42話 港町でシーフード
最近、物騒な事件が多いですね。
自分より若い方が亡くなるニュースを見ると、心が痛くなります。
皆様も御自愛くださいますよう、そう思う今日この頃であります。
遠目に港町が見えてくる。
昨日のシーサーペントの群れから逃げる為に、かなりのスピードをだして飛ばしたおかげで、町には早めに着くことができたのだった。
竜巻を派手にぶっ飛ばしたからだろうか、魔物の襲撃はあまりなかったのはいいのだが……
軽蔑の視線という、新たな精神攻撃に、おっさんの心は苦しめられている。
パスモンが行者を受け持っている方のダッチウが、昨日の無理がたたってしまい、かなり弱ってきていた。
それ故、負担を減らす為に、今日は女子三人組の方の鳥車に乗っているのだが……視線が痛い。
ラミィがアリエルに告げ口したからなのだが。
いや、未遂っていうか、する気はないからね。
だから、そんな目で見るのは勘弁して下さい……
「まぁ、修平に限ってそれはない……だろ?」
できれば、そこは断定でお願いします。
「わからないわ、いつも変態っぽいもの。ファルは可愛いからいつ襲われるか心配だわ」
いつもって、し、信用がないね……
ちょっと待て、そこ! ファンケル、赤くならない! 絶対襲わないからね!
流石にないよ、いくら俺でも小さい子には"おっき"しないよ。
確かに合法ロリなら、あり得ないこともないことはないが……
とにかく、おっさんの変態談義は終わりにして欲しい。
そろそろ港町に着くのだ、他の人に聞かれたらどうするつもりなの? 変態おじさん登場! 勘弁してください……
港町に着いたら、とりあえずは宿で一泊し体を休める。
次の日はそこから東の街道を進み、まずは衛星都市のアハトに、そして更に、東にある首都クロイツへと向かう。
いったい何日かかるだろうか?
冒険者ギルドも勿論ある。
そこで、有料ではあるが、クロイツやレオニアル達が寄りそうな他の支部にも、連絡もしてもらおうと思っている。
ファンケルの話によれば、レオニアル達は北の里から穀倉地帯を抜け、クロイツへと向かったと思われる。
何事もなければ、おそらくはそこで合流できるはずだ。
ライオンにはそこで待っていてもらわないと……
この町でやることはそれなりにある。
ラミィも機嫌がいい。
「港町か、魚介系の美味しい料理が食べたいわね」
旅の途中とはいえ、食事を楽しむくらいしてもいいだろう。
港町と言うくらいなのだ、ちゃんとした普通のシーフード店もあるだろう。
修平は期待に胸が膨らむ。
砂漠の旅の時から、豪快料理が多いのなんの。
動くサボテンステーキとか、巨大なカニとかね。
門をくぐり抜けると、サイコ達は先に宿を取りに向かってもらった。
鳥車がおける宿じゃないといけない為、数が限られるそうだ。
とりあえずは、まだ時間はありそうだ。
魔石の換金が先だろうか……それとも冒険者ギルドに向かうべきか。
そう考えていると、ダニエウ達にお小遣いを要求される。
どうやら、こいつらは娼館に行きたいようだ。
まぁ、悶々するのはわからないでもない。
だが、なぜお前らにお小遣いをあげなければならないのか?
戦闘でもまったく役に立ってなかったよね!
「なんだかんだ言って、近くに綺麗処がいると溜まるんでさぁ!」
ラミィさんの軽蔑の眼差しに耐えうるとは、成長したなダニエウ。
いや、前からか……
「出世払いって事でお願いしやす!」
お前らが出世する未来が、俺にはまったく見えないぞ!
「ここ、ヴァニラちゃん似の娼婦がいるみたいなんだな!」
いい加減、新しい恋探せよ! 引きずりすぎだよ!
ヴァニラちゃんは今頃違う男としっぽりしてるよ!
は〜、変わらないなこいつらは……
まぁ、少しくらいならいいか。
小さい魔石ならあげ……あれ?
袋の中を探すが、ダーククラブの魔石以外無くなっている。
なんで?
ダニエウ達に疑いの目を向けるが、首をブンブン横に振っている。
どこかに落としたのだろうか?
