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59話 身請けとこれからと

おっさんの話に戻ります。

「ない、ない、ないぞ、なんで?」


 修平は朝起きて直ぐに、昨日の出来事が夢ではないことを確認する為、マジックバックの中から金貨を取り出し、数えようとした。


 だが、バックから出てきた金貨が明らかに数が減っているのだ。


「カジノに行く前より金貨は増えているのは確かだ。夢ではないはず……まさか?」


 返済ボックスをオープンし、残高を確認してみる。


「どうやら、まだ……夢を見て……いる様……だ……な……」


 しかし、無情にもそこに書かれていた金額を見て、修平は再びベッドへと倒れた。


 書かれていた金額は……百七十三億六千八百五十二万九千円。


 どうしてこうなった?


…………


…………


 ファンケルが心配して起こしに来てくれるまで、修平は気を失っていた。


 他の皆は二日酔いで、まだ寝ているそうだ。

昨日、飲み過ぎたらしい。


 自由か!


 一応、念のためにもう一度ボックスを確認してみるが……

やはり書かれている金額は、先程見た数字と同じようだ。


「これ、確実に異世界残留決定なのではなかろうか……」


 どう考えても、返せる気がしない。

昨日のカジノでさえ、胃に穴が空きそうなほど緊張したというのに……


 いや、魔王がいなくなれば恩情で帰してくれるかも?


 だが、もしも金額がそのままだったら……


 家や家財道具他全て取られ、負債で自己破産コースまっしぐらだ。


「地球にエイリアンでも攻めて来て、地球防衛軍でも始めたのだろうか……」


 いったい何に使っているのか、最早、検討もつかない修平なのであった。



 もう、深く考えるのは止めておいた。


 カミュに各種回復魔法をかけてもらう。


 すると、少し体が楽になった様な気がした。

これならば、例え胃に穴が空いたとしても、直ぐに治してもらえそうだ。


「勇者様、大丈夫ですか? まだ顔色が……」


 前に"スケベ"とディスられはしたが、根は素直でいい子だ。

きっと周りの大人が悪い知識を与えたんだな。

そうに違いない。


「ありがとう。でも、勇者って呼び名は止めて欲しいかな。一応秘密って事になっているからね。名前で呼んでくれればいいから」


 カミュは頷くと、顔を少し赤らめながら名前で呼んでくれた。

なんだかこっちまで照れるのだが。


「とりあえず冒険者ギルドに顔を出してくる。その間にカミュは、他の皆を二日酔いから回復させておいてくれるかな? これからの事も話合わないといけないから」


 修平はファンケルとカミュに見送られ、宿からギルドへと向かった。



 凄く大きい。


 流石は東の本部といったところか。


 西は大陸が小さい故仕方ないのかもしれないが、建物が3倍の大きさはある。


「おう、来たな。話がある。奥の部屋に来てくれ」


 ギルドに着いて早々(そうそう)にゴルドから別室へと案内される。


 そこにはレイリーとパーティーメンバーも揃っていた。

リーンから、なにやら熱い目でみられたが……もうやりませんからね!


「レイリーにも、お前の素性は話した。Sランクだからな。いざというときは力になってくれるだろう」


 レイリー達を見ると、頷いている。


 まぁ、話すのは仕方がない。

是非、困った時は助けてもらおう。


「もう一人はエネルって言うんだが、最近連絡がとれなくなった。まぁ、あいつは結構自由だからな」


 え、そんなんでいいの?

最高峰のSランクなんですよね?


「んで、これからどうするんだ? 襲撃は収まったと思いてぇが、まだわからん。こちらの本音としては、また戦力が必要になるかもしれん。出来ればこの街に残って欲しいんだがな……」



 うーん、確かにこの街に居れば情報は集まりそうだが……


 だが一度、今は結晶化してるという始まりのエルフの大木に行ってみたい。

行ってみれば、何かアクションが起こるかもしれない。


 そうゴルドに告げると、承諾してくれた。


 レイリーが思い付いた様に、ポンッと手を叩く。


「そうだ! それなら俺らの馬車を貸してやるよ。中は空間魔法で少しだが広くなっている。揺れも少なくて快適だぜ」


 それはありがたいのだが、お、お値段はいかほどで?


「金貨千枚は下らないと思いますよ〜」


 ま、マジかよ。

君たち、どれだけセレブなんだよ……


 ええぃ! 万が一、今更少し(そんなに少しでもないが)増えたくらいで関係ない!

日本の借金だって凄まじい勢いで増えているんだ!

生きていればなんとかなる!



 大を見れば小はたいしたことがなく見える。


 大きく開き直るおっさんなのであった。



 宿に戻ると、全員食堂に集合していた。


 ギルドでの話と始まりの森に行くということ、レイリーから馬車を借りれるということなどを皆に話す。


「ふむ、それでいいのではないか。どのみち行くつもりだったからな」


 レオニアルは頷き、後は任せたと言い残し、出掛けていった。


 サイコに聞くと、この街にはコロッセオもあるそうで、腕試しをしに行くと、昨日食堂で言っていたそうだ。


 相変わらず、お前はブレないな!


 とりあえずレオニアルは放っておいて、マジックバックの中を整理することにした。


 バックの中には、レオニアル達が北海で倒した魔物の素材もそのまま入っている上、現在、所帯も十一人まで増えたのだ。

各自、必要な物を揃えないといけない。


 いらない物は売却し、ポーション類の補充など。

重さを気にしなくていいので、気軽に買えるのは嬉しい。


 今は死なない為に出来ることを。

ちくしょう! こうなりゃ、もうやけくそだ!

