51話 カジノの誘惑と溢れる後光
悪役が足りなそうなので、魔武具の数を二つ増やしました。(自由か!)
ちょっと話も思いついたので……
コロコロと変更してすいません。
筆者、優柔不断なので仕方ないですね。(諦めも大事です)
ツェーン北東、始まりの森跡。
何もない更地の真ん中に、突如黒い影が現れる。
「ここまでくれば大丈夫か?」
影の中からは二つの物影が出てくる。
一つの影が薄れると、それは一人の壮年の男だった。
もう一つの影はそのまま倒れたままだが……
「ったく、人使いがあらいね。もうちょいでこっちまでヤバいっての。しかし、これからどうするかね……長距離移動ができないのは痛いな」
男は呟き、空を見上げると、胸のポケットにしまってあった煙草を取り出し、火をつける。
ゆっくりと煙を吸い込み、吐き出す。
「この拘束具もいつまで持つか知らねぇ。ったく、あのじいさん、俺には無理ばっかり言いやがる。やれやれだぜ」
それだけ呟くと、男は煙草を地面に落とし、踏みつけるように火を消す。
そして、もう一つの影を肩に担ぐと、再び己の生み出した影の中へと消えていくのだった。
その頃……
おっさん一向は修平の"あそこ"の処置を終え、ギルドより報酬金を得た後、鳥車を走らせクロイツへと向かう。
バタバタしていた為、報酬金は魔石で貰った。
クロイツに着けば売るのも問題はないだろう。
ファーデン内部は街道がしっかり整備されている為、揺れも少なく走りやすい。
このまま順調にいけば、夕暮れ時にはクロイツに着くことができるだろう。
衛星都市の外側と違い、内側は比較的穏やかだ。
普段は外側で魔物を間引いている為、魔物の姿もほとんど無い。
例え遭遇しても、サイズは小物ばかりだ。
故に無視して、先へと急ぐ。
途中、ダッチウの休憩も兼ねて草原で昼食をとる。
おっさん達の活躍を聞いて、宿の女将さんがサンドイッチを作ってくれた。ありがたいことだ。
皆でこれからの事を話し合う。
「アンデッドか、このパーティーにはヒーラーがいない。ゾンビなら火もそれなりに効くらしいが、この中ではラミィしか使えないか……」
あとはポーションが効くのだが……
「あれだけの数がいるのでは、焼け石に水じゃな」
サイコがダッチウに水と草を与えている。
ダッチウは草でいいのか、経済的だな。
確かに、サイコの言うとおり、ポーション作戦では金貨が何万枚もいりそうだ。
せめて薄めてから霧吹きとかで使えないだろうか。
え、効果も薄れるから意味がない。
はい、すいません。
今回は風魔法のハリケーンをもってしても、全て吹き飛ばせるかはわからない。
使った後に自身が倒れてしまう為、そう簡単には使えない。
まぁ、最悪、使わないという選択肢はないが……
「俺は使えないけど、光魔法で、ぱぁ〜っと浄化できないもんかね? こんな感じで、光る頭頂!」
ピカァ――――!
おったまげ!
ま、まぶしい!
なんで使える様になってるの!
なんでもアリだな異世界!
「流石、修平! 先を読む男だな!」
アリエルの視線が痛い。
うん、たまたまなんです。
首都に着いたら一度、ステータス確認をした方がいいかも知れない。
なにやら恐ろしい事になっていそうだが……
あ、点滅してから消えた。
効果時間は三分ってとこか。
ウルト◯マンのタイマーみたいだな。
この魔法がアンデッドに効くのか調べないといけないな。
だが、ポーションを何千個も使うのと比べるならば、まだ現実的かも知れない。
なんだか、どんどん人間離れしている気がする。
宗教団体の教祖とかなれそうだな。
もうね、真面目に考えるのは半分諦めたよ……
改めて仲間を見てみると、サイコ達は軽装ながら、エルフの作った防具なのでそれなりだ。
アリエルやラミィはおじいさんの残した武器や防具でなかなかの物だと思う。
ダニエウ達は……
「俺達の装備? そういえば新人の頃からほとんど変わってねえな」
「俺達、物持ちはいいんだぜ!」
「買い換えるくらいなら、そのお金を他で使うんだな……」
どんだけなんだよ!
お前ら普段はズボラなくせに、装備だけ物持ちが良すぎるだろ!
っていうか、よく今までそんな装備で生きてこれたな!
こっちなんて武器も合わせると既に5回も更新してるんだぞ!
まぁ、あの店員の強制販売な気もしないではないが……
今までの戦闘が防具の性能に助けられているのは間違いない。
しかし、このままこいつらに何かあったとしたら、後々寝覚めが悪い。
クロイツに着いたらダニエウ達の装備を少し更新するとしようか。
お金は勿論、修平持ちだが、ダニエウ達は物凄く喜んでいる。
本当は自分達のお金でなんとかしてほしいのだが……
手持ちの資金も少なくなってきた。
どこかにいい金策はないものだろうか。
宿も鳥車が置け、なおかつ防音がしっかりしている所を選ぶから、何気に高いのだ。
え、なんで防音が必要なのかって、ご想像にお任せします。
「そういえば、クロイツにはカジノがあるって聞いた事があるんだ。旦那の強運なら簡単に大金持ちになれるんじゃねぇか?」
カ、カジノだと……ゴクリ……
ダメダメ、ギャンブルは身を滅ぼす。
余剰金ならともかく、今はそこまでの余裕が無い。
「旦那! そんなに心配しなくても、カジノの近くにはお金貸してくれる所もあるみたいっすよ」
馬鹿なのかモブA、そういう所はだいたい金利が物凄く高いんだぞ!
