表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/104

75話 黒い何かと新たな力と

「なんだこりゃ……」


 ラギアは眼下に広がる、黒い巨大な塊を見下ろしている。

現在、ラギアは旧ラディソン王国の首都があった場所、その上空、かなりの高度に浮いているのだが……


 街がすっぽりと、黒い塊によって呑まれているのだ。


「ん、なんか出てきたぞ……あれは?」


 大きな黒い塊の外側から、真っ黒な人の形をした何かが、ポコポコと湧き出てくる。


 黒い人形はその場に暫く留まった後、ゆっくりとクロイツ方面に向け歩き出していく。

しかも、次々と。


 ラギアは暫く観察していると、黒い人形は一定間隔で発生している様だ。

それも所々の場所で。


「気味が悪いな……もしかして、あれは人なのか? 俺だけじゃ判断できねぇか……なぁ!」


 ラギアは一度街に報告する為、戻ろうと旋回した時だった。


 背後からの気配を感じ、咄嗟に飛行ユニットのオンオフを切り替え、体を沈め、ギリギリ攻撃を回避した。


「ほう、あれを避けるか。腐っても保持者だな」


 ラギアは改めて、自分を攻撃してきた男の顔を、まじまじと見る。


「お前は……ロッドマン? いや、それにしては……」


 容姿が若すぎる。

それにあの時、確かに体が骨になり、跡形も無く崩れ去ったはずだ。

しかも、男の背中には一対の羽がはえている。

人間? 魔物? ラギアの思考は混乱する。


「元々、狂ってはいたが……最早、人でも無くなったのか?」


「名前など、好きに呼べばいいさ。私はロッドマンには違いないが、そんな事はどうでもいい。どうだ、この羽は? 体を再構築する際に着けてみたんだが。空を飛ぶというのは、気持ちがいいものだな」


 体を再構築? だが、やはり、この男はロッドマンなのか?

ラギアはいまいち理解ができなかったが、ゴルドには、この事を知らせないといけない。


 魔力ポーションを一気に飲み干し、空のビンをロッドマンに向け投げると、飛行ユニットへ魔力を注ぎ、ラギアは全力でその場から離脱する。


「逃がすと思うのかね?」


 だが、ラギアの全力にロッドマンはしっかりとついてきている。


「ふむ、その装置も興味深い。お前を殺した後、ゆっくりと調べるとしよう」


「ふざけるな! 俺はまだ死ねねぇ! ようやく、娘と一緒に暮らせるんだ! 意地でも生きて帰るんだよ!」


 ラギアは自身の懐から、ビンを取り出し、蓋を開け、液体を空中に散布する。


 これは偵察に行く前に、紋様持ちでは無いラギアでは、闇に対抗する事は難しいと、エネルから渡されていたのだ。


 このビンの中には特殊な液体が入っており、液体は空気に触れるなり、気化して辺りへと広がっていく。


「これは……ほう、確かに力は弱まるな。だがな……」


 ロッドマンは、自身の持っていた黒い剣を振るう。

剣から黒い刃が飛び、ラギアの左肩に命中すると、飛行ユニットごと切り裂き、ラギアの体を抜けていく。


「がっ! 糞が……」


 それでもラギアは全力で飛び続ける。


 しかし、飛行ユニットが一つ失われた状態では、真っ直ぐに飛ぶ事も出来ず、凄まじいスピードで始まりの森の方角へ突っ込んでいく。


「やれやれ、あの装置は勿体なかったが……あのスピード、この高さでは、な。更にあの傷だ。まず助かるまい。さてと、こちらも最終段階に移行せねば……」


 ロッドマンは踵を返し、黒い塊へと戻っていくのだった。



 一方その頃、修平はというと……


 クロイツから出て、すぐ近くの場所で、魔物相手に魔法の特訓をしていた。


「ゲラート直伝、ファイアボール!」


 修平はいつの間にか、火魔法まで使える様になっていたのだ。


 冗談で使ってみたら、いきなり火が出てしまい、宿が火事になりかけてしまった。

ラミィが慌てて壁を凍らせ、どうにか延焼は防いだのだが、宿の女将とラミィに滅茶苦茶怒られた。


 最近、サザンジャイアントを倒したお陰か、それとも黒い軍団と戦ったからか、いまいちよくわからないのだが。


 だって、まさか本当に出るとは思わなかったから……



 しかし、これで五属性、全てをコンプリートした。


 ラミィから話を聞くと、氷や雷の属性といったものは、特殊に派生したものであり、あまり一般的では無いらしい。


「うむ、身体能力だけでなく、魔法でも人間離れしてきたな。これ、元の世界に戻ったらどうなるんだろうか?」


 アメコミのヒーローみたいだ。

手から火や、風を産み出し、ビルの隙間を跳び回る。

ネットニュースを賑わせる事、間違いなしだな。

危険人物として、どこかの組織に暗殺されそうだが……


「勘弁してほしい……」


 できれば余生は静かに生きたい、おっさんなのであった。



 体に疲れは残っているものの、修平は手の空いた時間に魔物を狩っていた。

ドレッド側の防壁が崩壊した為、衛星都市より内部にも、強い魔物が現れる様になってしまったのだ。


 魔石、更にはちょい運のゲージを上げる事の必要性。

そして、人々の平穏を守る為。

修平は日夜、戦い続ける。


「今はビジネスマンではないが、二十四時間、戦え……ません!」


 昔、そんな感じのCMがあったな……

今考えると、かなりブラックなのだが。


ん、アリエルが凄い勢いでこちらに向かってきている。

何か動きがあったのだろうか?


「修平! ゴルドがギルドに急いで来てくれって!」


 修平はギルドに慌てて行くと、既にいつものメンバーも揃っていた。


「アインスのギルド支部から連絡だ。街は放棄したが、一応、何人かは残しているんでな。ラギアが戻って来ないからよ、早馬で偵察にむかわせたんだが……」


 黒い人の形をした集団が、ゆっくりとクロイツに向かってきているらしい。

現在、黒い何かがいる場所は、始まりの森跡地近く。

進行速度がかなり遅いので、ファーデンまで到着するには、まだ時間はあるらしいが……

数が数え切れないくらい、もの凄く多いそうだ。


「まったく次から次へと……今、各都市の冒険者達を集めるよう、指示は出しているんだが、どこもかしこも復興で手いっぱいだからな……」


 物資も人手も足りない状況だ。

まさに、猫の手も借りたいといったところか。

山本さん(猫)の手は借りる事はできるが……


「どのみち、以前の結界を張るには魔石の数が足りねぇ。最悪、外側の衛星都市で止めねぇと、街の全滅もありえる」


 もうゴルドが頼れるのは、修平達しかいないのだ。


 しかし、黒い人形か……どうやって倒す?


 とりあえず、一度は相対してみないと、なんとも言えない。

そして、断るという選択肢は無い。

ここまで来たら、一蓮托生、毒食わば皿まで。

修平は最後まで付き合うつもりだ。


 仲間達と決意新たに、黒い何かに向け、歩みを進めるおっさんなのであった。


モンハンのアイスボーンが……

時間が……時間が……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