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26話 初めてのエルフの里

 西のエルフの里。


 今日はここで目的をこなし、一泊する予定だ。

明日には転移陣で東の大陸に行く。

案内してくれているエルフの話では約人口5000人。


 人間は花梨以外にもいるそうで、道に迷い紛れこみ、そのまま住んでいる者。

森に捨てられていた子供を保護など、30人程度はいるらしい。


 森の恵みは豊かで獣や果実、キノコ類など豊富に自生している。

 奥の山脈には鉱石がとれる鉱山もある為、全てをここでまかなえるそうだ。


 中央にある巨大な木がレインツリーといい、各地にあるエルフの里を結んでいる。

転移陣の場所もそこにある。

魔法も強くて身体能力も高い、エルフ最強なのでは?

勇者なんていらなかった説、あると思います。


 アメリアからの手紙を案内のエルフに渡す。

各地に飛ぶ前に、この里の長老と会う約束も書いてある。

長老はなんと(おん)(とし)千百歳。

体の半分以上が樹化しかけている。

そうやってエルフ達は森に帰り、森を見守るのだそうだ。

人には考えられない、長い、長い一生である。


 ちなみに始まりのエルフはレインツリーの大元におり、木と同化して、レインツリーの全てを管理している。

いったいどれだけの年数が経っているのかは誰も分からないそうだ。


 この里の長老は、前回の魔王発生時代にも生きており、その時の経験談や体験談をを聞くのが今回の目的でもある。


「エルフはみな強そうだな、誰か相手してくれんもんか」

 脳筋はちょっと黙っててください。

まぁ、ナタリーを瞬殺したのには驚いたし、エルフくらい強くないと、相手にすらならないのかもしれないが。


 すると、エルフの内の1人がレオニアルに対し、

「訓練場もありますよ、よろしければ案内しますが?」

なんて言うもんだから。

ライオンは満足そうに頷くと、そのエルフに付いて行ってしまった。

自由人か!

今から話を聞くっていったよね!

……頭が痛い。

ダニエウとは違った厄介さだな。


「ここに長老がおられます、では私はこれで」


 大きな木をくりぬいて作られた家。

他の家とはちょっと違う気がした。

案内してくれたエルフに礼を言い、中へと入る。

中は……誰もいない。

あれ? 長老は?


「ここじゃよ、ここ」


ビクッ!


 置物かと思ってた中央の木が、いきなり喋った。

「ふぉふぉふぉ、ビックリしたかの?」

半分っていうか、ほとんど木なのでは……

「すまんな、動けもせんのでこのまま失礼する」

 凄い高く、どこかで売っていそうな置物、喋って賢い。

まるでペッ◯ー君みたいだな、動けないけど。

「なんか失礼なことを考えているじゃろう、まぁいいわ。何か聞きたい事があったのではないか?」

そうだった。

長老のインパクトが強すぎて忘れてた。


「魔王について聞きたいのですが……」

 長老は目を閉じてうつむく。

考えに耽っているのか。


………

………………


グーグーグー……


寝てるんかい!

お約束だな!


「すまん、すまん。この体になってからというもの急に眠気がくるもんでな」

頼むよ、おじいちゃん。

「ふむ、魔王か、前回のやつは黒い獣だったと聞いている」


 長老は謳うように……

おおよそ1000年前、突如現れた黒い獣。

闇を操り、闇から産み出す。

大きくはない、だが牙は鋭く、爪は地を割る。

尾は山をも凪ぎ払い、我らは絶望する。

絶望の果て現れし勇なる者、光を纏い、闇を切り裂き、希望を示す。

力合わせ闇砕く、長き平和訪れる。

だが忘れてはならぬ、闇は常にそこに有りけり。


「儂はまだ百歳くらいだったかのぉ、多くの同胞も死んだ。次は自分の番かと思ったもんだわ」


 お、重い!

そんなのにアラフォーのおっさんが勝てというのか。

神様、ちょっと無茶振りすぎないか。


「その前はいつだったか、文献ではそれより2000年前くらいだと書いてあったか、いまいち記憶が曖昧じゃな、年はとりたくないわい」


うーん、突然現れるのか?

出現場所もわからないのにどうすればいいんだ?