「勝てば問題無いんだな……全額つぎ込んで、ルーレットの赤黒なら二分の一で勝てるんだな……」
モブB、分かっているのか? 二分の一は負けるんだぞ!
「カジノってなんだ? あたしも行ってみたい!」
アリエル、お前はダメだ!
女の子はお金を限界ギリギリまで搾り取られて、最後は娼館に売られるんだぞ!
「ちょっと過保護すぎじゃないかしら、分別をわきまえれば大丈夫でしょ」
修平は真顔でラミィを見つめる。
「ラミィ、ダニエウ達を見て、もう一度同じ事が言えるのか?」
ラミィはダニエウ達三人をまじまじと観察した。
ダニエウ達は笑っている。
その表情を見て、どうやらラミィは諦めた様だ。
「私が悪かったわ、こいつらに何を言っても無駄ね」
「どのみち、この緊急時ではカジノも開いてないのではないのか?」
サイコが至極まともな事を言う。
「あ!」
そりゃそうか。
こんな時にカジノに行くなんて、かなり頭がおかしい奴だな。
まぁ、社会勉強の為に、もしも開いていたら寄ってもいいかも知れない。
あくまでも社会勉強為だが……頭の片隅にでも置いておこう。
昼食の片付けを終え、再び進もうとした時だった。
遠くから馬に乗った男が駆けてくる。
速い、どうやらかなり急いでいる様だ。
「アハトから来た冒険者か? このルートだとクロイツに向かっているのか?」
修平は頷く。
「アンデッドの軍団が進行を開始した。そのまま東には進まず、おそらくニンフに向かっている。可能ならば君達もニンフに向かって欲しい。緊急時なので夜でも申請すれば街には入れる」
男はそれだけ言うと、アハトの報告に再び駆けて行った。
ニンフか、この場所からなら、街に着くのは夜中過ぎか、朝方くらいにはなるな。
ニンフにはここから直接向かうとしよう。
こんなこともあろうかと、実はアハトで買っておいたのだ。
テレレレッテレ〜〜♪
ファーデンわかるんです君!
このネーミングセンスの無さ、修平は親近感を感じる。
これはコンパスの様に、各都市と首都の方角がわかるという優れた物だ。
各都市の中心には各々特殊な石が置いてあり、これはそれを示してくれるのだ。
しかし、特殊防壁や特殊コンパスなど、千年前なのにこの技術の数々、街の創設者はどれだけ先を見越して作ったのだろうか……
鳥車を走らせ、ニンフに向かう。
道中、クロイツの姿も遠目に見えた。
なんと大きな街か。
中央に向かうにつれ、街が高くなっている。
中央辺りの地価は、もの凄い事になっていそうだ。
ダッチウには頑張ってもらっているが、鳥なので夜が弱い。
途中からは鳥車を降り、手綱でダッチウを誘導する。
夜中、休憩をしていると、前方からアンデッドが数体歩いてくる。
軍団とは違い、はぐれたアンデッドか。
数は6体、ゾンビが主だ。
丁度いい、あの魔法が効くか試してみよう。
「皆、絶対に直接は光を見るなよ! 前よりもっと光るイメージを持って、冴え渡る朝日の後光!」
光の玉は空に上がると、いきなり発光する。
瞬間、暗闇に凄まじい光で明るくなっていく。
辺りはまるで昼になった様だ。
ち、ちょっと、これは光りすぎじゃないか?
「旦那! 目が、目がぁ〜〜〜!」
ム◯カ大佐か!
「見るなって振りじゃなかったのか、旦那酷いぜ!」
ダチョ◯倶楽部か!
「ほわぁ〜〜〜〜、なんだかポカポカするんだな……パトラッシュ俺はもう疲れたんだな……」
なんでパトラッシュを知ってるの!
何故かモブBが今にも浄化されそうになってるぞ!
誰か止めて!
お前ら、ちゃんと魔法を使う前に忠告したよね?
こんな場面では流石にボケないから。
光はゾンビ達を照らすと、徐々に体が崩れていく。
「おおっ! 成功か。ん、なんだ? 向こうからなにやら沢山……」
修平達は馬に乗った衛兵達に囲まれた。
見廻りをしていた所、いきなりこの場所が明るくなったので、心配になって見に来たそうだ。
理由を話すと、その後に無茶苦茶怒られました。
いや、だって一度は試してみないと危ないから。
……ゴメンナサイ……
おっさんは相変わらずの平常運転であった。
明日は用事があるので更新は無しです。
すいません。
久しぶりの休みなんですが、家族サービスも大事ですので。
腰痛で腰が……