使ったことがある?
「魔力核…ですか?」
「あら?ご存じありません?すべての存在がこれを所持しているのですが。これは貴方の世界も例外ではありませんよ?」
そう言われて戸部は非常に驚愕した。一体自分の身体のどこにそんなものが存在しているのだろうと思う。
人体は電気信号で動いている。身体は沢山の水と様々なもので構成されている。維持のために食事を摂り、水分を摂り、それによってエネルギーを得、日々を生きている。戸部にとってそれが常識であり、魔力などというよく分からない力が流れていると言われても実感が沸かない。
そのような事を言うと、声の主は少し考えたうえで、
「そうですね…まぁ早い話が心臓にあたる臓器がそれにあたるんですけど、それだけで納得できないですよね?」
「まぁ…そうですね。一応『核』だから重要なもので、つぶれればただ事ではないくらいにしか認識がないですが、だからこそ心臓がそれだということだけは理解できますが」
「まぁ、基本的にこちらの人々みたいに普段から使用する環境が整っていなければ一生使わずに終える、ということも珍しくないですからね。稀ではありますけど」
「ということは俺も使ったことがあると…?」
「はい。戸部さんも使用した形跡がありますよ?地球だと外に放出する技術が物騒なものばかりで代替されているのでその使い方をする人はいませんが。集中した時に体内時計と比べて周りの動きが遅くなる、ある行動をする時のみ正確に行うことができる、こういった場面ではほぼ確実に魔力が使われている形跡が残っているんですよ」
「と言われてもちんぷんかんぷんですが、まぁそういうものがあって、俺も無意識に使ったことがある、というのは…まぁ、わかりましたとだけ言っておきましょうか。それで、いじったとは?」
本音を言えばあまり理解していないが、本気で日が暮れるんじゃないだろうかという心配もあったため、また追々として棚上げし、本筋に戻す。
ただ、心臓をいじられたと聞いて内心穏やかではなかった。いらんことしてないだろうな?と内心恐々としている。
「内的な使用だけでなく、外に放出できるように回路を少し広げました。ただ、筋肉が使われないと衰えるのと同じように、使われないために魔力の回復が遅い状態では自滅行為になってしまうため、こちらの世界の人並の回復速度になるように調整をさせてもらってます。と言ってもこれは半ば自動的に行われるものですので、ここでもう一つお詫びと思い、もともとの貯蓄量を幾分か増やしてます。まぁ、これに関しては魔力核だけでなく、身体にも多少の調整が必要でしたが、これから過ごしていく上で何も支障はないので安心してください」
力を得るには何かしらの代償が必要だと思っていたので、結果的には何も不自由を被らない上で強化をしてくれたことに安堵した。この世界に殺されながら飛ばされている、という現状に目を背けただけだったが。
「使い方についてはそちらの本を参考にしてください。最低限必要な知識は載っていますので。それで、次の話に移りますが…」