表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/104

閑話 変人研究者グリーフの話

異世界フィクションなので、"そんなに速くできない"とかツッコミはなしでお願いします。

本職じゃないのでよくわかってませんので…………

 儂はグリーフ、研究者をやっておる。


 歳は七百ほどか、途中から数えるのを止めてしまったわ。

そんなことどうでもいいからの。

エルフは長生きじゃからな、あまり気にするやつはおらんな。

あまりに暇すぎて、趣味で始めた研究じゃが、ついつい面白くてのぉ、のめり込んでしもうたわ。


 魔法レンズを開発してからは、細菌や科学反応など、魔法とはまた違う魅力にとりつかれてな、日夜、研究に明け暮れておる。

 エルフの樹化に関しても興味深い。

儂の開発した薬を投与すれば樹化が緩やかになるのじゃ。

今のところ儂と長老くらいしか試してないがの。


 まぁ、この問題はエルフの尊厳にも関わるからの。

他の者には無理強いするつもりは無い。

長老も最初はかなり渋ったからのぉ。

え、それって無理強いしてる?

多分、同意の上じゃよ、これはノーカンなのじゃ。



 最近の研究テーマは"闇に対抗するにはなぜ紋様なのか"じゃな。

レオニアル殿達の話を聞く限り、普通の種族がまともに闘ったのでは太刀打ちできん。


 さらに、紋様がうっすらと光ったというのも興味深い。

未知のウイルスに対して抗体が働いているのかも知れん。

実に面白い!


 彼ら紋様持ちの血も分けてもらった。

紋様周辺から取らせて貰ったのじゃが、中に未だ見たこともない物質が含まれておった。

今は培養中じゃが、もしかしたら、いずれは疑似紋様も作れるようになるかも、じゃな。

スピードは遅いが、培養には成功していることじゃ、んほっ、夢は広がるのぉ。


 貰った鎧も役にたっとる。

マジックバックに入っていたせいか、劣化してないのもいい。

微かに闇の残滓がある。

特殊なケースに入れて保管しておるが、闇が充満し始めておる。

いいのぉ、そそるのぉ!


そうじゃ!

培養した成分を使い、針で他の者に埋め込んでみるのはどうじゃろうか?

危険ではあるが、人体実験は必要じゃからな。

〜〜〜♪

ついつい鼻歌がでてしまうのぉ〜〜♪


 最悪、血が無くなったら、この里にも紋様持ちはいるからのぉ。

体は小さいが限界を見極めて抜いてやれば、ぬほほ!


 え、怖いじゃと?

科学に犠牲は付き物じゃ!

いつかはここも襲われるかも知れん!

決して儂の欲求の為だけにやっている訳じゃないんじゃ!

あー、楽しみじゃの〜〜〜〜!

あ、うっかり本音が漏れてもうた。

歳はとりたくないものじゃ。

げふん、げふん!


んおぉ!


 微かではあるが、埋め込んだ所が光っておる。

施してないエルフは倒れてしまっているが……まぁ、放っといてももおそらく大丈夫じゃろう。

うむ、何もしていないエルフと違い、埋め込んだ者は力も少しなら入ると。

顔が青いな? どうしたのじゃ?

まさか、副作用か?

え、別に問題はない?

驚かせるんじゃない。

しかし、途中ではあるが、実に面白い!


え、怖いからもうやめてくれじゃと!

まぁまぁ、よいではないか。

まだまだやりたいことがあるのじゃからな。

あっ、こらっ!逃げるんじゃない!


里の発展のための礎になるのじゃ〜〜〜!



ドッガシャ!

ヒューーボガッ!


な、なんじゃ?


 徹夜明けには、ちと激しい目覚ましじゃな。

明るいのぉ、今日の天気は晴れか……のぁ、さ、里が燃えておる?

いったいなにが……

遠目に何か見える……あの黒い獣みたいなものが、里を燃やしておるのか?


バタンッ!


「グリーフ殿、長老がお呼びです! お急ぎを!」


 落ち着くんじゃ、焦りは脳を停滞させる。

深呼吸、ごほっ、け、煙が、くそっ!

