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63話 クロイツ帰還とルミル更迭と

 日も暮れかかってきた。


 馬車に戻る途中ではあるが、森の切れ目でもあるこの場所で、今日は夜営をし、明日の朝に馬車まで戻ろう。


 途中、ファンケルも意識を取り戻したのだが……


「なんだろう? 魔力の流れが……修平さん。なんだか体の調子が前より良くなった気がします。どうしてなんだろう?」


 修平はついつい目をそらしてしまう。

決して自分のせいではないが、後ろめたさが勝ってしまうのだ。

まさか、始まりのエルフは色ボケエルフだったとは……


 しかし、リーネ様は魔力の使い方が凄かった。


 ファンケルの力を使い、全体の一部ではあるが、一瞬でこれだけの森が再生するとは思ってもみなかった。


 徐々にではあっても、かつての森に戻ってくれるといいのだが、ストップ異世界温暖化である。


 焚き火の前で、ファンケルは風の聖霊を召喚する練習をしている。

見ていると、聖霊を具現化するスピードが前より速くなっている。


 もしかして、やはりあの濃厚なキスのおかげだろうか?

ちょっと法にひっかかりそうだったが、これならば結果オーライだろう。

そう思いたい。


 最近はご無沙汰な上に、アリエルやカミュの胸の感触が……

修平はため息を吐きながら、悶々と一夜を過ごしたのだった。


「溜めるのはお金だけにしたいもんだよ……」


 誰にも聞かれないほどの小声で、悲しい呟きをこぼす。

少々溜まり気味のおっさんなのであった。



 次の日、天気は相変わらずいいのだが、朝はとにかく寒い。

雪がいつ降ってもおかしくない寒さだ。


 馬車のあった場所まで戻ってきた。


 だが、馬車を見てみると、周りに誰もいない。

まさか、自分達がいない間に何かあったのだろうか?


 すると、ラミィが中から出てきた。


「早かったわね、どうだった?」


「あれ? ダニエウ達は?」


 ラミィは呆れ顔で馬車を指差す。


「酒に呑まれて吐いた後、二日酔いで今も寝てるわ。カミュ、悪いけど回復魔法をかけて治してくれない?」


 回復魔法の無駄遣いだな。

しかし、馬車の中をゲロまみれにされても困る。

カミュにはすまないが、お願いしよう。


 馬車には魔物避けのまじないも施されているらしく、突発的な襲撃は、全くといっていいほどなかったそうだ。


 馬達もそうだが、馬車に何かあっても困る。

馬車だけでも金貨千枚だから……


 来た行程を逆に進み、ツヴァクで一泊。

同じ宿に泊まった為、女将さんには喜ばれた。


 こうして、4日ぶりにクロイツには戻ってきたのだが……そこで事件は起きた。


「え、お連れのエルフの方は昨日づけで宿を解約されましたよ? なんだか顔が青ざめていた感じでしたが、大丈夫でしょうか?」


 何があったのだろう?

もしかして、南の里で何か問題が発生したのだろうか……


 とりあえず、馬車の返却と報告を兼ねて、冒険者ギルドに向かう。

問題があったとしたら、何か情報が掴めるかもしれない。



 冒険者ギルドに入り、受付孃にゴルドを呼んでもらう。


「おう、戻ったか。で、何かわかったか?」


 修平はリーネに聞いた話をゴルドに伝え、最近、何かおかしな事はなかったかを聞いてみる。


「なるほどな。しかし、きなくせぇ匂いがする嫌な感じだぜ。もしかしたら帝国は近々ドンパチを始めるかもしれねぇな……え、最近何かあったかだと? そういやお前のとこのエルフが昨日から、小さい方の広場の片隅で野宿しているそうだぞ。宿代くらい渡してやれよ、仲間だろ」


「は?」


 それはおかしい。


 日程がどれだけかかるか分からなかった為、あれだけの日数分の宿代を支払っていたのだ。

いったい、何がどうしてそうなるのだ……

なんだろう……凄く嫌な予感がする。


 ゴルドに馬車の返却をお願いしてから、急いで聞いた小さい広場へと向かう。


 すると、そこには寒空の中に震えながら、パンツ一枚でボロ布を被ったサイコがいた。


「おいっ! サイコ! どうした? 何があったんだ?」


 修平に声をかけられ、サイコはビクッと体を震わせる。

修平に気づくと、申し訳なさそうな、でも少し安堵したような表情をうかべる。


「すまん、すまんのじゃ……だってゴーレムが……まさか、あんな負け方を……」


 カジノかよ!

