エピローグ
四章が長くなりすぎてるので、章を一旦切ろうかと思います。
それにしても暑すぎる。
電気代が怖い、今日この頃。
皆様も熱中症に気をつけましょう。
「もう、行くの?」
梨華はレオニアルに問いかける。
「傷も癒えたのでな、行動せねば被害は収まらぬ」
梨華はアメリアが魔物の波に呑み込まれる様を見て、心が折れてしまった。
人は簡単に死ぬ。
分かっていたつもりだった。
昔あった戦争でも沢山の人が死んだ。
だが実際、"親しい者が亡くなる"という事が、いざ自分の身に降りかかると、心が認めたくないのだ。
もうアメリアの無邪気な笑顔が見れない。
そう考えると、自然と杖を持つ手が震える。
おそらく、もう自分は戦えないだろう、と。
モブエルフ二人の遺体も損傷が激しく、他の者とまとめて火葬にされた。
残った骨を案内エルフ達が西の大陸に持って帰り、森へと還したいそうだ。
梨華も案内エルフ達と一緒に、西の大陸へと戻る決断をしたのだった。
ゴードンは怪我により、やはり足が動かなくなってしまった。
故に、このままツェーンの街に残るそうだ。
北のドワーフが定期的にこの街に物を売りに来るそうで、その時に一緒に帰還すると言っていた。
最後までカミュの事が心配で揉めてはいたのだが、カミュに説得され、嫌々ながらも納得はしたようだ。
レオニアルとカミュの二人になってしまったが、当初の予定通りクロイツへと向かう。
ニンフでのアンデッド襲撃の話も聞いた。
ギルドで聞いた話には、かなり尾ひれがついており、本当の事なのか怪しいものもあるのだが……
「親しい者の死に、耐えれぬという事は至極当然の事なのだ。悲しい事だが、儂はもう慣れてしまったのかもしれんな……」
「私はまだ実感が湧かないだけかもしれません。なんだか、今にも何もなかったかのような顔をして、ヒョッコリとアメリアさんが出てくる気がして……」
カミュはうつむきながら、その目には涙を浮かべている。
アメリアとは付き合いこそ短かったが、北のエルフの里では互いに笑い合い、色んな話をした。
「過去はもう戻らぬ、ならば先に進むのみ。どうだ? ついてこられるか?」
レオニアルはカミュへと問いかける。
辛いならばゴードンと共に残るという選択肢もあるのだ。
だが、カミュは唇を噛みしめる。
「私は私の心に従います。一緒に行かせて下さい」
レオニアルは頷くと、カミュと共にクロイツへの定期便に乗り込む。
「儂も皆を守る為に、もっと強くありたいものだな……」
そうポツリと呟き、馬車はクロイツに向け出発するのだった。
場面はニンフに変わる。
昼過ぎ、修平達は鳥車を乗り付け、ギルドへと顔を出していた。
ゴルド達に挨拶を済ませるのと、今回の報酬金を受け取る為だ。
報酬金の内容は、カミラの魔石の所有権を修平に、後は魔石を少ししか貰えなかった。
アンデッドは使える素材がほぼ無い。
あまりの旨味の無さにダニエウ達はガッカリしていたが、結果的には誰も死ななかったのだ。
それだけでも良かったと思いたい。
そのくらい、今回は危険な状況だったのだから……
「あんたのお陰で助かったよ。あのヘンテコな魔法で数が減ってなかったら、結構ヤバかったからな……」
レイリーはなんだか少しやつれているが、後ろの女性達は妙に顔色がツヤツヤしている。
もしかして、昨日はハッスルしたのだろうか?
四人でなんて、なんと高度な……よく体力が持つものだ。
「俺達も暫くしたらクロイツに戻るからな。おそらく、またあっちで会えるだろ。なんかあったらよろしく頼むよ」
フットワークが軽いことで。
よく見ると、パーティーメンバーもほぼ無傷だ。
流石はSランクパーティーといったところか。
修平は今は鎧を外している。
カミラの強烈な一撃で、胸部分がほぼ使い物にならなくなってしまった。
また、出費か。
最近、本当に出ていくばかりで辛い。
これはもう、カミラの魔石に期待するしかない。
あの女性はカミラを七百歳とか言っていたし、大きさもかなりの物だ。
しかし……
まさか、またあの店員はいないよね?
凄く嫌な予感しかしないのだけれども。
ゴルドが近づいてくる。
「すまねぇな、渡せる報酬が少なくてよ。功績からすればもっと貰ってもいいんだが、こっちも実入りが少なくてな。わりぃが勘弁してくれると助かる。その代わりといっちゃあなんだが、ランクをAに上げることにした。お前さんの実力なら問題ないだろうからな」
むぅ、とうとうAランクか。
まだこの世界に来て、2ヶ月半くらいだろうか。
早いものだな。
後はSランクに上がるだけだが、税金の観点からすると、これ以上は上がって欲しくない気もする。
「精々、頑張ってもらわないと。私達もちゃんと養ってもらわないとね!」
「修平なら大丈夫だ! こう見えて甲斐性はあるからな!」
「僕もついででいいのでお願いします!」
「俺達の事も忘れないでくれよ、旦那!」
最後のは聞かなかった事にしよう。
ダニエウ、お前らはちゃんと自分の足で立て!
こうして一同はギルドを後にし、再び鳥車へと乗り込むと、クロイツへ向け出発するのであった。