【短編】夜中、君は"僕以外"に会いに行く
夜中にバーと書いた思い付きお話~
今の世の中、こういう方いらっしゃる気がする。うん。
ねぇ、君にとって僕はどんなんだろう。
どんな存在なんだろう。
僕は、君を受け入れているつもりだけど
君はその瞳で誰を見てるの?
「こうちゃん...?」
重そうにその軽い瞼を上げる姿に、ついいつもの様に微笑がこぼれた。
「なんでもない」
「..ん?...何がなんでもないの?」
「ん?んー..ごめん。忘れて」
一瞬不思議そうに首を上げた彼女だったが、少しして納得したのか、また胸へ顔をうずめてきた。
ふんわり香るラベンダーの香り。そっか、今日からシャンプー変えたんだっけ。
ゆっくり瞼を下す。
スー、スー、と静かな息継ぎはまだまだつづく。
それがまた眠りを誘う。
針の音が止まった。呼吸が楽になって、体が軽い。
でも、真っ暗だ。何も見えない。いや、わざと見えないように誰かが仕組んでいる...?
ハッと目を覚ますと、体制がラフになっているのに気が付いた。
少し冷えた空気が布団の中にたまっているのがわかる。
そこには、彼女の姿はなかった。
それでも彼女の残り香だけは残っていた。忘れないあの"ラベンダーの香り"が。
「...くそ」
布団を剥いで、彼女が歩いた道筋をたどる。
パソコン前の椅子、次に廊下へ出てキッチンへ。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気飲み。
洗面所で歯磨きを済ませ、そのまま髪を整える。
「おっ...と」
流しに一本の細長い毛がおちていた。きっと彼女が忘れたのだろう。
そのまま再度寝室へ。
クローゼットを慎重に開けて、着ていく服を細い目で選ぶ。今日は...そう、フリルのワンピース。
ピンクの...少し、角度的に少し..透けて見える..あれを。
あれを着ていったのか..そうか。
持ち物チェックOK、いざ出発!
「はぁ...俺は何をやってんだ」
他の男の腕の中に、自分の恋人がいるかもしれないってのに...俺は。
なんで...
「許しちまうんだよ..」
バカ野郎...。
END
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他作もぜひ~ピヨピヨォォォ!!!(深夜テンション)