表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/104

74話 現在とこれからと

用事があるので、早めに投稿。

しかし、眠い。


 クロイツでの防衛戦が終わって、早、四日。


 一行はゴルドの紹介で、五ツ星の宿に泊まっている。

この宿、キッチン、更には風呂までついているという、なんとも贅沢な仕様だ。


 おかげで、皆、体を充分に休ませる事ができた。

しかも、宿代はゴルド持ちで、タダなのだ。

流石、禿げていても本部のギルドマスター。

ゴルド、やるときはやる男だ。


 現在、クロイツでは急ピッチで復興が進んでいる。

北のドワーフ達や、ドワーフと一緒に来たジュエルジャイアント達も、瓦礫の除去など手助けをしているそうだ。

だが、元の街並みに戻るまでには、かなりの時を有するだろう。


 敵の兵士だった、元は黒い軍団も、復興に手助けをしてくれている。

スケアとネディ、二人の女兵士は、未だ牢に入ったままだが……


 昨日、修平はゴルドに捕虜の尋問を頼まれた。

その為、ネディに面会を希望し、牢やへと行ったのだが……


 彼女は、シラーという人物に忠誠を誓っているらしく、めぼしい情報は全く話してくれない上、罵詈雑言を浴びせられたのだ。


 スケベだの、やりチンだの、でかマラ暴れん棒だの、酷い言われようだった。


 まったく、失礼な!


 スケベは否定しないが、断じて、やりチンなどではない。

それに小さいより、大きい方が色々とやりよ……げふん、げふん。



 閑話休題。



「なあ、アメリア。ファンケル見なかったか?」


 一昨日の朝から、ファンケルの姿が見えないのだ。

体調が悪く、部屋から出てきていないだけ、と思っていたのだが……


「お祖父さんが始まりの森に連れていったよ〜。なんか用事があるんだってさ〜」


 始まりの森へ?

リーネ様に会いに行ったのだろうか?


 リーネ様の話では、エネルは依り代にされるのを嫌がっていた。

故に、ファンケルを一緒に連れて行ったのかもしれない。

しかし、何の用事なのだろうか……


 今は落ち着いているが、いつ何が起こるかわからない。

偵察に行ったレイリー達も、そろそろ帰ってくるのだろうか?

その報告次第では、すぐに動かないといけないかもしれない。



「なあ、旦那。俺のスーツケース知らないか?」


 ダニエウの背中にいつも担いでいる、あのスーツケースがまた無くなったらしい。

たまに無くなるのだが、いつの間にか戻ってきている。


 なんだか、呪いの人形みたいだな……



 カミュは寺院にて、回復魔法を使い、怪我人の治療にあたっている。


 クロイツ襲撃では、死者こそ少なかったが、避難中の住民の揉み合い等で、怪我をした人は多数いたらしい。

人口の数に対して、ヒーラーの数が圧倒的に少ない。

その為、彼女は率先してやってくれているのだ。

まさに、頭の下がる思いだよ。

彼女は天使だな。



「修平、足がむくんでいるの。揉んでくれない? 言うこと聞いてくれないと、娘さんに……」


「はい、喜んで!」


 くそぅ、ラミィめ……どうやら、悪魔はここにいた様だ。

最近、事ある毎に娘の事をちらつかせ、脅してくる。


 畜生、またヒイヒイ言わせ……


「何か言った?」


「何にも言ってません!」


 まったく、自分が悪いのだから、仕方ないのだが……トホホ。



 アリエルとレオニアルは、ギルドの訓練所で模擬戦を行い、冒険者達を鍛えている。

二人ともかなりの強さなので、引く手あまた、だそうだ。


 しかし、元気だな……おっさんは疲れがまだ抜けきらないぞ。


「修平、ただいま! ゴルドがレイリー達が帰ってきたから、ギルドに来てくれって言ってたぞ!」



 早い。流石は飛行ユニット。

エネルの物だが、くれないだろうか?

