29話 姉妹丼(するとはいってない)とライオンとドワーフ
アリエル3姉妹、名前がわかりづらくてすいません。
自分でも混乱しています。
投稿の時間もバラバラで申し訳ない。
サンドワーム討伐後の宴も終わり、静けさが集落に訪れる。
修平はアリアス達の家でくつろいでいた。
「修平さんのお陰で因縁のサンドワームを討伐できました。ありがとうございました」
アリアムも一緒に頭を垂れる。
やだ、ちっこい可愛い。
「私も活躍したけどな!」
まぁ否定はしない。
だが、一番の功労賞はラダオだ。
2階級特進だよ。
彼? がいなかったら恐らくやつは倒せていなかっただろう。
君の勇姿は忘れないよ……ラダオ……二百万。
おっさんの目から一筋の光が流れる。
「修平さんはこれからどうなさるのですか?」
とりあえずは各地の集落を回るかな、アルナー砂漠にはあと三つの部族がいるみたいだし。
すると唐突に、アリエルが言う。
「あたしの婿になれよ、お前は強いし大歓迎だぞ!」
ストレートだな、でも既婚者なんだよね。
「あたしは1夫多妻でもかまわないぞ、強い男は沢山の嫁をもらうべきだからな、ほらアリアスもどうだ?」
アリアスは顔を真っ赤にして俯いている。
な、なんですと!
モテ期きたーーー!
姉妹丼ごっつぁんです!
と、言いたいところだが、一応、使命があるからね。
この場所に留まるわけにはいかないんだよ。
し、小心者だからじゃないんだからね!
「実は俺、勇者なんだ。神様から魔王を倒してくれって言われてる」
うーん、自分で言ってて凄い胡散臭い。
オレオレ勇者詐欺みたいだな。
はっ! まさか!
(回想)
「もしもし俺だよ俺、本当は早く帰りたいんだけどさ〜神様から勇者よ! 魔王を倒せ! って言われててさ〜なんか課金アイテムがあれば楽勝みたいなんだよね」
「そうそう、俺って優しいじゃん。この世界を見捨てられないわけ、だからさ〜この口座に三百万ほど振り込んでくれない?」
「なんと今ならさ〜百万円追加ガチャでレアアイテムゲットなんだよね、俺を助けると思ってさ〜頼むよ!」
(回想終了)
なんてね、そこまで馬鹿ではない……はず。
そんなはずないよね?
誰か! 誰か違うと言ってくれーーー!
「だ、大丈夫ですか? いきなり泣きだして、叫び声をあげて」
すいません。ほんとすいません。
被害妄想男なだけです。
アリアスはドン引きしている。
どうやら考えを改めるようだ。
まぁ、惜しいけども、大事なことだから2回言います、惜しいけども。
でも、そこまで甲斐性も無いんだよね。
最近、我が息子はやけに元気だけれども……
「? まぁいいさ、仇も討ったことだし、あたしはついていく! かまわないか?」
それは構わないのだが……
始まりの人達。
ライオン→脳筋。
エルフ→破天荒。
鬼→脳筋。
あれ? ちょっと待て!
まともな人間がいないぞ!
なんだこのパーティーは!
ヒーラーもいないし、詰んでるよ!
始まりの人ってあと何人いるの?
なんか心配になってきた。
神様! もうちょっとバランス考えて!
おっさんは頭を抱えてぐるぐる転がる。
「心労で禿げそうだよ……」
そうして、夜はふけていったのだった。
次の日、アリエルと共に南にある集落へと向かう。
始めのオアシスでアリアスに聞いていた山のある場所だ。
そして、一つ角のみなさんはサンドワームの魔石を譲ってくれた。
因縁の相手だったろうに、ありがたいことだ。
持ち金も、ちょっと心もとないので助かります。
さらに、ラダオ2号と3号も貸してもらえた。
返すのはいつでもいいそうだ。
移動も楽になるな。
それにしても、マジックバックか……
中には物資もたくさんはいっていたのに。
ライオンキングは無事だろうか?
