56話 カジノへ行こう
「おいっ! 修平おきろっ!」
はっ!
気を取り戻した時、既に外は夜だった。
夕食を食べ損ねてしまい、空腹で腹がなるが、過ぎた時は戻らない。
とりあえず、置いてあった鎧を着てみる事にした。
材質は鉱物なので、触った感じは皮より硬い。
だが、鉱物にしては、もの凄く軽い。
重さも今までの皮鎧と変わらないくらいの重さか。
間接部は柔らかく、動きを阻害することはなさそうだ。
しかし、金貨八百枚……
傷がつくのが怖くなりそうな金額だな。
ダニエウが通りかかる。
「あれ? 旦那、まだ食堂にいたのか。明日はカジノに行くんだろ。気合いをいれないとな!」
なぬ?
「修平、ダニエウ達の提案に首をうんうん振っていたぞ」
全然、身に覚えがないのだけど。
「今更無しは無しだぜ、金貨も一枚くれるって言ってたしな!」
「え、俺そんな事言ったの?」
信じられないと、アリエルの方を見てみると……頷いている。
「金貸しで借りるって言ったら、しょうがないからあげるって言ってたぞ!」
いつの間に……
色々ショックな事がありすぎて、忘れているだけなのだろうか。
仕方がない。
最近、戦闘の連続だった。
ここいらで一度息抜きをしてもいいだろう。
装備でかなり使ったが、それでもまだ金貨は百枚以上は残った。
ファンケルはカミュと留守番するそうだが、ダニエウ達とアリエル、ラミィ、レオニアルと自分。
それにサイコ達も行きたいそうだ。
一人、金貨一枚づつとしても合計九枚か。
それなりに大金なんだが……
カミュの事もファンケルから聞いた。
どうやら、彼女はドワーフのお姫様らしい。
ちょっと前に、知らぬところでスケベとディスられはしたが。
なんでも北の里で仲が良くなったそうだ。
カジノ、新婚旅行で行った時に一度だけ行った事がある。
その時は、簡単にチップが無くなってしまい、自分には博打の才能はないと思って直ぐにやめた。
賭け事は引き際が大事なのだ。
アリエルとダニエウがカジノの話で盛り上がっている。
ダニエウ達を見ていると、引き際を見誤りそうで怖いのだが。
明日は明日の風が吹くか……
今日はもう寝て、明日に備えよう。
次の日……
天気はいいのだが、とにかく寒い。
もうすぐ雪でも降るんじゃないだろうか。
部屋には暖房器具もついていない。
その為、毛布を重ねがけ、寒さを凌いだ。
ダニエウ達を見ると、カジノに行く熱気で燃えているが……
レオニアル達とも合流した。
カミュとファンケルは感動の再開だ。
お互いに涙を流して喜んでいる。
ファンケル達に見送られ、宿を後にする。
カジノまでは乗り合いの馬車がでている。
それに乗り込み、九人は和気あいあいとカジノに向かうのであった。
終着地点まで着いたので、そこからは徒歩で向かう。
カジノの近くには、娼館や金貸しの看板が並ぶ。
闇金か……堕ちる人も多いのかもれない。
博打は中毒になりやすいから……
暫く歩いていると、モブAが一軒の娼館の前に置いてあった看板で足を止める。
「やれやれ、気が早いな。せめて儲けてから行かないと、折角の軍資金が無くなるぞ!」
なになに、どんな店なんだ。
……熟女専門店だと、なかなかディープな店だな。
モブA、お前にはそんな趣味があったのか?
「か、母ちゃん。なんでこんな所に……」
な、なんだと……
まさか、"探さないで"と書き置きして消えた母親か?
うん? 一人、女性が店から出てきたが……
「母ちゃん!」
感動の再開の後に、ドロドロの再開とか……昼ドラか!
なんだか揉めている。
しょうがないので仲裁に入るのだが……
「あんた! なんでこんな所にいるの!」
「旦那! カジノで持ち金が全部無くなって、ここを紹介されたみたいだ! はっ! まさか旦那、俺の母親とプレイを楽しもうって魂胆……」
それは全力でお断りします。
別に熟女好きを否定するつもりはないが、そんな趣味はない。
顔もモブAそっくりなんで、流石に無理だ。
「借金はどれくらいなんだ?」
「誰も(体を)買ってくれないらしくて、利子で増えに増えて、金貨百枚だってよ!」
良かったな、お前のお母さんは(体は)綺麗なままだった。
心は腐っているかもしれないが……
しかし、流石に金貨百枚は払えない。
頑張れモブA。
お母さんの未来は君の博才にかかっているぞ。
ちらりと横を見ると、モブBまで違う娼館の看板を見ている。
ふむ、幼女顔専門店……
ま、まさか……
「ヴァニラちゃん……」
モブB、お前もかよ!
ヴァニラちゃんは男と駆け落ちしたんじゃなかったのか?
一人の女性が店の前の掃除をしに出てきた。
「ヴァニラちゃ〜ん! なんでなんだな?」
モブBが詰め寄る。
どうやら彼女がヴァニラちゃんらしい。
またもや、二人で揉めている。
カジノに行く前なのに、なんだか疲れてきたのだが……
「離して! 私はもう汚れているの! あなたにはふさわしい人がきっと現れるわ!」
「旦那聞いて欲しいんだな! ヴァニラちゃんは男に騙されて、ここに売られたらしいんだな。はっ! 旦那、まさかヴァニラちゃんと……」
そのくだりはもういいから。
確かにモブAの母親よりは"アリ"だが、モブBと穴兄弟になるのはちょっと……
ほら、皆も呆れて、先にカジノに行っちゃったぞ。
「ヴァニラちゃん! 君は俺が必ず助けだすんだな!」
ハイハイ、ヴァニラちゃんの未来は……以下同文です、はい。
こうしてカジノに入る前に、疲れきってしまったおっさんなのであった。
書くのに疲れてきたので前半、後半にわけます。(夏バテが……)
夏休み、俺も欲しい。
御盆も仕事なんですよね(泣)。