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30話 救援と新装備

 おっさんとアリエルの二人旅。


 砂漠での旅も徐々に慣れてきた頃、アリエルから言われたことがある。

「修平のまわりは過ごしやすいな」


 なんだと、ついにおっさんも癒しオーラを纏えるようになったのか?

「おじきと似たような感じがする。生存本能ってスキル持ってないか?」

はい、持ってます。


 未だにいまいち効果がわからない代物。

アリエルは何か知ってるのだろうか?


「なんか、おじきが言うには、熱さに強く、寒さに強く、それがまわりにもほわ〜ってなるらしい」

凄く抽象的だな。


「ステータスも少し上がるし、夜が強くなるだったかな」

夜が強くなる?

バンパイアみたいだな。

「違う、違う。あっちの方」

あっち?

「夜の営み」


 な、なんだと……

だからなのか、やけにこの世界に来てから我が息子(マイサン)が元気なのは。

「子孫を沢山残せってことじゃないのか?」


 くぅ! くぅ!

元気なのはいいことだが、倫理と本能の狭間で悪魔と天使が囁いている。

長いため息。

「いつまで我慢できるかな……」

小声で囁く。


 既に本能(悪魔)が勝りつつあるおっさんであった。

だってしょうがないじゃないか、自家発電もなかなかできないのだから。

しかも目の前にはボン、キュッ、ボンの女の子がいる。

目の毒だよ! いい意味でね!


「ほら、先を急ぐぞ!」

 は〜い!

まぁ、その時はその時だな。

最悪、帰ったら土下座、離婚、慰謝料……い、胃が痛い!

「頑張ってはいるんだけどな〜」

なかなか報われないおっさんであった。



 一つ角の集落からでて2日目昼過ぎ。

ラダもいるおかげか道中はスムーズに進み、そろそろ山の麓近くまで来たみたいだ。

 この集落は短めの2つ角の鬼人族が住んでいる。

地面も砂ではなくサバンナみたいな感じだ。


「もうちょいなんだけど、なんか騒がしいな」

 アリエルが不審がる。

彼らは部族の中で一番大人しく、争い事を好まない。

故に魔物も少なく、農業に適しているこの土地に住んでいるのだ。

だが聞こえてくるのは怒号。

確かにおかしい。

おっさん達も声のする方へ行くのだが……


 二組の鬼人族が言い争っている。


「北の部族が大変なんだ、戦える者は手をかしてくれ!」

懇願する声。

こちらは巻き角だ。


「儂らは戦う力など無いに等しい、行っても無駄死にだ」

聞く耳を持たない者達。

こちらは2つ角。

うーん、なんだこれ?


「すまないが、一体何があった? あたしらは今来たばかりでまったく訳がわからないぞ」

アリエルが仲裁に入る。


 巻き角の鬼人族達がアリエルに詰め寄る。

「おぉ、助けてくれ、一つ角の者よ!」

「我が部族が壊滅の危機なのだ!」

「こいつらは戦士をだせんと言う。これは部族全体の危機であろうが!」

捲し立てられる。


 対して2つ角の言い分は。

「我らも救いたい気持ちはある!」

「部族最弱の我らが行ってなんになる!」

助けに行く気は……まぁ、無いのかな。


 あれ? でもそういえば、

「アリエル、巻き角の鬼達って守りに強いって聞いていたけど?」

「そうだな、地の利もある。簡単に敗れるとは思えないが……」


 巻き角の鬼達は沈黙する。

「最近、人間共からちょっかいはあったのだが、小競り合い程度でな、お互いに被害もあまりなかったのだ」

そもそも攻めてくる意味がわからないのだが。


「ガリオン帝国は人間至上主義だからな、意味なんて無い、あたしたちが嫌いなだけだぞ」

アリエルは呆れた様子だ。


「今回も同じだと思い、いつも通りに守りの陣を展開した、だが……」

「闇が広がって、倒れて。我らは闇の外にいた、応援を呼んできてくれと……背後から、悲鳴が……」

頭を抱えて(うずく)まる。

精神的ショックは相当なものだろう。


 闇か……どういう事なんだ?

これは対抗策を考えなければ二の舞になるか。

「敵の数は何人いた?」

アリエルも怒っているようだ。

親しい者が亡くなる哀しみを知っているから。


「よくはわからない、だが闇が広がる前、二人の人間がいたような気がする」

「まだ死んでない者もいるかも知れない、闇に呑まれずに生き残った者は各集落に助けを求めに……だから!」

彼等も必死だ。


「どうするんだ修平!」

 アリエルは一人でも行く腹積もりなのだろう。

やれやれ、まったく俺はなんでこんなにトラブル体質なのかな。

おっさんは苦笑いだ。

まぁ、答えは最初から決まっているんだけどな。


「行くに決まっているだろう」

 アリエルの顔がパアッと明るくなる。

「さすがあたしの婿だな!」

いや、まだ決まってないからね!




 北の集落が落ちたと仮定すると次の目的地はどこだ?