こうして、おっさん達は一つ角のみなさんに見送られ集落を後にするのであった。
時は少しさかのぼる……
レオニアル達は北海のとある島にいた。
北海、東の大陸の更に北にあり、人類未開の地。
火山はあるが、寒く、植物もあまり根づかない。
魔物も強力な個体が多く。
人類が住むには苦難しかない場所である。
「レオニアル殿! そっちに一体行きます!」
「まかせよ! おおおっ!」
幾度となる戦闘、いくら強者揃いとはいえ、顔には疲労が見てとれる。
レオニアルは少し楽しそうだが。
案内エルフが最後の一体を倒す。
「終わった……みなさん大丈夫ですか?」
「はい、ですがこのままでは……」
エルフ達は憔悴しきっている。
魔法陣が崩壊し、一行が飛ばされた先は北海の空高くだった。
魔法でなんとか無事に島にはたどり着いたのだが……
島に着いて、既に丸二日。
マジックバックを持っていたお陰で、食糧の心配はしなくてもいいのが唯一の救いだろうか。
「私達はこれからどうなるのでしょうか……」
北海近辺は波が高く、魔法だけでは島から出ることは難しい。
当たり前だが、船は通らない。
しかし、海からも、空からも魔物はやってくる。
このままでは解決法がない。
エルフ達は絶望するしかなかった。
すると、どこからか声がする。
「お〜い! お主らこんなところで何してるんじゃ?」
レオニアルは辺りを見渡す。
しかし誰もいない。
匂いを嗅いで探してみるが、この辺は硫黄臭がきつくてわからない。
「下じゃ、下を見よ!」
言われた通りに下を見てみると、そこには小さな穴が。
声はその穴から聞こえるようだ。
「ちょっと待て、今そちらに、あ!」
いきなり、レオニアル達の足元が崩れる。
五人は下へと真っ逆さまに落ちていった。
「レビテーション」
エルフは魔法を使い落下速度を緩やかにする。
「まさか足元にこんな空間が広がっていたなんて……」
大空洞、きらびやかな鉱石が、壁のところどころに見える。
落ちていく最中に横を見ると、ずんぐりむっくり体型の男がザイルを頼りにぶらさがり、壁に掴まっていた。
「おお〜い、こっちも助けてくれ〜!」
風魔法を操作し、男の元に寄ると、魔法をかけて一緒に落ちる。
どのくらい落ちただろうか……
最早、落ちた所が見えない。
「まさか、崩れるとは、危ない所じゃったの」
男の名はゴードン、種族はドワーフだ。
ここには鉱石を掘りに来ていたらしい。
「珍しい客じゃな、エルフに獣人か、こんな毛むくじゃらな奴は初めてみるがな、ガッハッハ!」
豪快、筋骨隆々、見た目はかなり年もいってそうだが、まったく衰えを感じさせない。
「ここはなんなのです?」
たくましい髭を触りながらゴードンは手招きする。
「立ち話もなんじゃな、儂らの棲みかに案内しよう」
エルフ達が疲れているのを感じたのだろう。
こうして、六人はゴードンの棲みかへと向かうのだった。
歩いている最中、ゴードンは語る。
「儂らは遥か昔から北海で鉱石を掘っている。ここには珍しい物が多くてのぉ、儂らには宝の山よ!」
ここいらの海は水深が浅く(とはいっても50メートルくらいはあるのだが)、下に海底洞窟が広がっている。
先祖のドワーフが作ったのか、はたまた自然にできたのかはわからないそうだが。
それが島同士を繋げており、更に東の大陸の色々な所に繋がっているそうだ。
海は荒れていて渡れない為、こうして北海へと来ている。
「さぁ、着いたぞ。何も無い所だがゆっくりしていってくれ」
ゴードンは慣れた手つきで暖かい飲み物を作り、皆に渡す。
飲み終わると緊張の糸が切れたのか、エルフ達は横になり寝息をたて始めた。
「お主は寝んのか? 心配せんでも寝込みなど襲わんぞ」
レオニアルは少し考えた後、今までの経緯を簡単に話す。
「そういうわけでな、すまんが大陸までの道案内を頼めんだろうか? 我らは早く戻らねばならんのでな」
ゴードンはニヤリ笑う。
