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しん・・・でないの?え?異世界?

「こなくそーっ!」


 鳴りやまない銃撃音、積み重なる死体。ここは戦場の真ん中。


「一体どれだけ撃てばいいんだよ!」


 不安定な体勢で撃っていたため、排莢されたばかりの薬莢が靴の中に入ってしまう。


「あっちい!」


 思わず身を隠し、急いで薬莢を取り出す。少し火傷してしまったがすぐに治るだろう。


「俺以外は...いない...」


 自分の所属する隊のメンバーを捜すが、見当たらない。


 肩に激痛が走り倒れる。


「なん...だ...?」


 どこからか狙撃されたか流れ弾に当たったか。どちらにせよ、早く銃弾を取り出さないと。


「まずい、結構深いぞ」


 骨まで到達してはいないが、かなり深くまで入り込んでしまっている。


「俺以外に誰も居ないし...こうなったら自力で何とかするしかないな」


 そう言うと着ているボディアーマーからナイフを抜き取り、傷口に近づけ...


「―――――っ!」


 突き刺す。鮮血が迸りボディーアーマーを紅く染める。


「いっ――――――――てぇ!」


 凄く、いやとんでもなく痛い。しかし今ここを離れるわけにはいかないので少々荒治療だが傷口を開き、弾丸を取り出す。


「これぐらいなら〈自己修復〉が効くな」


 意識を傷口に集中させる。すると傷口が内側から塞がっていく、常人ではまずありえないスピードだ。


「今更だが、この〈龍人(りゅうじん)〉の力は助かるな。すぐに回復出来る」


 〈龍人〉外見は普通の人と変わらないが。


 己の傷を瞬時に再生する「自己再生」


 自身に龍の鱗や翼を生みだす「龍ノ肌(ドラゴンスキン)


 筋力、動体視力などを上昇させる「龍化」


 そして最後に、「魔法」と呼ばれる術を使える。


 これらの力を持つ者一族がそう呼ばれている。ただその数は極めて少ない上に世間一般には認知されていないため、「それってゲームのキャラ?」という反応になる。


「さて、水は...」


 何もない所から水の入った水筒が出現する。これも「魔法」である。


「もう残りがない...補給を要請するかな」


 水筒が消える。続いて無線機が出現する。


「HQ応答してくれ...HQ?...HQ!応答願う!」


 周波数を合わせるが応答しない、壊れてはいないようだ。


「くそ!何でだ!?こんな時に!」


 はっと顔を上げると、砲弾が迫っている。避けられない。


 ――――あ、死んだな。


 目をつむり死を覚悟する。しかし一向に砲弾が当たる気配はないし、感触も無い。


 恐る恐る目を開く。そこは真っ暗な世界が広がっていた。


「え?俺戦場に居たはず」


 あたりを見回すが真っ暗で何も見えない。すると一つのシルエットが現れる。


「何奴!...な!武器が無い!」


 持っていたはずのM4とボディーアーマーが無くなり、代わりにTシャツとジーパンという私服になっていた。


(どうする...武器がない以上どうしても近接戦になる。けど相手の装備はわからない、ここは相手の出方を待つか)


 ―――龍の子よ。


 どこからか声が響く。


 ―――あなたはまだ死んでいません。


「誰だ」


 ―――今は関係ありません、〝今"はまだ。


「そうかい。元の世界に帰してくれないか?」


 ―――それはできません、ここは次元の狭間ですから。


「なんだって?ここは次元の狭間?」


 何とも驚きだな。まだ死んでないだの、次元の狭間だの。まるでファンタジーだ。


 ―――あなたからすればファンタジーでしょうね。ですが事実なんです。


 心を読んだとでも言うのか?


 ―――今あなたには二つの選択肢があります。


 話を聞けと言いたいがそれでは話が進まないので放置する。


「その選択肢とは?」


 ―――このまま死ぬか、それとも異世界で過ごすか。前者だと普通に死にます。後者の場合あなたの選択次第ではどんな人生も送れます。


「どんな人生も...か」


 享年18歳。子供の頃から戦場に通い、敵を倒し続けてきた。けど、それしか知らないからな。

 戦場...せんそう...あ、そうだ。


「異世界には、戦争ってあるのか?」


 ―――残念ながら、平和とは言いにくいです。


「なら、そこの世界に行く。戦争があるなら生きていける」


 ―――本気ですか!?


 声色が変わる。心底驚いているようだ。


「本気だ。今度はあんなヘマはしない」


 目の光がより一層強くなる。決心は強く変わることはないだろう。


 ―――わかりました。ですが気を付けてください、今までとは勝手が違います。


「わかった」


 ―――それと、私からささやかですが贈り物を。


 七つのシルエットが出現する。見た目は女性の様だが何かあるのか?


 ―――それがあなたの「鎧」となり「刃」ともなってくれるでしょう。


 鎧と刃か頼もしい限りだ。そう言えば俺が所属していた隊も七人だったな。


 ―――それでは、がんばって生きてください。もう、死なないで...


 最後の声は昔聞きなれた、でも誰だかわからない、けどこっちも悲しくなるような声だった。

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