16話 出発!
修平は戦争の為、王都に行くことに……
戦争か……
とりあえず現状把握しよう。
「確認は大事だからね」
修平は久しぶりに魔法ギルドに赴いた。
魔法ギルド。
修平はあまり馴染みがないが、魔法の適正の持つ者が、呪文や呪力の流れを教えてもらう所でもあり、錬金術師達がポーションなどを作る場所でもある。
修平は、ステータスの確認にしか来ていない。
魔法をイメージで使えてしまうからだが、普通の者は呪文を詠唱している。
チートって便利だね。
「はい、銀貨五枚」
ふふ、銀貨五枚なんてもう楽勝、楽勝。
「俺様、小金もちだぜ〜」
調子にのりながら、修平は魔法紙に血をたらす。
「ステータスオープン」
力 192
精神 228
器用 200
体力 180
魔力 294
スキル ちょい運(ゲージ30)、死者の未練、生存本能、土魔法、風魔法、 &/の残¥&$
「おおっ、結構強くなっている。」
アンデッドを沢山、ぶっ飛ばしたからだろうか?
文字化けも少しは読めるようになってる。
まだ意味はよくわからないが……
しかし、ちょい運のゲージって何なのか?
今なら少しわかる、死者の未練は白いモヤが見えることか。
ツッコミどころは多いが、最初に比べると分かる事も増えてきている。
測ってはいないが、体重も落ちてきている、はず。
だって、この世界、油が少ない、少なすぎるのだ!
もちろん、まだ米も見つけてない!
「ギブミー! かつ丼、天丼、唐揚げ丼!」
修平はついつい叫んでしまう。
「ハァ〜〜〜〜、虚しいね」
この世界の味は、そこまで不味くはない。
基本うす味なのが頂けないのだ。
修平は濃い味付けがすきなので……
減塩、体には良さそうなんだけどね。
しかし、能力がいくら高くても、技術がなければ勝てないのはナタリーとの模擬戦で分かっている。
日々精進である。
気を引き締める修平であった。
現在のおっさんの状況。
持ち金 金貨二十七枚、銀貨四百八十六枚、割れ銭少々。
装備 頭 矢避けの鉢がね。
体 うす鋼のチェインメイル。
ロックリザードンの革の鎧。
キラーラビットと手袋とブーツ。
アシッドタートルの肘宛、膝宛。
武器 ブロードソード(魔力媒体)。
盾 ロックリザードンの革、鋼縁仕様。
うん、なかなか。
修平は消耗品の補充の為、トゥラン商会へと向かう。
「ちわ〜〜!」
修平は必要な物を次々と買っていく。
消耗品で銀貨百五十枚程かかってしまった。
この世界、魔法のアイテムボックスはないのだろうか?
持てるがかなり重いのだ。
リュックもだいぶボロくなってきた。
今にもリュックの底が抜けそうで怖い。
「おーい、修平!」
「あっ、ナタリーだ。街に帰ってきていたのか……」
トゥラン商会を出てすぐに、ナタリーに声をかけられる。
「大変な事になったね、あたしも王都の近くから戻ってきたけど、向こうも大騒ぎさ」
王都、中心から北東に"ヘベル"。東に"ガズ"。北に港街でもある"ヘレナ"。南西に"ラトゥール"がある。
ヘベルとガズは共和国との国境に面しており、にらみ合いが続いている。
どうやら、ナタリーはラトゥールに行っていたようだ。
早馬で二日かけ、急いでドランに戻ってきたらしい。
「で、あんたはどうするんだい?」
修平の答えは、もう決まっている。
「ギルドの冒険者として行動しようかと思っている……」
ナタリーは納得はしていない顔だが、頷く。
戦争に行くのを止める難しさも、彼女は知っているからだろう。
「まぁ、後悔だけはしないようにしな!」
「はいっ!」
ナタリーから手紙を渡された。
ラトゥールにいる人物、その人に会うための紹介状らしい。
表面に複雑な模様が書いてある。
ナタリーは修平に渡す瞬間、凄く照れていた、乙女か。
まさかのラブレターじゃないよね……
宿に戻り、戦争に行かねばならないと伝え、出発前に解約をお願いした。
女将さんには、かなり心配されたが……
「今までお世話になりました」
ナタリーの紹介だったが、とてもいい宿だった。
もし戻ってきたとしたら、またお世話になるかもしれません。
修平は部屋に戻り、いらない装備を返済ボックスに入れ、処理する。
買い取りでは二束三文だった。
ボックスでも、たいした返済額にはならなかったのだが……
それから三日後の朝。
「みなさん集まりましたね。それでは、出発します!」
リリアの号令により、冒険者の列が進み出す。
街には魔物に対する備えも必要だ。
ギルドマスターと何組かの冒険者グループは街に残るようだ。
「リリアは街に残らないのか?」
リリアは受付嬢だ。
戦争に参加する義務は無い筈では?
「戦争は嫌いです! でも、私はちゃんと見届けたいんです! ちゃんと最後まで!」
本当に強い女性だ。いい女だよ。
その心意気、おっさんにも分けてほしいところである。
総勢60名程か。
食料や必要な物は、ある程度はギルドが負担してくれる。
湿地帯を越え、更に野営地をいくつか越え、とりあえず目指すは最初にある宿場町まで。
馬車も同行するので、動きを合わせて行程は8日くらいか……
何事も無く、のんびりいくといいなぁと思う。
とても呑気な思考のおっさんなのであった。