまで管理できるのに科学が発展していない理由を考えていただければ分かると思いますよ?使える技術が違っても、その力の使い方は案外似通っているんですよ」
そう言われて少し考えたが、魔法で感知する分少しだけ把握が早そう、というぼんやりとした事しか出てこなかった。まぁ、灯り、料理、仕事等、あらゆることが魔法で代替されていて、結果何かしら管理する技術体系が築きあがっているんだろうとは思うが。
と、そこまで考えたところで、そもそもがそこまで管理しているのか、という疑問がうかびあがった。力を入れれば入れるほど、人員とコストがかかると思ったのだ。そのことを聞いてみると、
「それはその国、その町それぞれで異なってきますので何とも言えませんね。ただ、大体は税金を徴収してその一部から管理にあてているか、民間組織に頼っているかになります」
「民間組織?」
「はい、民間組織です。ゆるい自警団や傭兵的なものと思っていただいて構いません。というか、まぁぶっちゃけちゃいますと冒険者ギルドなんですがね」
「魔物がいるからまぁそういう組織があるんだろうなぁとは思ってましたが、そこまでファンタジー踏襲した名前じゃなくても…」
「価値観も似てくるってことじゃないですか?まぁ、名前うんぬんは置いておきまして、それぞれに管理するための方法があるとだけ言っておきましょうか。どういう風に管理しているかはすぐに分かると思いますし」