3話 はじめての返済
言いたい事や、突っ込みたい事は山のようにあるのだが……
今は"ちゃんと帰ることができる"というのは理解した。
ならば返済を速く終わらせ、とっとと帰ればいいのだ。
修平はようやく安堵する。
ネットも電気もない生活は、現代人にはかなりキツい。
「さっきと同じならこれを押せばいいのかな?」
返済のススメという文字が、今は消えてしまっている。
なので、返済と書かれた文字を軽く押してみた。
ポンッ
効果音はでなかったが、一つの金色の箱が出てきた。
60㎝四方の正方形。
高さは50㎝程だろうか。
上は開いている。
「これに入れればいいのか? ええと、手持ちは……」
盗賊から奪った手斧に、ショートソードが2本。
汚れた革の鎧が3つ。
洞窟に置いてあった鍋などの食器類など。
袋を揺らすと、硬貨がじゃらじゃらと聞こえてくる。
それなりにありそうだ。
「この世界のお金の価値がわからない、とりあえず、硬貨はとっといたほうがいいかな……」
リュックの中の食料はソイジョ◯しかないのだ。
食べ物を買う上でお金は必須だ。
この世界の物価もわからない。
保身の為に、硬貨は使わずにとっておこう。
「そういえば、これはもらっても大丈夫なのかな?」
元の世界では、拾ったら交番に届けるのが当たり前なのだが。
「盗賊や山賊など、強盗たちの持ち物は基本、倒した方が所有権を持つみたいです」
少し落ち着いてきたのだろうか。少女が答えてくれる。
「マジか! これって強運とかついてないか? 戦闘とかしなくても、今までなんとかなってるし」
修平はケンカも親父狩りにも合ったことが無い平和人。
そこら辺によくいる、ただの小太りのおっさんなのである
「体感的に、この世界の命の扱いは軽いみたいだ。俺も気を付けないと……」
順次はぶつぶつ呟く。
おっさん故、独り言が多い。
元の世界では、よく家族にうるさいと叱られていた。
とても悲しき、よくいそうなおっさんなのである。
とりあえず身につけている革の鎧、ショートソード、お金を残し、他の物を箱の中に入れてみる。
「おお、沈む」
すぐにいっぱいになるかと思われたが、某猫型ロボットのポケットばりに入っていく。
表示欄と書かれた項目に、入れた品々が浮かんでくる。
「綺麗な食器とかもあったからな〜、結構いくんじゃないか。すぐに帰れたりして」
頭お花畑か、おっさんは気楽なもんである。
チンッ!
「なになに、返済額一万三千円って、安っ! 金額査定は……」
ショートソード 500
手斧 300
汚れた革の鎧×2 1000
食器類 11200
「武器が安っ! 材質は良くないだろうが、こんなもんかよ。もし食器がなかったら、無茶苦茶サブい結果じゃないか!」
少女が心配したのか声をかけてくる。
「だ、大丈夫ですか?」
ちょっと前まで楽勝とか思っていたのだ。
修平は落ち込んだ。現実はそんなに甘くないのである。
「うぅ、しょうがないか。ちゃんと現実を見ないとな……」
逃避したいけど、無理なのだ。
今いるのはリアル異世界なので。
ポンッ!
終了ボタンを押す。すると、箱はその場から消えた。
おっさん少女に向き合う。
「とりあえず、君を安全な所に連れて行きたいのだが、すまん!俺も迷子なんで、街まで案内してくれると助かるのだが……」
おっさん、情けないのだが、旅の恥はかき捨てである故に。
気を取り直し、新たな方向に気持ちを向けるのであった。