27話 オアシスとこれからのこと
鬼人族の集落があるオアシスは、アルナー砂漠の各地に点在している。
このオアシスは、ちょうど砂漠の真ん中ぐらいにあるそうだ。
回りを見渡すとみんな角があり、額に長い角や、2つ角、横に生えてる者もいれば、巻き角みたいな者もいる。
アリアムも自分の角を主張している。
なにこの可愛い生き物は。
修平はおそるおそる角を触ってみる。
おおっ、結構硬い。
これは個性みたいなものなのかな?
「いえ、遺伝ですね。部族によっておおまかに別けられています」
なるほど、しかも魔力を溜めたりもできるそうだ。
俺が使う魔力発動媒体みたいなものか。
それにしてもみんなこっちをむっちゃ見てる。
「部族以外の人がここに来るのは、とても珍しいですからね」
まぁ、まわり砂しかないからね。
たまにここのオアシスにはキャラバンが寄るらしいが、人間は珍しいそうだ。
「砂漠特有の素材などを求めてキャラバンは巡ってきます。私達としても必要な物を手にいれる機会になりますので」
ここのオアシスは、どこの部族の管轄というわけではなく、鬼人族全体の交易所の役割をはたしている。
故に色々な部族の姿が見られるのだそうだ。
しかし、砂漠に住むということは並大抵ではない気がするが、植物とかオアシスにしか生えないのでは?
「あちら、南の方にある山が見えますか?」
かなり遠いがうっすらと見える。
「あそこは雨がたくさん降りますので作物を育てている部族がおります、あとはオアシス頼りですね、大変な事も多いですが住めば都ですよ」
聞くと、大昔に人間に住むところを奪われて砂漠に移り住むようになったとか。
人間に生まれてきてごめんなさい!
おっさん、ジャパニーズ土下座である。
「どうか頭を上げてください、昔の話ですから我々は気にしていません」
しかし、最近になって北の方で人間の国がちょっかいをだしてきているらしい。
人間って本当に争い事が好きだな。
平和が一番だと思うんだけど。
「北の部族は守りの要、あそこの人、見えますか?」
アリアスが指差した方には、体がでかい岩みたいな男がいた。
角は巻き角、身長は2メートルは越えていそうだ。
「彼らは守りに強く、力だけではなく土魔法の使い手でもあります。いくら人間が賢く、強いとしても簡単には砂漠を進むことも出来ないでしょう」
ふむ、なるほどね。
とりあえず他の事はいいとして、これからどうするかな……
自分のこれからの指針を決めないといけないな。
レオニアルが無事かどうかも、合流できるのかもわからない。
西のエルフの里に連絡する事もできないし、どうするべきだろうか……
1、ここで待機して誰か来てくれるまで待つ。
おそらく魔方陣崩壊の異変はエルフ達も気づいてはいるだろう。
もしかしたら助けにきてくれるかも?
2、鬼人族の集落をまわりながらマッピングをする。
どのみち世界一周しなければいけない? のかも。
それならここに来たついでに訪れておくのもいいかも。
案内役は必要か?
3、近くにあるエルフの里を訪ねる。
近くにあるかどうかもわからないが、里に行けば転移陣が使えるかも?
4、ちょっかいだしている人間達を訪ねてみる。
人類皆兄弟、話せばわかりあえるかも?
でも、戦争大好きッ子?
うーん、1は時間がかかりすぎかも、砂漠に落ちてから五日経ってるが、このオアシスにはそういった類いの情報は入ってきていないとのこと。
4は危険すぎるか、捕まって奴隷おちということも考えられる。
2か3どちらか……
「なぁ、アリアス。この近くにエルフの里ってある?」
アリアスはしばらく考えたあと、
「大陸の南端にそのような里があると聞いた事はありますが、遠いので行ったことはありませんね、エルフもここでは見たことは無いですね」
おぅ、3も手詰まり。
2しかないじゃん!
