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55話 ルミルの悪夢、再び

暑い、暑すぎる。

頭が溶けそうです。

これは地球温暖化のせいなのだろうか?


クーラーは必ずつけましょう。

室内でも熱中症になってしまうので……

みなさんもお気をつけ下さい。


「それにしても、どうしてここに?」


「お前は旅の途中、風呂に入りたいと何度も言っていたからな。必ずここに寄ると思ってな」


 そういえばこの世界に来てから、風呂に入りたいと頻繁に言っている気がする。


 む、なんだか周りの視線が痛いのだが……


おいっ! よく見てみると湯船にライオンの毛が無茶苦茶浮いてるじゃないか。

え? 洗い場の排水溝も詰まっているから綺麗にしろですって?

はい? 泡の出す生き物がバテて泡がでない。

三人組が使い過ぎたせい?


お前らいい加減にしろ!

周りに迷惑ばかりかけるんじゃない!


「すいません、すいません。家のライオンと三馬鹿がすいません」


 きちっと掃除を終えてから、公衆浴場から出た。

女性陣は既に上がっていたようだ。


 遅いと文句を言われたが、しょうがないじゃないか。

だって風呂に入っていた時間よりも、掃除をしていた時間の方が長かったもの。

それでも無茶苦茶、番頭さんには怒られたけどね……


 既に日が傾き始めている。

夕日に反射してレオニアルの毛が輝いて見える。

ダニエウ達の顔も輝いて見える。

お前ら、どんだけ汚れていたんだよ!


「もう疲れた、宿に案内してくれ……」


 レオニアルは先に宿をとっていた様で、明日には今いる宿から合流するそうだ。


「は〜い、ここがクロイツでオススメの宿です。防音も完璧なので様々なプレイを行っても大丈夫ですよ!」


 どうやら、少女のオススメの宿に着いたみたいだ。

宿には専用の風呂もついている。

色々、様々なプレイ、泡プレイか……

いやいや、そんな人を色情魔みたいに言わないで。


 宿の金額は1日朝、夕食つき全員分で……

金貨四枚だと! 高過ぎじゃないかな? 1日で四十万だよ!


「噂になるくらいの冒険者なんですよね? このくらい楽勝では? Sランクのレイリー様は1日金貨十五枚の最高級の宿に泊まっているそうですよ」


あいつらブルジョアだな!

どんだけ大金持ちなんだよ!

こっちは大所帯なんだからね!


 もう少し考えてほしいものだが……

よく見ると、少女は宿の女将さんから銀貨二枚を受け取っている。

商魂逞しいな!


 案内して貰った手前、断る事もできない。

結局二日は泊まる事になりました。

相変わらずノーと言えないおっさんなのであった。


 更に今日の半日分をオマケしてもらい、夕食付きでプラス金貨枚のお支払い。

合計で金貨十枚が……散財です。


「次は何処に行きますか〜?」


「魔石の売却かな、結構大きいのだけど大丈夫かな?」


 カミラの魔石を少女に見せる。


「わぁ! こんなに大きいの初めて見ました。このサイズの魔石となると……あそこですね」


 少女に案内された店には着いたのだが、この店のシンボルになにやら見覚えが……

大都市だからか、店の大きさも今までで一番だ。


 びくびくしながらドアを慎重に開くと、修平は滑り込むように店内に入った。


 よし、初動は完璧だ。

音は鳴らしていない。



 少女はあまりの挙動不審に引いているが、気にしてはいけない。

やつは……どうやら今は一階にいない様だ。

だが、油断してはいけない。

やつはどこからでも現れるのだ。

しかもこの店はデカイ。

もしかしたら既に、違う階に潜伏しているかもしれない。


あっ、皆!

個別に動いちゃ駄目だ!

やつに各個撃破されるぞ!


トントンッ!


