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閑話 ナタリーの話

 あたしの名前はナタリー、歳は28。

一応は元Aランクの冒険者で、メインは王都で活動してた。


 あたしは産まれがスラムだし、母親が死んでからは、そりゃもう、見てられないくらいに荒れてたね。


 そんな時さ、あの男が現れたのは。

名前はカイって名乗り、自分は異世界から来たのだとか言う。

あたしは異世界? はぁ? って感じだった。

 ただでさえあたしは、スラムっていう狭い世界に生きてきたんだ。

あたしは男の言う事が何ひとつ理解できない、まぁ学もないし。


 信じられないがエルフの里から来たそうでね。

人間嫌いのエルフがいる里だよ。

最初は胡散臭いって思ったよ。

スラムでは裏切り、裏切られなんて、日常茶飯事だったからね。


 カイはあたしに生きる術を教えてくれた。

同情だったのか、なんなのかは未だにわからないけどね。

それなりに長い時間を過ごした。


 王都にも一緒に付いていったし、冒険者にもそこでなった。

 カイは強かった。

魔法こそ使えなかったけど、両手に剣を持ち、凄いスピードで切りつけるんだ。

まるで踊りでも舞っているような……まあ、あたしには無理な闘い方さ。


 何年後だったかね……


 王都では異世界から来たっていう女も仲間になった。

顔は小綺麗で魔法にも秀でていた。

三人で依頼も数多くこなしたし、ランクも順調に上がっていった。

しかし、戦争にも参加しなくちゃならなくなった。

冒険者は強制なんだとさ。


 初めて人間を切った。

獣人っていっても、人となんら変わりない。

なぜ、こんな戦争までしてお互いを憎み合うのか、あたしには訳がわからなかった。

手が震えたよ、そして虚しくなった。

あたしはこんな事の為に強さを求めたんじゃない。

生きていくために強くなりたかっただけなんだ。


 そこであたしは冒険者をやめた。


 ギルドではだいぶ揉めたけどね。

まだ戦争の真っ只中だったし、Aランクだった、てのもあるし。

カイが後ろから手を回してくれたみたいでね。

なんとか冒険者を止めることができたのさ。


 けど、カイは王都に残らなければならなくなった。

あの男は戦争を終わらせるって言ってた。

エルフの仲間達も里から応援に来てくれたらしい。

同じ異世界の女は一緒に行動するみたいだ。

多分、あの男なら大丈夫。

言った事は実行する男だからね。


 そして、あたしは故郷に帰って来た。


 恩返し、ってわけじゃないけど、あたしみたいなガキがこれ以上増えないようにしよう。

これからは、そう思って生きていこうって考えた。


 トゥラン商会もその考えに同調してくれた。

飯の炊き出しや、ガキどもに簡単ではあるが護身術や勉強とかを教えるんだ。

出来ることが増えていけば、スラムは出ていけるだろう。


 しばらくして、戦争は終わった。


 カイは、流石にやる男だった。

嬉しくなってあたしも王都に会いに行ったもんさ。

恋愛感情?

ないない! あたしは顔も見たことないけど、父親みたいな感じなのかねぇ。


 それからどのくらい経ったのだろう。


 スラムのガキどもを悪用する糞どもを始末して、この街も少しはマシになると思ってたんだ。


 お嬢様が襲われたと聞いて、あたしは心臓が止まるかと思ったよ!

本当に無事で良かった。

まぁ、本当は全員が無事なら良かったんだけどね。


 そこには、お嬢様と一緒に変な男がいた。

名前は修平って言ったか。

悪人には見えなかったし、雰囲気がカイに似ているって思った。

腹は少し出ていて、まぁ、だらしなそうではあったけど。


 凄く油断してて、隙だらけで……

直ぐに死んでしまいそうな危うさがあった。

 だからかな、ほっとけなかった。

カイがあたしにこの世界を見せてくれたように、最低限の知識を修平に与えてやろうって思った。


 護衛に行くことになって、ギルドで指名もした。

頑張っているみたいだし、ランクが上がるには、護衛の経験も必須なんでね。


 ついつい目でおっちまう。

顔も少し、シュッとしてきているし。

やだ! ついだよ! つい!


 夜営の夜、交代に行くと、修平は良く眠ってる。

よほど疲れたんだね。

ふぅん、なかなか可愛い顔してるじゃないか……

あ、起きちゃったね。

そんなにビックリしなくてもいいじゃないか。

傷つくねぇ……



 最近なんか変なんだ。

修平を見てると下半身がキュンキュンする。

どんどん強くなってるし、あ、あたしも守ってもらいたい……


 なんてね! これじゃ、まるで乙女じゃないか!

アメリアにちょっかいだして、修平も鼻の下のばして。

もぅ、ついつい叩いちまったよ。


 あぁ〜やだやだ。

こんなのあたしじゃない!

初めて男に抱かれたいなんて……

少し冷静にならないとね。


 修平が異世界から来たって事を、同じ異世界人の女に話をしようと思う。

 カイは今、簡単に会える立場じゃなくなっているからね。

アメリアからの話では、その女は王都の近くの街に住んでいるそうだから。

ちょっくら行ってくるかねぇ……

あたしがいなくても寂しがるんじゃないよ、修平!



修平「な、なんだろう、なんか寒気がする……」







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