心配して損した。


 聞くと、最初は勝っていた為、調子に乗ってしまい、大きく賭けて砕け散った様だ。

鳥車も勝手に売却し、身ぐるみも剥がされ、宿代も博打代に変えてしまったそうだ。

更には貸金で金貨十枚を借りながらも、全て失っている。


 既に末期か!


 買い戻しをしないといけない……

只でさえダニエウ達の飲んだワイン代がいくらかかるかわからないというのに。


 もしかして、お金って羽が生えてるのかな?

関係ないところで、どんどん飛んでいくのだけど……

理不尽は予定なく降りかかってくるものだと、改めて感じる。


 結局、サイコの装備の買い戻しはできたのだが……

鳥車は既に他の人の手に渡ってしまった為、買い戻す事ができなかった。

合計、利息がついて金貨二十枚かかりました。


 暴利だな!


 ギルドに戻り、前より休めの宿を教えてもらった。


 修平は今から行くところがある。

しかし、そこには一人で向かわねばならないのだ。


 そう、ルミルという名の戦場に。


 だって皆を連れて行くと洗脳されるからね!


 皆にも精神耐性はつくのかもしれないが……


 リーネに貰った魔石を一部売却し、シールド発動体の腕輪の修理を頼みたい。

盾もかなりボロくなってきているが、今の武器ではあまり使う事はないだろう。


「ちわ〜」


 店のドアをくぐる。


 なんだ?


 なにやら一人のドワーフが鼻息荒く、ルミルへと突っかかっているのだが……

しかし、見た目がリーゼントのドワーフって、中々に斬新だな。


「姉御、俺の持ってきた大剣を売っちまったってマジなのか! アレは調べるだけって言ってたじゃねぇか! 急に港町からいなくなるしよ! アレは母ちゃんの大事な物なんだよ!」


 港町に、大剣だと……

完全にこれの事じゃねーか!


 でも、しっかりお金は払っている。

今更、返せと言われないよね?

げっ! 見つかった。


「おいっ! そこのお前! 背中に担いでいる剣は俺のだろ!」


 ルミルは……あいつ、目が泳いでいやがる。


 ちゃんと説明しろ!

こっちだって被害者なんだぞ!

こらっ! ため息を吐くんじゃない!

全部、お前の仕業だろ!


「ガストン、あなたは店に対してどれだけ負債を抱えていると思っているのですか? これでも足りないくらいですよ。店から逃げ帰る時、店の在庫にあったミスリルを持って行きましたよね? まったく、言いがかりも甚だしい。私は悲しいですよ」


 ガストンはわなわなと体を震わせ、だが反論する。


「それにしたってよ! 置き手紙に書いてあった金貨二十枚はいくらなんでも安すぎだろ! 材質はオリハルコンなんだぜ! それにミスリルは姉御が新たに特殊防壁付きの腕輪を作れって言ったから……」


「だ、黙りなさい! 店の内情をお客様の前で話すんじゃありません!」


 な、なんだと……


 お前、あの剣を俺に金貨四百二十枚で売ったよね!

中間マージンにしては取りすぎじゃないか?

どんだけ悪どい商売しているんだ!