「直接、東と西の集落には行けなくはないが、難しいはずだ」

北からの直線ルートは東が流砂群があり、西は竜巻が起こりやすいそうだ。

その為、一度交易所のあるオアシスを経由しなければならない。

となると最初のオアシスか、急がないと。


「襲撃を受けたのが一日前だ」

 それ、間に合わなくないか?

というか、どうやってここまでそんなに速く来たの?


「これに乗って行け、二人なら速い」

そう言われ、案内された所にいたのは、8本足のトカゲみたいな生き物だった。

種族名はアルナートカゲ、主に砂漠の移動用に用いられる。

怖くなって、お値段を聞きました。

なんと! 金貨二百枚!

背筋に冷たいものが流れる。

だって、その手のやつは毎回いなくなっているからね!

どんだけだよ!

しかし、時は金なり。

躊躇してる暇はないか……

…………

……………………



 なんなの! この世界の人はみんなスピード狂なの!

砂漠に黒い影が高速で動いている。

「は、速すぎ〜!」

行者はアリエルに任せたが、修平はしがみつくので精一杯だ。

「喋るな! 舌を噛むぞ!」

アルナートカゲは8本の足を器用に動かし、砂に沈まず進む。

これなら半日もかからず着くことができそうだが……


「どんだ〜〜うぐっ〜〜〜〜〜〜!」

道中、すれ違う者もいたのだが……

舌を噛んで涙目のおっさんが高速で過ぎ去っていったのだった。






 その頃、北の集落、跡地……


「ずいぶん抵抗したわね、思ったよりも時間がかかったわ」


 女の姿は綺麗なものだ、今までここで戦闘があったとは思えない。

「こいつらも必死なんだろうな、ま、無駄なんだけど」


 男の手には血塗られた斧が握られている。

黒いバトルアクス、血がまるで啜っているかのように、中心の宝石に吸い込まれていく。


「あなた、早死にするタイプよね」

 女は呆れている。

「俺は太く、短くなのさ。あっちのほうは太いぜ! 試してみるか?」

 男はサムズアップするが、女に無視される。


「とっとと先を急ぐわよ」

「ヘイヘイ……」

 余多の死体を後にして、二人は砂漠に消えていったのだった。





 交易所のオアシス、夜。


「オエ〜〜〜っ!」

 砂漠で吐くおっさんの図、シュールである。

「少し、休ませて…………」

おっさんがベンチで横になっている間、アリエルは情報を集めるそうだ。

以前来たときよりも騒がしい。

やはり、北の集落が襲われたからだろうか……


「あれっ? そこにいるのはお客様ではないですか?」


 どこからか聞いた声がする。

修平は体を起こし、声のした方を見る。


「やっぱり! なんでこんな所にいるんですか?」

修平はベンチから転げ落ちた。

「それはこっちのセリフだよ!」

逃げようとするのだが、腕をガッシリ掴まれて引き留められる。

そこにいたのは王都にいるはずのルミルだった。


「なんで逃げようとするんですか〜、まぁ、逃がしませんけどね!」

彼女はウインクする。


「今は、お、お金は持っていません!」

カツアゲされる中学生か!

「その場で跳んでみな(ジャンプしろ)! 嘘です、冗談です〜(本当は持ってるんだろ)

そんなにこやかな笑顔で見られても(脅されても)……


クンクン!


「何かお金の匂いがしますね〜」

 お前は犬か!

ルミルは修平の胸辺りを撫で繰り回し、腰にぶら下がっている袋に注目する。

「ここかな〜〜」


あっ! サンドワームの魔石か!

これは駄目! 返済に当てないと火の車なんだから!


 とりあえずなんとか話題を変えないと……

「それにしても、なんでここに?」


 するとルミルは天を仰ぐように上を向き。

「そういえばお客様に会ったのは王都が最後でしたね」

ホッ! 上手くいったか。

なんだか話が長くなりそうだが……


「戦争が始まるっていうんで、色々な物を大量に仕入れたんです。でもすぐに終わっちゃったんです。在庫余りまくりです。飛ばされました」


みじかっ!


「と、いうわけで私が戻るためにお客様には頑張ってもらわないといけないんです!」


どうしてそうなる!


「私達も逃げてきたんですが北の方がなんだかキナ臭いんですよね〜〜ところで命大事ですよね!」


うっ!


「その魔石、買い取りますよ!」


いや、これはっ!


「剣もだいぶ傷んでますね!」


そ、それでも!


「盾もボロくなってきてるじゃないですか!」


いやっ!見ないで!


「前回、肘宛と膝宛がまだでしたね!」


イヤ〜〜〜〜〜!




 ウン、ナンダカ、キオクガアイマイナンダ……

ソコニ、ノコサレテイタノハ、キンカ三百マイ……

ソレト、ボウグト、アタラシイケンガイッポン、オイテアッタヨ。

モチロン、マセキハナクナッテイタヨ……

コレハ、ハンザイジャナイノカナ……しくしく。


 こうして再び絞り取られるおっさんであった。


日曜日はちょっと休ませてもらいます。

申し訳ありません。

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