閑話 月形美緒の話
登場人物が増えすぎて、グダグダ感が否めない。
どこかに面白いネタでも落ちていないものか……
私の名前は月形美緒。
今年中学三年、今は受験でとても忙しい時期なんです。
本当は勉強に集中したいのだけど、最近家の中がおかしくて、私、全然集中できないの……本当に困ってる。
あれはお母さんから、お父さんの海外単身赴任が聞かされた頃だった。
私もお兄ちゃんも、昔お父さんから、発展途上国のインフラ整備で行く人がたまにいるという話は聞いていたのだけど。
まさか、お父さんが行くなんて思ってもみなかった……
長ければ数年は戻ってこれないとも言っていた。
お父さんとは、最近、あまり会話らしい会話も無くて、いなくなるということを、そんなに意識はしていなかった。
お兄ちゃんもそんな感じ、別にいてもいなくても全然問題無いと言っていたぐらいだし。
タロウはちょっと寂しそう。
タロウの散歩はお父さんの日課だったから。
問題はお母さんだった。
元から天然で、抜けているところもあったけど、詐欺に騙された頃からなんだかおかしくなってしまったの。
最初は変なツボとか、御札とか訳のわからない物を買っていただけだった。
値段ははっきりとは聞かなかったけど、凄くヤバい感じはして、止めようとはしたのだけど……
私達の静止をまったく聞いてくれない。
「そんなお金、いったい何処にあるの?」
そうお母さんに問い詰めると、一枚のカードを見せてくれた。
「これはね、修平さんが私の為に置いていってくれた、魔法のカードなの。所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。私はもう負けないわ」
は? 既に言っていることがおかしい。
ショック過ぎて頭がおかしくなっちゃったの?
魔法のカード? 魔法少女って歳じゃないよね。
それに、今までリボ払いとかが危ないからって、お母さんにはお父さんがカードを持たせなかった筈じゃ……
そもそも限度額はいくらなの?
どう考えてもヤバいやつでしょ!
ちょっと前なんて……
家の前に大きなトラックが止まっていた。
トラックには荷物が次々と運ばれていく。
「あれ? 隣の山田さんじゃないですか、どこかに引っ越すの?」
「やぁ、美緒ちゃん。今回はありがとう! 体に気をつけて元気でね!」
???
なにがありがとうなの?
次の日も……
「えっ! 向かいの佐藤さんまで引っ越すの?」
更に次の日も……
「二つ隣の鈴木さんまで、なに? なんなの? 今は引っ越しが流行っているの?」
次から次へと我が家以外が引っ越していくの。
もしかして、ここに隕石でも落ちるのかな?
大変! 家も速く引っ越さないと!
「お母さん! みんな引っ越していくよ! 絶対なにかおかしいよ!」
あれ? なんだかお母さん……若返ってない?
「大丈夫よ、美緒。ここに神殿を建てるだけですから」
は? 神殿? なんだこれミステリー? ポツンとここに神殿が?
もうなにがなんだか意味がわからない……
「ちょっと! お兄ちゃんもお母さんに何か言って! え? お兄ちゃん?」
そこにはきらびやかな法衣を着こなしている兄がいた。
「兄ではない、神殿長と呼びなさい」
まだ神殿なんて建ってないよ、お兄ちゃん……
これはなに? 世にも奇妙な? それともドッキリ?
お兄ちゃん、変なキノコでも食べたの? それとも、誰かに洗脳でもされた? 薬はダメだよ絶対!
もうダメ、助けてお父さん!
私も頭がおかしくなりそう。
ごめん、お父さん。
カードからお金を使わせ貰うね。
今は速く、お父さんの所に行かないと……
…………あれ?
空港の搭乗ゲートをすぎた辺りから記憶が……
ここはどこ? もうアフリカには着いたの?
あ、人がいる。
あの人に聞いてみよう。
「すいませ〜ん!」
豚の着ぐるみ? でも全然かわいくない。
海外だからかな? リアルだけど不細工すぎて笑えるんだけど。
それに三人も同じ着ぐるみ必要?
もっとバリエーションを増やせばいいのに……
「写メ撮ってもいいですか?」
日本語は通じているのかな?
私は近づいてスマホを取り出す。
ブヒィ、ブヒィ!
「キャァァァ! やめてっ! 誰か助けて! お父さん! お母さん! お兄ちゃん!」
豚の着ぐるみはいきなり襲ってきた。
私は着ている服を破られ、半裸にされながらも離れようとした。
すると、豚の着ぐるみ達は、イビツなそそりたつ物を見せつけるように、私に近づいてくる。
ブヒ、ブヒブヒ!
ブヒー!
ブヒヒィ!
はぁ、はぁ、怖い……
なにか順番で揉めているみたい。
速く、今のうちに逃げないと……
けど豚達も逃がすまいと、私は無理やり手足を押さえつけられた。
ブヒヒヒヒヒッ!
「嫌、嫌! やめて、やめて――――!」
今にも私の中にイビツなものが……助けて! お父さん!
「そこまでニャ、悪党ども! 成敗!」
えっ? 豚の着ぐるみの首が落ち……
「キャァァァ!」
血が吹き出て……え、死んだ?
え? これって殺人?
怖い、怖い、怖い。
私も殺されるの?
腰が抜けて、駄目、動けない。
なんなの? 何が起きているの?
辺りを見回すと……え、ネコ? 人? 妖怪?
「キャァァァ! 化けネコォォォ!」
スパーンッ!
「山本さん、驚かしてどうするの?」
え、山本さん? それにスリッパを持った女性? 展開が速すぎて、頭が……
「瑞希酷いニャ、女の子を助けただけじゃニャいか。危ないところだったニャ。それにしても、化けネコはあんまりだニャ〜」
瑞希と呼ばれた女性が私に上着をかけてくれた。
私、助かったの?
「色々、まだ混乱しているみたいね。もう大丈夫。私もこのネコもあなたに危害は与えないわ」
私は安心して止めどなく涙が溢れた。
どうやらここは異世界らしい。
一応、お父さんの事も聞いてみたけれど、わからないみたい。
それもそうか、ここはアフリカじゃないもんね。
なんで私がこんな目に……
その後、村へと案内されたのだけど、け、ケモミミ?
ふぅ、でも、もう何が起きても動じなくなってきたかも。
私はいったいこれからどうなるの?
もう元の世界には戻れないのかな?
「慣れれば問題ないニャ」
「慣れって怖いわよね」
二人?はもう順応してる。
私もいつかこうなるのかな?
「嫌よ〜〜〜! なんでこうなるの〜〜〜〜!」
美緒の叫びは空へと吸い込まれていったのだった。
ファルメリア
「勝手に娘をこっちにやるなんて、あいつ……しかし、どんどん私の体が柱に呑み込まれていくのだけど、なんで?」