「くっ! お客様には既に私の術が効かない。こうなったら……」


 ルミルは逃げ出そうとするのだが、突如現れた、一人のダンディーな男性に体を掴まれた。


「あなたはまたですか……これはお仕置きが必要ですね」


「ひいっ! オーナー? なんでここにいらっしゃるんですか?」


 ルミルの体が小刻みに震えている。


「オーナー? この店の?」


「この店というか、このグループの、ですね。我が商店は各地に存在していますから。私はリッケルトと申します。お客様、大変申し訳ありませんが、別室でお話をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 ガストンは違う部屋に連れていかれ、ルミルは猿ぐつわをはめられると布袋に入れられて、何処かに連れていかれた。

あそこまでする必要があるのだろうか?

布袋の中からは、ムームーと叫び声が聞こえてくるが……


 修平はリッケルトに案内され、大きな来賓室に通される。

高そうな椅子に座ると、何処からか、とてもいい香りがしてくる。

秘書みたいな人が、テーブルに置いたカップへと飲み物を注いでいく。


 これは? コーヒーなのか?


「商店で独自に栽培しているものです。自信作なんですよ。お客様のお口のお気に召すかはわかりませんが……」


 うまい! まさか、異世界でコーヒーが飲めるとは……


「すみませんが、うちのルミルとは浅はかならぬ関係のご様子。あの子の術が効かないのは、私と秘書以外、初めて見ましたので……」


 無茶苦茶、乱用してるやないか〜い!


「お恥ずかしい話ですが、こちらも注意はしているのです。何度も術を封印しようと試みても、あの子は必ず破ってしまうのです」


 どんだけなんだよ!

だからこその、あの対応なのか。

知らない人が見たら、完全に犯罪だからね。


 リッケルトに、ドランの街から今までの話を一通り話す。

リッケルトは両手で頭を抱えている。


「未だにルミルの術にかかったままのお客様も多く、家族の方からの苦情が少なくありません。この街は規模が大きいですからね。普段は西の王都にいるのですが、急いで駆けつけたのです」


 なんでも、何に使うかわからないような物を買ってしまうお客が多く、家に帰ってから他の家族が注意するのだが、目が虚ろで話を聞いてくれないのだとか……


 怖すぎるぞ……


「あの子も、価格は適正な値段で売るのですが、貪欲というか、やり過ぎるところがあります。掘り出し物を探すのも好きで、ガストンという職人もいいように使われたのかもしれません。彼とはちゃんと話をしますので、その剣はそのままお客様がお持ち下さい」


 リッケルトはまともな人で良かった。

ガストンには悪いが、この大剣も自分に馴染んできたのだ。

今更、手放すには惜しい。


「壊れかけたという腕輪を見せてもらっても?」


 リッケルトは腕輪を分解して調べると、なにやら納得したように頷き、組み立て直す。


「すぐには無理ですね、しかし、日数を頂けるならば、これ以上の物に仕上げます。どうでしょうか?」


「出来れば両手分の腕輪を用意して欲しいのです。この剣は片手では扱えなくて……」


 リッケルトは頷き、"しばらく席を外す"と部屋を出ていってしまった。


 その間、魔石の買い取りは秘書の方が取り扱ってくれた。

それなりに大きな魔石が三個。

売却額は金貨二百枚になった。


 だが、返済額が小さい国の国家予算並みにあるのだ。

この金額に驚かなくなってきている自分が、少し怖くなる。


 リッケルトが部屋へと戻ってきた。


「ガストンも承諾してくれました。何も問題はありません。腕輪の件は4日程貰えますでしょうか?」


 修平は頷くと、代金を聞く。

もしも、あまりに高いと支払えないから……


「お代は結構ですよ。今までの迷惑料だと思って下さい」


 え、本当! ラッキーだな!


 4日後に訪ねると言い残し、修平はスキップしながら、皆がいる宿へと帰って行った。


 部屋に残ったリッケルトは、椅子に背をもたれかけ、深く息を吐く。


「まさか、代々伝わるご先祖の話が私の代でくるとは……人生とはわからないものだな」


 リッケルトはポツリと呟くのであった。

最近、フォートナイトをやりだしたのですが、あまりの自分の下手さに笑えてきます。

練習しても、本番で上手く建築ができない……

以上、どーでもいい話でした(笑)


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