38話 ガリオン帝国の実情
名前が被っていました。
検索から適当につけるからこうなる。
(すいません)
エルフのちびっこはファンケル(略称はファル)に直しました。
夜中におっさんが一人、騒いでいる。
「ヤバい、そろそろ限界だ。歳を取ると尿意が近いんだよ〜」
じたばたするのだが、なかなか縄が外れない。
どれだけ固く縛っているんだ。
だが痛みはない、絶妙な縛り加減だよ!
「旦那〜、うるさいぜ。あんまり騒ぐと周りに迷惑だ……」
おおっ、いいところにダニエウ!
「だ、旦那、そんな趣味があったんですかい?」
モブAとモブBも起きてくる。
「なんです?新しいプレイ?俺も混ぜてくださいよ〜、あれ? 女の子はどこです?」
「はぁ、はぁ、俺も未知の扉を開くんだな………」
勘弁してくれ〜!
早く、早く縄を切ってくれ〜!
………………
……………………………
ジャーーー!
「ふぅ、なんとか人としての尊厳は守られたな」
ダニエウ達を部屋に返し、ようやく眠ることができた。
スカトロプレイはおっさんにはレベルが高すぎたようだ。
修平が人間の尊厳を守るための闘いをしている頃。
ガリオン帝国居城、ある部屋のベッドでは若い男が横になっている。
「ありがとう、サラのおかげで落ち着いてきたみたいだ」
サラの瞳が潤む。
「もう少しなんだけどね、なかなか粘るんだ」
男の額には大粒の汗がうかぶ。
「リンネ様も、もうおやすみになられてください。御身になにかあれば我らは生きていけません」
サラは男の汗を優しく拭う。
「ごめんね、少し休むよ」
リンネと呼ばれた男はすぐに寝息をたて始める。
サラは立ち上がると部屋を後にした。
部屋を出てしばらく歩くと影から一人の男が出てくる。
「ディノ、何か用かしら?」
「…………………」
声が何を言っているか聞き取れない。
すると、サラは長いため息を吐く。
「貴方の飼い主はどこかしら? 私では貴方の声は聴こえないみたい」
「………………」
ディノはついてこいと言わんばかりに首をクイッと向ける。、
向かった先は執務室だった。
そこでは男が書類と格闘している。
「私に来させるなど、随分いい身分ね、シラー」
シラーはため息をつく。
「仕方ないだろう。これを見たまえ、もう1人私が欲しいくらいだよ」
「用がないなら帰るわよ」
シラーは書類の一つをサラに渡す。
「スケアからの報告だ、北は落としたらしいが、何かが逃げたそうだ。何かはわからないみたいだがね」
サラは肩を竦める。
「それと私、何か関係あるの?」
シラーは目を細めサラを睨む。
「逃げた先はおそらく南、鬼どもの始末を"しくじった"お前がどの口で言うのかね。順調であれば今頃、南の里も攻略できていただろう」
サラも睨み返す。
「仕方ないでしょう、帰還命令が出たのだから。それに死んだのは馬鹿が一人、損害としては無いものと同じでしょう」
何か文句があるのかと。
「まぁ、それはいい。落ち着き次第、スケアとガムスはそのまま南下し港町を制圧する。お前はネディと周りの衛星都市を順次叩け」
サラは何故という顔をする。
「今度は人と戦争?早くないかしら、リンネ様もまだ"完全"じゃないのよ?」
「鬼など、後からでもどうにでもなる。問題はファーデンにいるあいつらだからな、それにしても勇者は本当に死んだのか?」
サラは王都での戦闘を思い出す。
「あれで死んでなかったら化け物ね、噂でも勇者は死んだと流れてきているのよ。勇者がたくさんいるのなら別だけど………」
ふと砂漠で闘った男が脳裏に浮かぶ。
(私のスキルも効かなかった、王都でも勇者の最大魔法を防いでいた。いったい何者なのかしら)
頭を振り、前を見る。
「用件はわかったわ、でも今回は単独行動では無理でしょう」