「ゲホッ、グリーフじゃ、入るぞ!」


 そこには長老が臨戦態勢で待っているではないか。

まさか奴等の襲撃か、想定よりもかなり速い。

まだこっちは完全に完成してないというのに。


「グリーフ! 実験は少しなら完成していると聞きました。どのくらいの人数にできるかわからないけど、早く里の精鋭に施しなさい!」


駄目じゃ、まだ軽く抵抗できるにすぎん。

こんなものでやり合うのは自殺行為じゃ!


「敵は待ってくれないわ、グリーフ。あなたは施術したらファンケルと共に里から逃げなさい。まだ、あなたの力はきっと必要になるはずよ」


い、嫌じゃ、ここにはラボもある。

儂とてこの里の人間じゃ、最後まで戦うぞ!


「グリーフ……お願いよ、幼なじみの最後のお願いを聞いて。あなたには生きていて欲しいの」


クソッタレじゃ、そんなこと言われたら……

ぁぁあ、分かってる、頭では分かってるんじゃ。

畜生、こんなに不甲斐ない自分は嫌じゃが、死にたくもないんじゃ!

くそっ! くそっ! くそっ!


とりあえずは十人くらいしか無理じゃ、サンプルも持っていく。

早くせい!

おいっ、そこのお前はラボから儂の鞄とここに書いたものを。

お前はファンケルをここに連れて来ておけ!


時間がない、急げ!

急ぐんじゃ!


……

…………


とりあえずは……これでいいはずじゃ。


「ありがとう、グリーフ。ファンケルをお願いね。大丈夫よ、私は簡単にはやられないわ」


 長老は聖霊を呼び出すと、儂と気を失っているファンケルを掴ませた。

ファンケルが暴れないようにする為か。

確かに、この光景は幼子にはキツイ、できるなら見ない方がいい。


 聖霊が羽を広げ大空に高く舞い上がる。


あぁ、里が遠くなっていく。

「生きて、また会うんじゃからな! 実験結果を聞かせてもらわんといかんしな! マリア! 絶対じゃぞ!」


遠目でマリアが笑っているのが見える。



 更に、戦場は激しさを増していく。

闇の範囲外から魔法で抵抗している者もいるみたいだの。

でかい獣は消えたが、闇は広がったままじゃ。


がはっ、爆風がここまで。


まだあかんぞ、できるだけこの光景を忘れないように目に焼き付けておかんと!

必ず、必ず完成させる。

お前らが誰かは知らんが、必ずリベンジする。

絶対じゃ!


いくつか設置しておいたキャリーボイス君、そこから微かに声が聞こえてくる。


「この体が半分くらい木の婆さん、なかなかしぶとい、ガムス、後は任せた」

「スケア殿、貴殿は報告の方を頼む。強者よ、せめてもの情けだ、一撃で仕留めよう」


ガガッ! ツーーーー


 あああぁ、本当にきついときは声にならんものだな。

儂はそこで気を失ったんじゃ。



 気がついたら見知らぬベッドの上に寝ていた。

そこのお主、南の里に無事に着いたのか?

はっ、そうじゃ、ファンケルは無事かの?


ふぅ、横で寝ておった。

良かった、どうやら大きな怪我も無いようじゃ。


儂も、つっ、と左足が無いか……

このくらいで済んで良かったと思わなければな。


傷は痛むが、今はそれどころではない。

荷物は無事か?


そうか、ならば寝ている暇ではないの。

すまんが手を貸して欲しい。

すぐにでも研究を始めないといかんのだ。

ここもいつ襲われるかわからんしな。

儂を逃した事を、奴等に死ぬ程後悔させてやるんじゃ。


むぅ、涙か……まだ枯れておらんかったか。


 あぁ、マリア、儂はお前を愛していたんじゃな。

いなくならないと気づかんとは、なんと情けないことか。


だが、泣くのはこれが最後じゃ。

マリア見ておれ、必ず完成させてやるわい。

それまで天国で待っておれ。


まぁ、儂がそこに行けるかどうかは別じゃがの。


日曜日は新しい更新は、なしです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