「古代魔法にゲートというものがある、それは自分の行った所なら一瞬でいけるそうじゃ、まだ見たことはないんじゃが」


それって結局のとこ、世界一周しないといけないのではないのか。

しかも、魔法を覚える難易度が無茶苦茶高い。

千歳越えのエルフが見たことないって………


「エルフの始まりの里に行くといい、始まりのエルフでもあるリーネ様に教えてもらいなさい。木と同化はしているが答えてくれる。彼女ならきっと知っているはずじゃからな」


 なるほどね。

長老の話では一つ違う里を経由して行くらしい。

転移陣は魔力を膨大に使うらしく、距離が離れすぎていると、直接行くのは難しいそうだ。

ホイホイ行けたら、かなり便利なのだが。


「ううむ……眠い……しばらく眠りにつくわい。皆にもそう伝えてくれ」

 そう言うと長老は物言わぬ木の置物になった。

これでも無理して喋ってくれたのだろう。

有難いことだ。


 よし、次の目的地は決まった。

始まりの里のリーネ様に会う。

「まずはそこからだな……」

長老の部屋を出る。



ドガァーン!


 キメ顔のおっさんの横に何かが飛んできた。


いったいなんなの?

「ふはははっ! 血が沸き踊る! 最高だ!」

レオニアルだった。

しばらくこれが続くのか……

ため息しかでてこない、哀愁漂うおっさんなのであった。



 まだ昼過ぎ、これからの事を考えて、日用品なども揃えねばならない。

それにしても、マジックバックって素晴らしい。

重さを考えなくていいというのは、なんと素敵なことか。


 国宝級故にか、容量も今のところ限界が見えない。

時間も停止しているみたいだ、これをもって帰れたら地震の時とか無茶苦茶便利だと思う。

た、高く売れそうなんだな……


 ここでの通貨は、この大陸の人間が使用しているのと変わらない。

物価は少し安いくらいだ。

森が豊かで、人口はそこまで多くない。

需要と供給のバランスがいいのだろう。


「あー! お〜い! そこの君!」


 ん、声をかけられたが……

アメリアか? いや、彼女はまだ王都にいるはずだ。


「あなたが修平さんね、アメリアから聞いているわ」


 ほほう、やはりアメリア関連か。

近くで見ても、かなり顔が似ている。

「あなたは? うーん、アメリアのお姉さんですか?」

「まぁ、お上手ね! 私はアメリアの母です。どうぞよろしくね!」


でたー!

エルフあるある。

お姉さんだと思ったらお母さんだった件。


しかし若い、ほぼ変わらない気がする。

「もう四百歳くらいだから、年はとりたくないわね」

もうどっから突っ込んだらいいのか、よくわからなくなるな。


「明日には行っちゃうのかしら?」

「はい、そうですね……」


 本当はあまり行きたくないんですけど。

仕方ないよね、勇者なんだから。

「里からも戦士を何人か同行させるみたいね」

それは、長老も言ってなかったな。

しかし、助かる。


 アメリア母が言うには、分担して違う里へ行ってくれるそうで、各地から魔王の所在を探る作戦らしい。

エルフいなかったら詰んでいる説、あると思います。


「まぁ、明日のことは明日考えればいいわ! ここ、温泉もでるのよ! 今日くらいはゆっくりしていきなさい」


 なんと素敵で甘美な響きだ! 温泉があるのか!

こ、混浴とか……ワンチャン……


「男女は別々だからね」

夢は……早々に崩れた。


 その後、宿というか空き家を貸してもらう。

エルフの里は旅人が気軽にくる場所ではない。

だからなのか、あまり宿という概念はないらしい。

しばらくすると、レオニアルも戻ってきた。


「満足した! 久しぶりにおもいっきり力を振るえたわ!」

あー、そうですね。

常識人が早くパーティーに欲しい。


 ラッキースケベなイベントもなさそうなので、温泉にゆっくりつかり体の疲れを癒す。

この世界に来てからというもの怒涛の日々だった。

まだ1ヶ月を越えたくらいか。


 日用品や食糧を買って減ったとはいえ。

現在の持ち金。

金貨百三十七枚、銀貨百六十枚。あとは小銭。

返済額、二千四百三十五万四千六百五十円


 うん、増えたりはしたものの返せない額ではない。

レオニアルが譲ってくれた、このヒュドラの魔石とかもある。

来た当初から考えれば、決してありえない金額とは思えなくなってきた。


体も強くもなってきた。

旅を少しは楽しみながらでも、いいのかもしれないな。


「明日は違う大陸か……」

「まだ見ぬ強者、強力な魔物、ふっ、楽しみじゃ!」


 考え方があまりにも違いすぎる、おっさん二人なのであった。
























今までかかった旅の日数を見直して修正しました。

話の本筋にはあまり関係しませんが気になったもので。


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