なんだ? 今忙しいのだけど……


「すいません、ちょっと事務所まで来ていただけますか?」


 いきなり店員に肩を叩かれ、声をかけられた。


「え? 俺は怪しい者じゃ……」


「怪しい人はみんなそう言うんですよね」


 警備の人が沢山集まって来る。

店内には不審者情報がスピーカーから流れている。


『只今、店内にて怪しい男を発見しました。身長は百七十ほど、背中には大剣をかついでおり、変わった盾を持っています。突然なにをするかわかりませんので、見つけた際は男には近づかない様にお願いいたします』


「外見は……これって俺じゃないか? 嫌、違うから、俺、無実だから、何もパクってないからね」


「ハイハイ、言い訳は事務所で聞くからね〜」


 両脇を警備員にガッチリ捕まれ、引きずられる様に事務所へと連れていかれるのだった。


…………………



 誤解を解くのに三十分もかかってしまった。


 ちょっと疑心暗鬼になりすぎたね。

そうだよ、警備員さんも言っていたじゃないか。

いくらなんでも、あの店員がいつもいるわけない。


あれ? みんな、どうしたんだ?

一ヶ所に集まって……


「あら、お客様ではないですか?」


ヒイッ!


「パーティーの方に聞きましたよ。なんでも鎧が駄目になったとか、凄く大きな魔石を持っているとかね」


 ルミルはチロリと微かに舌を覗かせる。

まるで蛇に睨まれたカエルの様に体が萎縮してしまう。


だが、ここは絶対死守しなければ。

今はもう返済どころではない。

もう現在の家計が火の車なのだから。


「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。私はこの店のカリスマ店員ですから。新しい鎧に変えますか、それとも直しますか?」


 普通だ……


 よく考えてみれば、こんな大きな店であんな商売をしていたら苦情が半端ないだろう。

ルミルもようやく、心を入れ替えたに違いない。

おそらく、彼女も自身の最終目的地に着いたのだろう。

港町では、王都かクロイツに行きたいと言っていたのだから……


 みんな、ごめん。

人を信じられなくなったら終わりだな。

俺が間違っていたみたいだ。

なぁ、ダニエウ、アリエル、ラミィ、ファンケル。

あれ? みんなどうし……


「旦那! 俺らはこれが欲しい! 俺らの命を守る為にも絶対に買ってくれ!」


「修平! このアクセサリー可愛い上に性能もいいんだ。あたしの為に買ってくれ!」


「私はこの綺麗な服が欲しいわ。買ってくれるわよね!」


「僕はこの短剣が買ってくれと言ってます。どうかお願いします!」


 ええっ――――――!


「フッフッフッ、どうやらあなたにはもう直接は無理なようなので、搦め手を使ってみました」


 駄目だ! こいつ、全然変わってねぇ!


「旦那! ×3」

「修平!」

「修平!」

「修平さん!」


嫌! 止めて! 皆、そんな目で見つめないで!


こらっ! ダニエウ、モブ、腕を離せ! 離すんだ!

アリエル、後ろから抱きつくな! 胸が当たってるぞ!

ファンケル、ラミィ、下半身を押さえるんじゃない!

そんなに匂いを嗅がないで! お願い!


みんな、頼む、正気に戻ってくれ〜!


「ハイハイ、みなさん、ご苦労様。これだけ精神が乱れれば問題ありませんね。大丈夫、物は確かですからね。それではまたのご来店を(今回もまいどあり、)お待ちしております。(催眠、レベルマックス)


アァ―――――――!


 気がついたら宿の食堂に戻っていた。


 皆、各々の席に座っている。

よく見ると、ダニエウ達の装備が一通り新しくなっている。

アリエルも胸にペンダントが、ラミィは服が新しい。

ファンケルの腰には二本の短剣が……


 全部買わされているやないか〜い!

そりゃ突っ込みたくもなりますわ!


 横を見ると一つ鎧が置いてあり、その上には毎度お馴染み説明文が置いてあった。


 魔石(特大)買い取り、金貨千二百枚。


 三馬鹿、新装備……金貨、百枚。

 ペンダント代金……金貨、百枚。

 各々、服代……金貨、二十枚。

 短剣、業物……一本、金貨、三十枚。


 いや、高い、高いが、これならば、まだ……


 星界鉱石鎧、特殊加工仕立て……金貨、は、八百枚……


 修平は再び座ったまま、気を失ったのだった。


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