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14話 今後に向けて

 修平は、おそるおそる宝箱を開ける。


「ま、眩しい。なんじゃこりゃー!」


「だ、旦那、金貨、金貨が〜!」


 修平の目から、大粒の涙がこぼれた。


 金貨の他に銀貨も多少入っているが、それでも、かなりの枚数の金貨がある。


「よし! 数えるぞ!」


 流石にみんな、ハイテンションだ。


 金貨が千五百枚、銀貨が百三十枚、割れた硬貨も少しあるようだが……


「おおおっ、俺達もついに大金もちに!」


 モブ達も涙を流して喜んでいる。


 それもそうだろう。

日本円に換算すると、なんと一億五千万越え!

元の世界でも、こんな大金、見たことも、手に入れたことない!


「みんなで山分けだな!」


 ダニエウ達がいなかったら、修平は死んでいたかもしれない。

ハリケーンの時、飛ばされないよう、皆は必死で抑えてくれた。

そこは評価しよう。

例え四人で分けたとしても、それなりの金額にはなる筈だ。


 依頼の方も、おそらくは達成扱いになる筈。

何もかもが、根こそぎ飛ばされて、なくなってはしまったが……

しかし、これならば、アンデッドの発生も止まるかもしれない。


「よし! 街に戻るぞ!」


「おうっ!」


 ダニエウ達も返事が明るい。

皆、何に使おうか、考えているのかもしれない。

修平は自分の分を全て返済にまわせば帰れるかもしれない。


 未来は明るい。

修平達は意気揚々に馬の所に戻ったのだが……


「あれ? 馬は?」


繋いでおいた馬がいない。

というか、繋いであった木自体がなくなっていた。


「ま、まさかのハリケーンかよ……」


 どうやら、絶望はここにあった様だ……


 廃墟からは、かなり離れてはいたのだが、まさか、巻き込まれ事故が発生していたとは……


 馬はすべて空の彼方に消え、お星さまになっていた。

馬四頭分、銀貨二千四百枚、金貨にすると二十四枚。

二百四十万が、星に……


「だ、だから、ふりじゃないからって言ったのに……」


 起きてしまった事は仕方がない。

人間、諦めが肝心なのだ。

宝箱を見つけてなかったら、人生詰んでいたが……


 疲れた体に鞭をうち、四人は必死に街へと走る。


 門が閉まって、街に入れないと困る。

夜営の準備など、まったくしてこなかったのだから。


 修平達が街に着く頃には、日が沈み始めていた。


 どうやら、門が閉まる前には帰ってこれたようだ。

しかし、汗だくの男が四人。

むさいし、臭いし、華がない。

門番には、露骨に嫌な顔をされてしまった。


「井戸水でもいいから、体を流したいけど……」


 だが、夜に井戸を使うと、女将に怒られるのだ。

前回も、自家発で……げふん、げふん。



 修平は、四人の取り分を後から揉めないように、正確に決めておこうと思ったのだが……


「旦那のおかげで手に入ったんだ! 旦那が決めてくれ!」


 お言葉に甘えよう。


 修平が金貨、四百二十枚と銀貨他。

残りをダニエウ達三人で分けた。


 馬の代金?


 もちろん、おっさんの支払いである。


 だって、こいつらときたら……


「ようやく酒場と道具屋と武器屋と……のツケを払えるぜ!」


 おいっ! ダニエウ、どんだけ色んな所にツケてんだよ!


「俺も、母ちゃんに十年間借りてた金をようやく返せるぜ!」


 どんだけ母親に借りてたんだよ! 母ちゃんに土下座しろ!


「俺はヴァニラちゃんを身請けするんだ!」


 ヴァニラって娼婦だったんかい!


 まぁ、こいつららしいのだが……

だけど、とりあえずはちゃんと税金払え!


 修平はギルドに寄り、依頼の報告と今年の分の税金を納める。

アンデッド退治の報酬は、一人あたり、銀貨百枚だった。


 ハリケーンはかなり遠くからでも見えたらしく、街は大騒ぎだったそうだ。

その件で、修平はリリアに無茶苦茶怒られた。


 スイマセン、ダッテ、アンナコトニナルナンテ……


 ギルドは竜巻発生後、直ぐ様直属の斥候をとばし、確認も済ませていた。

そのお陰で、ちゃんと依頼は達成扱いにしてくれたのだ。


 アンデットの数が多かった為、報酬は少し上乗せしてくれた様だ。

ちょっと前には考えられない程に、懐に余裕がある。

しかし、返済にあてたら、ほぼ文無しになるのだが。


「ダニエウ達の事は言えないな」


 修平は苦笑いだ。


 そんなあいつらも、今は酒場で騒いでいる。


 いつもの事かもしれないが……

しかし、今日くらいは破目を外してもいいだろう。

それだけの頑張りはしたのだから……


 修平は宿の部屋に戻ってすぐに返済をする事にした。

人間、お金に余裕があると、本来いらない物でも使ってしまうのだ。


「返済ボードオープン」


 持ち金を全部入れたとしても、返済金の全額には届かない。

ならば保身も考えて、ある程度は残すべきだろうか……


「あれ?」


 返済金額を見てみると、四千五百六十一万五千八百五十円と書いてある。


「返したのに、増えてるんだけど……なんで?」


 ボードの下には、使用履歴と書かれている。


 クレジット、三十万円。


「な、なんですと! そういえば今月は、車検があったな……」


 そういえば、長男も塾に行きたいとか言っていた。


「え、なにこれ、増える事もあるの? 聞いてないよ〜!」


 修平は、思わぬ出来事に慌てる。


「と、とりあえず少しでも減らさないと!」


 金貨三百五十枚を投入! 三千五百万! ブルジョアか!


 修平の手が、ぷるぷると震える。

それも仕方ない。

こんな金額、簡単に払えるなんてセレブだけだ……


『残高 一千六十一万五千八百五十円』


 ゴールは近づいた筈だ。


「今からそんなに増えないよね?」


 不安が拭いきれない、おっさんなのであった。

だが、気持ち、切り替え、大事。

残りの持ち金はどれだけあるだろう。


 金貨四十枚、銀貨四百八十六枚、割れ銭少々。


「うん、そこそこはあるか……」


 税金も払い終わり、鉱山奴隷ルートも回避した。

ランクもEからDにアップ。

着実にレベルアップもしている。


 だが、ランクが上がると税金もアップしていくらしい。

Gランクだと、銀貨十枚だそうだ。

安いな!


 ショートソードも使い込んで、かなりぼろぼろになってきている。

そろそろ、買い替え時だろうか。

元々、パクった物なのだ。


ステータスも最初調べた頃から暫く経っている。

一度は再確認した方がいいのかもしれない。


 先を見据えて頭を悩ませる、おっさんなのであった。





((???))


「うん、順調に返していってるね」


 そこにはほぼ何もない、明かりも無い。

真っ暗で、周囲に人の気配も無い。


だだっ広い何もない空間に、一つだけ、大きな柱が立っている。

声は柱から聞こえてくる。


 その柱に一人の女性がやって来る。


「このままで、本当に大丈夫なの?」


「うん、これならなんとかなりそうかな?」


 女性は首を傾げる。


「疑問系なの?」


「この世に絶対はないからね」


「そう……」


「君には迷惑をかけるね」


 女性は去り際に語る。


「いつもの事でしょう……糞が、死ねばいいのに……」


 最後の言葉は小声で柱の人物には聞こえなかった様だが……

二人の会話はそこで終了する。


 そして再び、静寂がその場に訪れたのだった。

    

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こんな作品ですが、楽しく頑張りますので、これからもよろしくお願いします!


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