試作品は壊れてしまったから……



 修平はギルドに向かう最中、なにやら人だかりが見えた。

復興の作業後だろうか、汗と男の匂いが混ざり、何とも言えない香りが周囲には漂っている。


 その中心に……山本さんがいた。


「勘弁してくれニャ、吾輩にそんな趣味はないのニャ! ゲホホ、臭いニャ! 誰か助けてニャ〜〜!」


 彼は、何故男にモテるのか……


 うん、知りたく無いので、スルーだ。

きっとフェロモンが関係しているのだろう。

そうに違いない。


 修平は深くは考えないことにし、その場から立ち去るのだった。



 ギルドに着くと、リリアに案内され、いつもの会議室に通される。

そこには既に、ナキュレイ、レイリーパーティー、レオニアルとゴルドがいた。


「おう、来たか。早速で悪いが、レイリー話してくれ」


 レイリーの口から語られたのは、帝都も含め、人が全くいなかった事、城の入り口に黒いシミがあったが、消えてしまった事など、よくわからない話だった。


「とりあえず、俺達は報告に戻ってきた。異常すぎて……よくわかんねぇ。ラギアは、北をもう少し調べてみるって、単身飛んでったけどよ」


 帝国領の北か……


 始まり森から東に位置する、旧ラディソン王国領。

魔物の数も少なく、比較的平和な土地であり。

住んでいる住民の数も多く、帝都と同数位の人口がいるのだとか。


 しかし、誰もいないのか。気味が悪いな。


 ナキュレイからの話では、魔武具と呼ばれる物に力を蓄えるには、負の感情が関係しているそうだ。

手っ取り早い方法は、拷問や、人を殺すこと……

ナキュレイの知っている限りでは、魔武具の残りは盾、兜、腕輪の三つ。

他にもあるかもしれない、との事だが、ここまできて戦力を温存するだろうか……



 ノンノ壊滅の件も踏まえ、議会の提案により、帝国側の衛星都市を放棄、西側の都市への移住も進めているそうだ。

既にクロイツを囲む、衛星都市の特殊城壁は機能をしていない為、苦肉の策といったところか……


 住民達も混乱しているが、命がかかってるとあっては仕方なく、徐々にではあるが移住を進めている。

だが、時期が悪い。

雪がちらつくこの季節では、最悪死者も出かねない。

議会も頭が痛いところだろう。


 普通ならば、雪の時期に進軍などしてこないだろうが、元の世界と異世界は勝手が違うのだ。

元の世界の常識が通用しないという事も、頭の片隅に入れておかないといけない。


「相変わらず魔素は濃いままだからな、魔物の数も増える一方だ。魔石の在庫がかなり少なくなっちまったから、助かるが……はぁ」



 ゴルドはため息をついている。

最近、忙しすぎて全く家に帰れておらず、嫁とイチャコラできないそうだ。


 知らんがな!



 修平達が会議室で話している頃、エネルとファンケルは始まりの森にいた。

だが、ファンケルの様子がいつもと違う。


「やれやれ、君が依り代になってくれればいいのに……」


「嫌だ! 君と変わると、ろくな事にならないからね〜」


 どうやら、ファンケルにはリーネが乗り移っている様だ。

そのリーネは、結晶化したレインツリーのくぼみに、エネルから渡された魔素の錠剤を埋め込んでいく。


「力も大方戻ってきている。そろそろいけそうだ。魔力の補充もこれで……」


 リーネはエネルでさえ理解できない、太古の言語で唄う。

するとレインツリーは輝きを増し、青々とした葉を繁らせていく。


「よし、エネル、手をこっちに」


 リーネとエネルは手を繋ぎ、レインツリーに触れる。

すると、レインツリーは淡く光り、不可視の魔力の糸が、空へと駆けていく。


『聞こえるかい? 西の里、南の里の長老よ』


 暫くすると、レインツリーから返信が返ってくる。


『南、通信に問題はありません』


『こちら西。長老は樹化が進み、代替わりをしました。若輩者ですが、今は私、ホルンが長老を務めさせていただいております』


 そこにエネルが割り込む。


『今は君が長老か〜、無理はしないようにね〜』


『え、お父さんなの? 恥ずかしいから個人的な話は止めてよね〜』


『こらこら、話の節を折るんじゃない。だが、この感じなら問題なさそうだね。各里は戦力を集め、転移、この場所に集結せよ。既に魔王は復活している。西は獣人、王国にも声をかけ、南は鬼人の力も借りるのだ。この戦いは、世界の命運がかかっている。負ければ終わりだからね』


 リーネからの指令により、各里は慌ただしく動き出す。


「ふう、そろそろ時間だね。エネル、後は任せたよ」


 リーネはエネルに体を預けると、力がフッと抜ける。

どうやら、ファンケルに戻った様だ。


「さてと、僕も最後の大仕事に取りかかろうかな……」


 エネルの呟きは、森へと吸い込まれていったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