45話 下準備と新武器と
朝チュン……
そういえば、異世界にすずめはいるのか、最大の疑問です(笑)
チュンチュン……
朝、快晴、雲は一つもない。
おっさんの顔も晴れ晴れとしていた。
横にはまだ寝ているアリエルがいる。
なんだか無性に恥ずかしい、もうアラフォーだというのに、アリエルの前で大泣きをしてしまった。
しかし、もう手の震えは止まった。
あいつらを止めないと、どこかで悲劇はまた繰り返される。
大事な物を守る為には覚悟を決めないといけない。
そう決意して階段を降り、食堂へと赴く。
「ゆうべはお楽しみだったわね……」
ビクッ!
「は、は、は……おはようラミィ」
なんだか気まずい。
そんなに声が大きかっただろうか? 色々と。
「まぁ、いいわ。それより、これを見てちょうだい」
台車? 上には何も乗ってないが……
「昨日あれからね、あの空き地に置いてあったこの台車で、あなたと敵の男の遺体を乗せて帰ってきたの。遺体は布を被せてここに置いていたのだけど……」
ふむ、何もないと。
「あの三馬鹿に番を頼んでいたのに、あいつら……何で無いのよ!」
「ダニエウ達は?」
あいつらの姿が見えないのだが……
「あんまりにも腹が立ったから、サイコ達に面倒を見てもらっているわ」
そういえば、何か遠くから男の悲鳴が聞こえるな。
「あの黒い鎧が心配よ、勝手に歩いて出て行ったのかしら?」
ふと、気になり返済ボックスを出してみる。
あれ、なんだ? 結構な額が減っている? ん、なんだコレは一瞬……
ははっ、見間違いだよね? そうだよね、そうに違いない!
気を取り直し、最近の履歴を見てみる。
雑貨、千六百五十円。
魔力増強と守りのピアス×2、二百五十万。
焔の加護の指輪、百八十万。
腕力強化の指輪、三十八万円。
名匠の長剣、六百六十万。
漆黒の鎧、0円。
返済額1023000円……
ガガッ、ガガガガッ!
返済額6838000円
なんだ? バグなのか? それとも仕様なのか?
いきなり金額が増えたのだけど……でも先程の金額は……
は〜、もう深く考えないでおこうか。
でも、これって……
おそらく、ガムスという男が身に付けていたであろう物が、全て返済に充てられている。
だが、いったい誰がボックスに入れたのだろう?
うーん、考えてもわからん。
そんなオート機能なんてあったのか?
「そういえば、昨日、いなくなったこいつが言っていたわね。勇者って……まさか、あんたなの? 思い返せば……ファンケルもあの夜、勇者であるあんたに抱いて欲しいって……」
ビクッ!
「は、は、は……なんのことかな」
修平の瞳が、今までにないくらいに素早く、目が泳いでいる。
ラミィはため息をつくと、修平を横目に。
「私は仲間外れなのね……悲しいわ」
…………そんな目で見ないで下さい。
とはいえ、ボックスの件も話さなくてはいけない。
ラミィはしっかりしている事だし、話しても大丈夫だろう。
しかし、ダニエウ達には黙っていてもらおう。
あいつらは歩く広告塔だからな。
…………
「ふーん、だからあの強さなのね、納得したわ」
いや、一応必死に鍛練もしているんです。
おそらく、今が人生で一番頑張ってますよ。
そんなぽっと出みたいに言わなくても……
「まあ、少し安心したわ。あれは放置するには危険だもの、本当は研究者に渡した方が良かったかもしれないけど」
そうだ、あの瓶の薬品がなければ、今頃町は大損害だっただろう。
砂漠でも一度見たが、あれは、あの闇の獣は桁違いの力だ。
人が簡単になんとかできるものでは無い。
おそらく、彼方もホイホイ使えるものでもないのだろうが。
昨日の奴も"出来れば使いたくない"みたいな事を言っていた。
何か使用するにあたり、条件があるのだろう。
トンッ……トンッ!