「制圧には人の手がいるからな、今回は神聖騎士団に動いてもらう。まずはこの大陸を手中に納める」
サラは露骨に嫌な顔をする。
「あの糞爺を使うつもり? 正気なの?」
「北海でサンプルAが死んで、砂漠では適性者が一人死んだのだ。手が足りん。"アレ"はこと戦では役にたつからな」
話は終わりとばかりに、シラーは書類へと目線を戻す。
サラは執務室を後にする。
(頭が痛くなるわね、人は長く生きると醜くなる、あの男はその典型ね)
ガリオン帝国、最初は800年程前、大陸東南のフィルメリアという小さな国だった。
当初は創神フィルメリアを奉る全うな宗教国家であり、法王を主体とし、布教を目的に細々と活動していた。
転期はおおよそ300年前、急に侵略を目的とした戦争を起こす。
神託で現れた創神フィルメリアは人の姿そのものであり、それゆえ多種族を認めないという人族至上主義を宣言。
その代の法王を初代帝王とし、12人の神聖騎士と共にガリオン帝国を作り上げる。
戦争は徐々に周りの小さな国々を巻き込み、ガリオン帝国は大きさを増していった。
更に、100年程前には大国を二つ飲み込み、現在の形となった。
国内を落ち着けるため、現在は内政に力をいれているはずだった。
だが、ここ最近、多種族とのいざこざが絶えないと。
また侵略戦争を起こすのではないか、と。
巷では囁かれている。
(崇拝しているのがまさか神ではなくて魔王なんてね、洒落が効いてるわ)
サラは腕を擦る。
そこには黒い腕輪がはめられている。
サラ達が使っているのは魔武具といわれる物。
伝承では最初の12人の神聖騎士が持っていたといわれている曰く付きの武具。
斧、鎧、長剣、腕輪、盾、兜、指輪、双剣、槍、細剣、大剣、槌。
現在は双剣と大剣が失われているが、今の帝国には10個存在した。
砂漠の戦いで斧は失ってしまったが、今頃は回収班が向かっているはずだ。
どうせあの武具は、適性がないと扱えない。
戦力の拡充の為に準適性者にレプリカを渡してサンプリングはしているが……
「意識が荒くなるのが問題よね、馬鹿の相手はもうたくさんだわ」
アムトは素で"あれ"だったが。
「おい、サラ!」
「あら? ネディ、あなたも聞いた?」
ネディと呼ばれた女性が近づいてくる。
手には短槍を持っており、片目を眼帯で隠している。
サラは顔を触ろうとするが、かわされた。
傷ではない、どうやら本人は見せるのが嫌なようだ。
「止めろ、心の古傷が痛むだろうが!」
「折角の可愛らしい顔なんだから、眼帯なんて外せばいいのに」
サラは厭らしい笑みを浮かべる。
「お前、知ってて言っているだろう! 嫌らしいやつだな!」
「あなたは"まとも"だからかしら、からかいたくなるのよね」
ネディは体裁を整える。
「いつ出る?」
「リンネ様の容態が落ち着いてからかしら、もうしばらくね」
ネディは頷くと"行くときに呼べ"と言い残し、去っていった。
先代の帝王が死に、その座がリンネに移って、はや5年。
サラの力を使い、リンネは徐々にその力を取り込んでいる。
もうすぐなのだ。
失敗は許されない。
自分の命はその為に存在すると、サラは心に決めている。
そして、ファーデンのあるであろう方角を見つめるサラなのであった。
ちなみにあの黒いバトルアクスは戦いの後……
「なんだこれ? 敵の使ってた武器か、重くて使えないし。あっ、そうだ、返済にあてよう、そうしよう。武器なんだし、見るからに高そうだからな〜、うしし、期待してるよ〜!」
うーん! ポイッとな。
しかし、おっさんは膝から崩れ落ちる。
「ゼ、ゼロ円だと……なんでなんだ?」
この世から消滅していましたとさ。
気づかずに魔武具を消去しているおっさんでした。