「マジックバックといったか、ここにある鉱石を運んでくれるなら案内も吝かではないがの」
「交渉成立だな!」
二人は堅い握手を交わす。
「とりあえずは休め、戻るにしても先は長いからのぉ」
そう言われると、レオニアルも横になるのであった。
「こっちじゃ」
洞窟内は迷路のようだ、案内無しでは抜けることも難しいだろう。
「それにしても凄いですね」
長く生きるエルフにしてみても、この光景は珍しいのだろう。
天井もかなり高く、いくつかの鉱石が光で洞窟内を照らしている為、そこまで暗くはない。
時間の経過は分かりにくいが、一日くらいは経っただろうか。
「おう、久しぶりだなゴードン! そいつらはなんだ?」
似たような体型の男達が横穴から出てくる。
ゴードンは皆に説明を済ませる。
「おお! 便利なもんもってるじゃねえか、ちょっとこっちきてくれ!」
言われるがままについて行く。
するとそこには、鉱石が山の様に盛ってあった。
「重くてよ、こいつも頼むわ!」
みな豪快だ。
快く引き受け、バックの中に収納する。
どうやら、そろそろこの団体も、集落に帰ろうと思っていたようだ。
ぞろぞろと進み、大陸より一つ手前の島にたどり着いた。
「ここには儂らの集落があるんじゃ!」
地下神殿とでもいえばいいのか、豪華絢爛。
見事な彫刻がところどころに置いてある。
「みんな無事ですか?」
「おお、姫様! なぁに、こいつらは殺しても簡単には死にませぬよ!」
大笑いしている。
「姫様ですか?」
女性の方もドワーフ以外に人がいるのに気づいたのだろう。
「そちらの方達は?」
ゴードンが説明する。
これまで何度も説明していた為、話はスムーズに伝わる。
「すいません。家の者たちがご迷惑をおかけして」
レオニアルは首を横にふる。
「いや、我らだけではあの迷路は抜けれぬ。助かったのはこちらも同じ、気にしなくてもよい」
マジックバックから鉱石を取り出すと、ドワーフ達は各工房へと運んでいく。
「ふむ、約束は大陸までだったな、今日はここで泊まって明日にでも行くとするか……」
そういうと、ゴードンも意気揚々と工房に向かっていった。
「それでは、皆様はこちらへ」
女性はカミュと名乗った。
ドワーフにしてはずんぐりむっくりではない。
背こそ少し低いが、スレンダーな体型の美人だ。
姫と呼ばれているが、正確にはドワーフの崇る火之神の巫女だそうだ。
「狭いですが、こちらでお休みください、後でお食事もお持ちしますので」
「食事と寝床があるだけましというもの、ありがたく頂戴する」
レオニアル、以外とまともである。
普段はどうした……
次の日、天気は洞窟なのでわからないが、よさそうだ。
「準備はいいか? では行くかの……」
しかし、それは急に訪れた。
「敵襲ー! 大陸側から獣のような魔物多数! 戦える者は武器を持て! 敵は神殿前まで来てるぞー!」
洞窟内に怒号が鳴り響く。
「なに? 儂ら以外に洞窟を抜けてくるだと……」
ゴードンは首を傾げる。
魔物対策にトラップも多数仕掛けられている。
そう簡単には、ここまでたどり着けないような造りになっているはずだ。
「何があったのだ? はっ!姫様は無事か」
ゴードンは慌てて神殿内を探し回る。
「姫様ー! 姫様ー!」
どこぞのじいやみたいだ。
ドタドタと走り回る。
「大丈夫です、私はここに。現場はどうなっていますか?」
カミュも戦闘着に着替え、槍を持っている。
「儂もわかりません、姫様は安全な所へ!」
カミュは首を振る。
「みなが戦っているのに自分だけ安全な所へなどいけません!」
レオニアルが横に立ちニヤリと笑う。
「なあに、儂らもいることだ。一泊恩義の借りは返そう、愚か者どもに鉄槌を下してやるわ!」
そして前線へと駆けていった。
前線は苦戦していた。
黒い獣は動きが早く、近くにきては爪と牙で、離れては黒い雷を放つ。
ドワーフのスピードでは追い付けない。
皆、倒れこそしてはいないが、着ている防具が既に傷だらけだ。