アリエルが軽くふらつきながら、二階から降りてきた。
「おはよう、修平、ラミィ……」
「ど、どうしたのアリエル?」
ラミィは昨日の戦闘で怪我でもしたのかと、アリエルの体を心配している。
「いや、起きたら腰が……」
すいません! ラミィさん、そんな目で見ないで、パート2です。
ファンケルも降りてきて、アリエルの補助をしている。
サイコ達もようやく戻って来た様だ。
ダニエウ達は宿に着くなり、庭でのびてはいるが……
さて、これからの予定だが、衛星都市のマハトに向かう準備に取り掛かろうと思う。
足りない物の補充や武器、防具の手入れなど、砂漠やエルフの南の里で出来なかった事をしておきたい。
補充はサイコ達がやってくれるそうだ。
雑用ばかりしてもらっているが、気にしなくていいと言ってくれた。ありがたいことだ。
なので、こちらは武防具店に行こうと思う。
昨日の戦闘でトゥーハンドソードの刃が欠けてしまった。
力の限りおもいっきり振ると、武器の方がついてこれなくなっているのかも知れない。
ダニエウ達は庭に放っておいていいとして、ラミィ達はついて来るそうだ。
まさか、ここにはいないよね?
修平の脳裏には、あの店員の姿が思い浮かぶ。
毎回、記憶が曖昧になるが、今度はやられないぞと。
まぁ、そんなに毎回会うこともないだろうが……
「ちわ〜〜!」
「いらっしゃいませ〜×2」
修平は店に入るなり、警戒して周りを見渡す。
警備用のゴーレムはいるが、うん、あの店員はいないみたいだ。
良かった、二度あることは三度ある。三度あることは四度もあるのかと……
心を落ち着かせ、店の品をゆっくりと見て回る。
「何かお探しですか?」
一人の新人らしき店員が声をかけてくる。
修平は武器が欠けてしまった事を伝え、直すか、変わりの物がないかを聞く。
「ちょっと! そこのあなた、あの子を呼んできて頂戴!」
もう一人の店員に言われ、新人らしい店員は奥へと駆けて行った。
奥にも見るスペースがあるのか?
そういえばアリエル達は奥の方を見に行ったな。
しかし、あの子か……なんだろう?
何か、もの凄く嫌な予感がする。
「あら? お客様ではないですか!」
げぇっ!
なんでここにいるの?
キャラバン隊長って言ってたよね!
「そんなに嬉しい顔をされなくても、いいじゃないですか、もう! やはりお客様と私は運命の赤い糸で繋がっているんですね」
はっ!
そうだ、今日は一人じゃない!
助けて! アリエル、ラミィ、ファンケル!
奥から三人がやって来るが、なんだ? 三人とも目が虚ろなんだけど……
「修平、これなんかどうだ……」
なにその無駄にガチャガチャした鎧は!
鎧は別に今のままでいいから!
「あんたにはこれが似合うんじゃない……」
なんだその派手で重そうな兜は! そんなの被って動けるの?
敵に"狙って下さい"って言ってる様なもんだぞ!
「僕はこれがいいと思います……」
無茶苦茶カッコいい靴だが、戦闘には必要ないよね!
すぐにボロボロになりそうだよ!
ちょっと皆! しっかりして!
「いや〜、お客様のお陰でキャラバン隊長は卒業できましてね。これから頑張って、王都かファーデンのクロイツを目指そうと思いまして、またお客様には御贔屓にしてほしいな〜と思いましてね、どうでしょうか?」
ぐっ!
気をしっかり持つんだ、このままでは、このままでは……
「ほぅ、なかなかに良質な魔石をお持ちではないですか、お客様には驚かせられっぱなしですね、そういえば武器をお探しでしたね、これなんてどうですか?」
ぐぐっ! 負けん、負けんぞ!
「粘りますね、大丈夫ですよ、金額のオマケはちゃんとしますからね」
……
…………はい、お任せします。
……
…………
はっ、俺はいったい何を……
広場の大きなベンチに、四人で座っている。
手には……紙と袋が。
新しい武器が鞘に入って床に置かれていた。
毎度お馴染みの説明書は付いている。
大剣ツヴァイフェンダー、材質はオリハルコン、魔力発動媒体付きなのはいつも通り。
しかし、これ以上でかくなったら持てないぞ!
ほぼ身長位あるんだが、しかも結構重い。
ダニエウ位なら簡単に両断できそうだ。
値段はいくらなんだろう?
……おっさんは紙を見て気を失った。
そこには……
ダーククラブの魔石買い取り額、金貨三百二十枚。
トゥーハンドソード買い取り額、金貨百三十枚。
ツヴァイフェンダー値段、金貨四百二十枚。
ド、ドンダケ〜〜〜〜〜!
前回のサンドワームの魔石。
売却金額は700枚でした。
盾が金貨80枚。
肘宛、膝宛合わせて金貨40枚。
トゥーハンドソードは金貨230枚。
今回は破損していた分を差し引いた売却金額となっております。
読み返したら書いてなかった……
すいません。