「アリアス達はこれからどうするの?」
アリアス達がこのオアシスに来ていたのも月花草を取りに来てた為で、これから自分たちの集落に戻るみたいだ。
「俺も連れていってもらえると助かるのだが、どうかな?」
一応、勇者ということは伏せておき、自由な旅の途中ということにしておいた。
ちょっと怪しさ満点だが。
「はい、助けてもらいました恩もあります。何も無いところではありますが、よろしければお越し下さい」
素直でええ子ですな。
詐欺には気を付けてね!
彼女達の部族の集落はこのオアシスの東に進むとあるそうだ。
日数にして二日ほど。
アリアムもなんだか嬉しそうだ。
意気揚々と、おっさんはアリアス達の集落に向かうのだった。
「癒しがあるっていいね!」
「?」
アリアスは首を傾げるのであった。
一方その頃……
西のエルフの里。
「原因はまだわからぬのか? 彼らの行方は?」
あの日、レインツリーの光が収まったすぐ後に、爆発的な光が木から発せられた。
すぐに他のエルフの里に連絡しようとしたが、どこにも繋がらない。
何かが起きている、しかし確認の仕様がない。
調査隊を編成し、ヘレナから船で向かう部隊はすぐに出発させたのだが、たどり着くまでには相応の時間はかかるだろう。
里のレインツリーも調べるが、なんせこのようなことは長老としても初めての経験だ。
「リーネ様はご無事じゃろうか……」
動けない長老にはどうにもできない。
ただただ、無事を祈ることしかできないのであった。
王都……
事件が起きてから数日後には、王宮にいるアメリア達にも異変は伝えられた。
だが王宮はまだ落ち着いていないのだ。
カイもここを動くわけにはいけない。
「いったい世界で何が起きている?」
勇者の存在がうまれ、エルフの里の異変。魔素が濃いというのも関係があるのだろうか。
今までにはない大きなうねり。
カイは背筋に冷たいものを感じた。
何か大きな、人間の手には負えないような。
そんなことが起きるのかもしれない。
里から連絡が来て直ぐに、アメリアは梨華と一緒にヘレナに向かった。
エルフの調査隊に合流し、東の大陸に行くためだ。
まずは海を渡り、東の大陸の北西にあるエルフの里に向かう。
そこから各地に調査隊を派遣する。
だが時間が……
東の冒険者ギルドの本部からの連絡では、宗教国家であるガリオン帝国の動きがきな臭いらしい。
最近になって、まわりで小競り合いを繰り返しているそうだ。
「カイ様……」
「仕方がないとはいえ、自由に動けないというのはもどかしいものだな……」
カイはアンジェリカに苦笑いを向けるのであった。
「肌が乾燥しそうね、なぜ私がこんなところに……」
砂漠に女性が立っている。
後ろから一人の男が近づいて来る。
「あの人の命令だよ! 仕方ねぇだろ……」
ため息まじりに男は呟く。
「私は西の大陸から帰ったばかりなのよ、命令なら他の者がいるでしょうに……」
「お偉いさんの考えることは俺にはわからんさ。で、勇者の方はどうだった? あっちはデカかったか?」
下品な笑い声をあげながら男は問う。
「あなたは相変わらずね、手ならともかく体には指一本触らせるわけないでしょう。私の体も心も、全てはあのお方の物なのだから」
女は頬を赤らめる。
男は呆れたように、手を大きく広げる仕草をとる。
「おーおー、お熱いことで! 相手されてるかどうかはなぁ!」
女なキッと睨む。
「無駄口を叩いてないでちゃんと仕事しなさいよ、殺すわよ!」
男は体を竦めながら言う。
「ヒステリックな女は怖いねぇ〜はいはいはい、では仕事をしますかね〜」
「はいは一回!」
「へいへい……」
そうして二人は砂漠へと消えていったのだった。
知人に読んでもらったところ、ネタが古すぎて分かりづらいといわれました…………
か、悲しい!
だってしょうがないじゃないか、おっさんだもの……………
というわけで、前の文章を少し手直しするかもしれません。
余裕ができればですが…………