「がぁぁぁ!」
そこにレオニアルが飛び込む。
雷を放とうとしていた獣を踏み潰し、ドワーフを攻撃しようとしていた獣には剣を突き立てる。
「どうした? 島にいた魔物のほうが手応えがあったぞ!」
獣たちも挑発されていると気がついたのか、標的をレオニアルに絞ったようだ。
「アースシャベリン!」
だがそこにエルフ達の魔法が炸裂する。
こうして、獣の数は瞬く間に減っていった。
レオニアル達が戦闘に加わったおかげで、戦いは優位に進められている。
このまま圧勝かとも思われたのだが。
「なんだ、まだ終わってないのか?」
どこからか人の声がする。
闇の中、そこから現れたのはひとりの男。
黒い鎧に身を包み、フルフェイスの兜で顔は見えない。
「お前、ドワーフじゃないな。何故こんな所にいる?」
「それはこちらの台詞よ、貴様は何者だ?」
ただならぬ気配を両者とも感じたのか、互いに少し距離をおく。
「俺の命令はこいつらの巫女を捕らえることでな、邪魔者は皆殺しで構わないそうだ」
なに食わぬ顔(顔は見えないが)で言う。
「お前も中々やりそうだが、俺に勝てるとは思えんがな」
レオニアルは不敵の笑みを浮かべる。
「試してみるか?」
その言葉を合図に両者は激突する。
レオニアルの剣が鎧に当たるが、然して効いてないのか。
男は持っていた大剣を凪ぐ。
辺りが吹き飛ぶ。
レオニアルは屈んでやり過ごすと、右の手による掌底を腹部に叩きつける。
「ガハッ!」
男は堪らず、獣が放った雷と同じ様なものを、体のまわりに展開する。
すぐさま男から離れる。が、雷は意思を持ったようにレオニアルへと襲いかかる。
それを咆哮で弾き飛ばす。
「鎧が硬いからといって慢心しすぎだな、いかようにもやりようはあるものよ!」
打ち合いは続く。
余りの激しさにまわりは加勢できない。
「レオニアル様!」
「姫様! いけません!」
男はカミュの方を向くと、雷を放ち、護衛のゴードンを吹き飛ばす。
「ターゲットから来てくれるとはな!」
跳躍し、カミュの近くまで迫る。
「余裕だな、儂はそんなに甘くないぞ!」
だが、レオニアルは男の動きを読んでいた。
いつのまにか男の後ろに立っており、右手で頭を掴むと左爪を鎧の隙間に食い込ませる。
フルフェイスの隙間から血反吐が飛び出る。
「クソッタレが! この力は使いたくなかったが仕方ない」
最初に男が来たときに見た闇。
いや、それよりも濃い闇……深淵とでもいうのか。
それがドーム状に広がっていく。
「寿命が縮むから嫌なんだがな、命令を果たせないと俺も危ない、だがこれで終わりだ!」
その闇はレオニアルを含め、そこにいた者を全て包み込む。
すると、ドワーフ達がバタバタと倒れ始める。
「ゴードン!」
カミュはゴードンに駆け寄る。
「なんじゃこれは? 力がはいらん……」
エルフ達も崩れ落ちる。
「これは? 魔力も上手く練れない……いったいなにが?」
男は高笑いする。
「無理なんだよ! 闇の加護もちじゃな……」
だが、男は最後まで言葉を発する事はできなかった。
「なるほどな……」
レオニアルの持つ剣が、男の腹部から突き出ていた。
「ゴフッ、き、貴様! な、なんで動け、るんだ?」
闇の中で動けているのはレオニアルとカミュのみ。
二人の体にはうっすらと紋様が光っている。
「これのおかげか、まぁどうでもいい事だ。破落戸よ、なかなか楽しかったぞ!」
レオニアルは勢いよく剣を引き抜く。
血飛沫が飛び散り、男は膝をつく。
すると、闇は次第に薄れていき、最後は霧となり消えていった。
既に男の瞳孔は開いている、どうやら事切れたようだ。
なぜドワーフの巫女が狙われたのか?
考えても答えは出ないが、嫌な予感がする。
早く修平に合流せねば、と心に決めるレオニアルであった。
ライオン無双、強すぎた。
ブックマークをしてくださった方、ありがとうございました。
駄作ではありますが、まだしばらく続く予定なのでよろしくお願い申し上げます。