袋に穴は空いていないのだが、むむっ、わからない。
近くにあったスーツケース?は相変わらず開かない。
しょうがないので、ダニエウ達にいくら欲しいのかを聞く。
この世界の娼館の値段が、一度も行ったことがないからわからないのだ。
「かける時間や人によってピンきりだが、金貨一枚から銀貨三十枚ってとこか。王都で最高額だと金貨十五枚ってのがあったな」
「この町はそれなりだからな、あんまり安い娼館がないみたいなんだ!」
「特殊なプレイも無理みたいなんだな……」
お前ら、いつの間にそんな情報調べたんだ。
まぁ、でもそんなに安いものでもないか。
本番ありが当たり前らしいが、万が一の病気のケアなどで娼婦のお給料はそんなに悪くないらしい。
当然だな、女性を守る上でそこは最低ラインだろう。
しかし、金貨十五枚だと……百五十万。
一夜の夢にしても高すぎるだろう!
おっさんとて興味が無いわけではない。
だが、今となっては進むは修羅の道。
戻ってアリエルに行こうにも……
くっ、ラミィだけでなく、ファンケルまでが障害になるとは。
また暴発したらどうするんだ。
「旦那、早くしてくれよ! 一人金貨一枚でいいからさ!」
ムカッ!
こいつらに金の価値はわからないのか。
其処らじゅうにツケしまくりだからな。
こっちは返済するのも大変なんだぞ!
「三人で金貨一枚だ! それで充分すぎるだろ、後はなんとかしろ!」
「えー! そりゃないぜ旦那ー!」
ダニエウ達はブーイングをするが、何故か魔石の数も減っている以上、無駄遣いはできない。
まだ、旅でいる物を買ったり、宿のお金だって必要だというのに。
なんでこいつらの分まで……はぁ、ここからとっとと西の大陸に送り返したい。
送り返すにも、一人あたり金貨五枚はいるのだが。
梱包してまとめて、一人分の代金で送り返したいところだ。
散々文句は言っていたが、それでも納得してダニエウ達三人は去っていった。
どうやら、三人でまとめ割りをするらしい。
なんでも同じ時間で三人まとめて一人の女性が相手するそうだ。
この世界の娼婦も大変だな。
それくらい真面目にダニエウ達も働いて欲しいところだ。
アリエルがお腹を擦る。
「修平! お腹ペコペコだ!」
そうだな、やることやったらこっちは腹ごしらえをしよう。
シーフード、とても楽しみだ。
まず先に冒険者ギルドで連絡の依頼を済ませ、サイコ達が戻ってきたので、宿へと荷物を預ける。
サイコ達は宿で休んでいるそうだ。
明日からも、鳥車の行者をお願いしなければならない。
誠に申し訳ないが、お土産でも持って帰るとしよう。
宿でも食事はできたのだが、どうせならとおすすめのレストランを教えてもらった。
名を"浜辺の風亭"。
この町でも、シーフード料理では有名な店らしい。
足早に店に着くと、ギリギリ四名の席が空いていた。
結構、混んでおり、流行っているのは間違いない。
忙しく動いているところ悪いが、大声で店員を呼ぶ。
駆けつけてくれた店員のユニフォーム、中々に胸が強調されている仕様なのだが、残念、あまり意味がなかった。
すいません、店員さん。そんなに怖い顔をしないでください。
綺麗な顔が台無しですよ。
ゼロ円のスマイルお願いします。
冗談も程々にして、各々、好きな料理を頼む。
「こっちに書いてあるクラーケンの塩焼きと、シーサーペントの蒲焼き。むぅ、これも美味しそうだな、じゃあ、これとこれも……」
ち、ちょっとアリエルさん! そんなに食べれるの?
店員さんもちょっと引いてるよ!
「育ち盛りだからな、ほら、ファンケルも沢山食べないと大きくならないぞ!」
「お、大きくか……」
ついついおっさんの視線はアリエルの胸に引き寄せられる。
あだっ!
ラミィさん、折檻は止めてください。
店員さんも、叩きやすそうな棒をラミィに渡さないでください。
そんなくだらないやり取りをしながら、久しぶりにゆっくりとした食事を楽しむ、おっさん達なのであった。