賢者
ほとんどの施設に不可視化をかけ終わり、港に来た時だった。
そこには、三連装式の主砲が付いた大きな船、いわば戦艦が四つ、豪華客船の隣に並んでいた。
「こちらの戦艦は、マスターの魔方陣を使い、自然の魔力を鉄に変換しできた鉄を使い、魔力を粉末状にし、それで魔方式を描いた装甲を三重で取り付けています。これらの魔方式は、船にある魔力精製炉で作られた魔力を送り込むことによって魔法式を起動させています。これにより、世界、いえ宇宙初の試みによってできた四つの大型戦艦なのです。型は、マスターのデータを見て、それを再現しました。」
「そうではなく……いや、何でもない」
「とりあえず、不可視の結界を張るから。そこから出ないでくれ」
「わかりました」
不可視を付与し、その場を後にするのだった。
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全ての物に不可視を付与し終わった真昼間
その男女の一行はやってきた。
正確には、男一人の女三人なのだが。
「ここに来るのも随分と久しぶりだな」
「相変わらず、何もないとっころだ」
「そうね」
「まあ、いいんじゃない?」
「…」
最後の一人、一行居り少し距離をとっている少女は頷くだけだた。
「…何もないな」
「それはそうだろう。お前の全力を受けて残っていたらすごいぞ」
「そうですね。また見たいなぁ」
「それは無理だよ、なんせ強すぎるからね」
コクコク
「ねえねえ、もう異常はなかったんだから早く帰りましょうよ」
「そうだな、速く帰って夕飯を作らなくては」
「この前焦がしていましたものね」
「う、うるさい!」
「う~ん、なんか気になるんだけど、まあいっか。じゃあみんな、帰ろうか」
勇者らしき好青年がそう言うと、先ほどまで黙っていた少女が手を上げる。
「ん?なに?」
「もう少し、ここに残ってみようと思いますので、お先にどうぞ」
「そう?まあ、住むところも別だし、よっぽどのことがないと負けることもないだろうから。この後、家に来る?」
「いえ、このまま自宅に帰ります」
「そうなのか?住む町が離れてるから、なかなか会えないからな、まあまた機会があったら」
「ええ、それでは皆様、お元気で」
「ああ、君もね、リーネ。『テレポート』」
そうして、そこにはリーネと呼ばれた赤髪ロングの、ローブを着た少女は一人残った。
「やはり、何らかの魔力を感じますね。この島、というより、ここ一体でしょうか」
そうして、調べていくのだった。
彼女は勇者パーティーの祐逸の知識であり、ハーレムメンバー外の少女であった。
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「おい、帰らないぞ、どうすんだよこれ」
「別にいいんじゃない?そのままで」
「リエル、お前わかってんのか?不可視化じゃあ臭いは消せないんだぞ?ということは料理は無理」
「・・・ちょっと、速く何とかしてよ。もうペコペコなんだけど」
「だから、どうしようかって相談してんだろ!」
「ん?そのあたりで声が。誰かいるんですか?」
外にいた、リーネという娘がこちらに近づく。
「おい、触られたら、不可視は解かれるぞ。どうする」
「知らないわよ、ああ、あああ、当たっちゃうって」
「誰かそこ、に」
リーねと呼ばれた少女の目の前には、現代的な光の塊が目に飛び込んできた。
「こ、これは一体…」
きょろきょろ見渡す。
仕方がない、出て行くとしよう。
「やあ、そこのお嬢さん、何か困りごとかな?」
俺は、引きつったような笑みを思わず向けてしまった。
それがよほど不気味だったのか、
「…!!!」
と言って、気絶してしまった。
解せぬ。
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私の名前はリーネ、賢者です。
この世界の行く末を見守るという目的のため、世界より不老を手に入れた者。
五年前、十代の少年が異世界より召喚された。
その名も、勇者コウキ。
これはすぐにその頭角を現した。
やがて、魔王討伐のため、パーティーが組まれた。その中の一人が賢者である私なのだ。
正直、最初から最後まで私より弱かった。
それでも、勇者として魔王を倒したのだから、やはり勇者なのだろう。
そして、パーティーの面々が次々とコウキに口説かれ、惚れていった。
故に、リーネは一人になった。
さて、これまでの話は、過去のこと。
そして現在、勇者一行が返っていった後に、周囲のことを調べていると、ひそかな声が聞こえた。
「・・・ちょっと、速く何とかしてよ。もうペコペコなんだけど」
「だから、どうしようかって相談してんだろ!」
男女の喧嘩のような声だ。
「ん?そのあたりで声が。誰かいるんですか?」
私は不意にそちらに向かって歩く。
「おい、触られたら、不可視は解かれるぞ。どうする」
「知らないわよ、ああ、あああ、当たっちゃうって」
「誰かそこ、に」
そこには、一面に広がる大きすぎる屋敷と、二人の男女がいた。
「こ、これは一体…」
辺りを見回し、この世界にはあり得ない物を垣間見る。
「…!!!」
脳の理解を超え、私の意識はそこで途切れた。
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「おい、どおすんのこれ」
俺は、目の前に倒れた赤髪の少女がいた。
「まったく、タイラ、ちょっと手伝って」
「ああ、で、どうするんだ?」
「こんなところに置いとけないでしょ?屋敷に運んで、後はお任せね」
俺たちは、屋敷の余ってる部屋の一つに彼女を運び、オートマタに後を任せる。
「しかし、これどう説明するんだ?」
「しょうがないわ。ありのままを話すわよ」
「俺は構わんが、良いのか?」
「ま」、しょうがないでしょ、というかタイラの事、私も知らないんだけど」
「ま、まあまあ、今までその機会がなかっただけだって」
その後、夕食を食べ、寝る。
翌日
「今日は、いつもより暖かいな」
「そうね、サクラとかいう木も満開だわ」
「…」
外の庭で、朝食をとっていた。
「うむ、美味い」
「ええ、いつもながら、おいしいわ」
「…」
今日は、牛肉もどきを焼いて、朝からステーキである。
「さて、今日は何をするかな」
「あ、私チェスがしたいわ」
「あれか?でもそろそろ体動かさないと太るぞ?」
「大丈夫よ、毎朝晩筋トレしてるから」
「いつも早くに部屋にこもると思ったら、そんなことしてるのか」
「あ、あの」
「ん?なんだ?」
「いえ、ここは一体どこなのでしょうか?」
昨日拾った、リーネという子が聞いてくる。
「ここ?元魔族領だったはずだよ?」
「え?いえいえ、ご冗談を」
「いやいや、本当だって、ま、今ではそんな面影ないけど」
「そうね、あなたがいろいろ変えちゃったものね」
「まあ、住みやすいしいいだろ」
「あ、あの、本当にここは元魔族領で?」
「そうだけど、まあ、言う必要ないし、向こうにも半年以上行ってないしな」
「は、はあ、いまいち現実感がないのですか」
「まあ、ここには好きなだけいていいよ、あ、帰るときは言ってね?」
「…わかりました」
こうして、新たに住人を加えて、日々が始まった。