35話 ラミィも一緒にどうですか?(脅し)
すいません!短いです。
夜が明けて、アリエルに添い寝しながら朝を迎える。
ラミィに一晩中見張られていたせいで、かなりの睡眠不足なのだが。
あ、朝は"たつ"のか、生理現象だしな。
「ん、おはよう修平!」
アリエルは背伸びをする。
"たゆゆん"が目に毒だよ。
しかし、眠気が……
「おはよう、おやすみ……」
「おい! もう朝だぞ!」
眠ろうとしたのだが、無理矢理起こされた。
眠い目をこすり、顔を洗う。
とりあえずは、砂漠の最後の集落は訪れた。
ここからは南のエルフの里が近い。
入れないかもしれないが、一応そちらに向かうべきか。
それとも一旦戻り、北に向かうべきか。
ライオン達は何処に飛ばされたのだろうか?
聞き込みもしているが、今のところまったく手がかりがない。
考えながらラミィの家に戻ると、なにやら二人が話をしている。
「なんでラミィまでついてくるんだ?」
「アリエルがあんな危険な男と一緒なんて、私が耐えられないの!」
ひどい言い種だな。
確かにチョメはしてしまったが、誠意を持って生きているつもりなのだが。
「それに私だって紋様持ちよ! 迷惑はかけないわ!」
な、なんですと!
最近、紋様のバーゲンセールだな。
それにしても、アリエルのおじいさん関連で二人も紋様持ちなのは流石に違和感を感じる。
紋様が出るには何か条件があるのではないだろうか。
「あっ、修平! ラミィがついて行きたいみたいなんだけど」
顔はそれなりに綺麗なのだ。
おっさんだって男である。
女性がパーティーに入るのは吝かではない。
だが如何せん、常時殺気を向けられるのは少々いただけない。
ただでさえ胃に穴が空きそうなのに、確実に胃潰瘍コースまっしぐらである。
すると、ラミィが凄い勢いで詰めてくる。
「い・い・わ・よ・ね!」
はい、すいません!
気がついたら正座させられてました。
もう、ついてくるのはしょうがないので、どちらに行こうかを迷っていることを二人に伝える。
「そういえば最近エルフの姿を見たわね」
ふむ、ご都合主義だな。
タイミング良すぎない?
「砂漠に出てくるなんて珍しいのよ、なんでも勇者を探しているらしいわ、勇者なんてお伽噺の世界の住人よね」
ここにいますけど!
どーも、私がお伽噺の住人です。
それはさておき、ライオンが捜索願いを出したのだろうか?
ならばここを動かない方がいいのだろうか……
「そのエルフはまだここにいるのか?」
ラミィは首を横にふる。
「他に行く所があるからって、もうどこかにいっちゃったわ」
そこまで鬼達とは交流も無いため、調べた後はすぐに移動したらしい。
すれ違いか。
砂漠は広い為、仕方がないな。
アリエルがウキウキしている。
「修平! エルフの里に向かおう! あたしはエルフを見たこと無いし!」
好奇心旺盛か!
まぁ、入れないにしても、一度は見ておくといいかもしれないか。
運が良ければ入れてくれるかもしれない。
「ところで、ラミィは何が出来るんだ?」
「戦闘では弓ね、私は三属性使えるのよ、必ず役に立つわ!」
うん、後ろから射られないように気を付けよう。
「料理も出来るわ!連れていって損はないはずよ」
アリエルはあまり上手く料理ができないから、それは助かるな。
パーティーとしてはいい感じに仕上がっている。
前アリエル、中おっさん、後ラミィとレンジが揃っている。
「直ぐに用意をするわ!」
そして、ラミィが旅の準備を済ませると、三人はまず西に向かい海岸線に出る為、砂漠を進むのだった。
道中、ラミィの紋様はどこに付いているか聞いた。
右ももの内側にあるみたいなので、見ようとしたら二人にかなりキツく怒られました。
変な意味じゃなくて、ちょっと気になっただけだから!
一方その頃……ドランの街、冒険者ギルド。
戦争が終わって冒険者達も街へと戻っていた。
リリアは受付で遠い目をしている。
「ダニエウさん達、"旦那には俺達がいなくちゃ始まらない"とか言って、勢いだけで行っちゃいましたけど、大丈夫ですかね……」
修平がレオニアルと共にエルフの里へ向かったすぐ後の事。
ダニエウ達は王都から東に向かい、切り立った崖を必死に降り、魔物の皮で作った簡単なゴムボートで大海にでた。
スーツケース?は一緒に持ってきた。
修平に頼まれていたからだ。
海の大渦。
その場所は、大陸同士の距離は最も近く、魔物もいないスポットなのだが、いくつもの渦が絶え間なく発生する場所なのだ。
そこに向かうなど完全な自殺志願者である。
「あ、兄貴! 流石に無理があったんじゃねぇか!」
「もぅ、手に力がはいらねぇよぉ!」
モブAとモブBは必死にオールを漕ぐのだが、海の渦に呑まれそうになっている。
「うるせぇ! どうせ税金も払えねぇんだ! 男なら旦那みたいにドーンと生きろ!」
今、正に死にそうなのだが。
現実はそんなに上手くはいかないものである。
「旦那!待ってろよ〜〜〜!」
「もう無理だ〜〜〜母ちゃ〜〜〜〜ん!」
「もう一度会いたかった〜ヴァニラちゃ〜〜ん!」
モブB、まだ諦めてなかったのか……
抵抗虚しく、3人は渦に呑まれていく。
もちろんスーツケース?も。
そしてボートは海の藻屑になったのであった。