絶対に返しきってやるぞ!


 素材の売却等はサイコ達がやってくれるそうだ。


 アリエル達女性陣は、男とは違い、女性に必要な物があるそうで、買い物に行くそうだ。


 修平はバックから金貨を三百枚取り出す。


 これから、モブAの母親とヴァニラちゃんを身請けしに行く。


 放っておいてもいいのだが、それだとなんだか後味が悪い。

これに懲りて、真っ当に生きて欲しいものだ。


「旦那、すまねぇ。俺……旦那に一生ついて行くからよ!」


 モブA、それはなんか嫌だ! 頑張って三人で生きてくれ!


「旦那には、ヴァニラちゃんとイチャコラする権利をあげるんだな!」


 モブB、なんで上から目線なんだ!

どっちかって言うと、こっちが上だぞ! 

それに絶対イチャコラなんてしないよ!

もの凄く後が怖いからね!


 モブAの母親の身請けの話はすんなり進んだ。

というか、娼館から逆に感謝された。


 お客の取れない娼婦など、タダ飯食らいのごくつぶしだそうで、少しまけてくれたほどだ。

それでも金貨九十枚はかかったが。


 問題はヴァニラちゃんだった。


 彼女は固定客が既にそれなりにいるそうで、娼館からかなり吹っ掛けられた。

なんと金貨、二百五十枚。


 その金額を聞いて、モブBが暴れそうだったので、ダニエウ達が店から連れ出し、先に宿へと帰っていった。

もう彼女はこのまま、ここで働いていた方が幸せなんではなかろうか……


 すると、ヴァニラちゃんが奥から出てきた。

顔をよく見ると、目尻には涙の後が残っている。


「私の為にすみません。でも私の事はいいんです。あの人を頼みます。根は純粋で放っておけない人なので……」


ダメ男に惹かれる女性っているよね。

あぁ、もうね……

なんと女の涙に弱いことか。


「ちょっと待ってて!」


 修平はサイコ達の元に走り、急いで追加の金貨を取り出すと娼館へと舞い戻る。


 娼館のオーナーは少しビックリした後、更に値を上げようとしていたが、そこはおもいっきり威圧し、納得させた。

流石にこれ以上は堪忍袋がもたない。


 ヴァニラちゃんと一緒に店を出た後、しばらく歩き、広場にあったベンチに座る。


 広場には屋台が幾つか出ており、そこで買った飲み物をヴァニラちゃんへと渡す。


 はぁ〜、最近、散財ばっかりしている。

自分のせいだから仕方ないのだが……


 ふとヴァニラちゃんを見ると、なにやら目が潤んでおり、頬が赤い。


 更に、見た目は幼い体をこれでもかと密着させてくる。


「ありがとう、素敵なおじさま。もう私の体も心も貴方の物です♪ どんなプレイがお望みですか? あんまりハードすぎるのは止めていただけると……」


 ちょっと待った!

公衆の面前で、いきなりなんて事を言い出すの!

ま、周りの視線が痛い!

いくら合法ロリとは言っても、周りはそんなこと知らないからね!


 どうにか落ち着かせ、ヴァニラちゃんの話を聞く。

どうやら、カジノで負けた男にあの娼館に売られ、最早、帰るところもないそうだ。


 かといって旅に連れて行くのは危険すぎる。

戦闘はまったく出来ないそうだ。

当たり前か。

頭脳は大人でも、見た目は子供だから……


「助けて、ゴルえも〜ん!」


 とりあえず、ゴルドに相談した。


 双方と話し合った結果、ヴァニラちゃんは住み込みでギルドの受付嬢をすることに決まった。

顔も器量も悪くはないのだ。

彼女なら、悪い男に引っ掛かかりさえしなければ大丈夫だろう。

一応、念を押しておいた。


「ヴァニラちゃん、男に気をつける様に……」


「大丈夫です! もうこの体は貴方以外に触らせません!」


 うむ、なんだか少し違う様な気もするが、これで良しとしよう。


 いつかモブBには、後ろから刺されるかもしれないが……


 ついでだが、モブAの母親もギルドの雑用係として雇ってもらうことにはなったのだが……


 西大陸に帰るにもお金がかかるだろうと思い、軽い気持ちで提案した。

だが、モブAの母親に話を聞くと、どうやら家事全般が駄目らしい。


 この親にして、あの子ありか……

前回の戦いの功績を考えて、渋々ながらゴルドも了承したのだ。


 ゴルドには申し訳ない気持ちもあったが、ヴァニラちゃんと足してプラスマイナスゼロになることを祈ろう。


 ギルドを出て空を見上げると、日が傾きかけていた。


 そろそろ、冬の訪れが近い。

日が沈むのが徐々に早くなってきている。

雪が降る前には、始まりの森から帰りたいものである。


 宿に戻ると、皆既に帰ってきていた。


 ダニエウ達には事情を話し、アリエル達の荷物をマジックバックに収納する。


 サイコ達に話を聞くと、魔物の数は多いのだが、最近の襲撃事件のせいで魔物の素材が有り余っているらしく、そんなに高くは売れなかったそうだ。

こればっかりは、どうしようもないか……


 レオニアルは満足そうな顔をしているが、それはどうでもいいとして。


 明日には全員のステータスの確認。

そして、始まりの森へと向かう。


「前だけを見て、進む……」


 改めて気持ちを引き締めるおっさんなのであった。


未だに数字の表記を漢数字かアラビア数字か迷っている自分がいます。


どっちが読みやすいのだろうか……

ブレブレすぎてすみません。


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