表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/155

71話 4月25日 ディアナの実力

 ……それって、アレですね?! わたしが魔力で作った石を、クライヴさまが風で飛ばす技…!

「へえ、二人はもう合わせ技を持ってるのか。ぜひ見たいねえ。―――――敵ももう近くまで来てるし」

 言いながら、ロナンドが、先陣はゆずるとばかりにシンドをうながし、ディアナの後ろへと移動する。

 前衛がいなくなり、見晴らしの良くなったディアナの視界に、頭から細長い尻尾まで、ほぼ全身をうろこのような皮膚におおわれた、体長五十センチほどの魔物が歩いて来る。

 しゃくしゃくと小さな脚で若草を踏みしめる姿は、すこしだけかわいいと思えるけれど、相手は魔物だ。動く生物が近くにいれば、「今日の晩ごはんげっとするで~っ!」とばかりに容赦なく襲い掛かって来る。

 ……たしか、こいつは、お腹だけやわらかいんだった。だから、一般的な攻略法は、うまく転ばせたところでお腹を刺すか、それとも、力押しでたたきつぶすか。…あ。

「……クライヴさま」

「ん?」

「わたし、すっごく簡単にあいつを倒せそうな方法を思いつきました。クライヴさまにも協力していただきたいんですけどいいですか?」

「いいよ」

 ディアナの提案を、内容に聞かずにあっさり受け入れるクライヴ。

 「あら男前」と感心するアルテアに、「わ、結婚前の共同作業? 見たい!」となぜかはしゃくファルシナ。「何するつもりだこいつ」ばりの、あきれた目を向けて来るライルに、ちょ、ちょっとみなさん!? 魔物が近づいて来てるのに、雰囲気なごやかなんだけどどういう事!? とばかりにあせった表情のシンド。

 唯一、ロナンドだけは、神経を研ぎ澄ませ、敵の動きに気を使っているようだ。けれども、余力の部分を使って、ディアナたちをあたたかい目で見守っている。

 ……な、なんなの……?

 おのおのが見せる表情がカオスとなって、ディアナの頭を混乱させる。けれどもクライヴは落ち着いていた。

「で、おれはどうすればいい?」

 おのおのが放つ独特な空気にも一切動じる様子はなく、ディアナに作戦を問う。

 ……! だめだめ、まわりの空気にまどわされちゃ…! わたしは今から魔物を倒すんだから。

 クライヴのまっすぐな声で落ち着きを取り戻したディアナは、きりっと表情をひきしめるとクライヴに作戦を伝える。

「土の魔法でマルマジロをひっくり返すので、お腹を攻撃してください」

「わかった」

「じゃあ、――――行きます」

 宣言するように言って、ディアナは地面に膝をつく。そして、両手のひらを地面に置き―――――地の魔力を流し込んだ。

 すると、走るマルマジロの足元の土ががくんとへこんだ。マルマジロが穴に足を取られている間に、土のかたまりを棒のように伸ばしてまるいお腹を小突くと、マルマジロの体がくるりと半回転し、ころんとあおむけに倒れた。同時にマルマジロの周りにある土を盛り上げ、四本の足と尻尾をがっしり押さえる。

「クライヴさま、お願いしますっ」

「了―解っ」

 ディアナが声をあげると同時にクライヴは剣を抜き、マルマジロの弱点である腹部に向かって振り下ろした。

「ミギ…!!」

 マルマジロは、ほとんど悲鳴をあげる間もなく、その体を宙へと散らして行った。

 あとに残ったのは、半分土に埋もれた、マルマジロの皮。これを、シンドが素早く膝をつき、掘り起こし始めた。

「んー。地味だねえ」

 一部始終を見ていたライルが、率直な意見を述べる。

 ……たしかに。

 正直、ディアナもそう思っていた。

 そもそも土の魔力は、すべての魔法属性の中でも防御に突出している。それを攻撃に転じさせるとしたら、今のような地道な作業を積み上げるしかないのだ。

「……地味なんだけどー…」

 ……地味でもいいもん。

「ちょっとすごいな」

「……ですね」

 ……別に、ライルさまと共闘するわけじゃあないし?

「マルマジロの足を引っかけた穴、小さいのが二つしか開いてない」

「つまり、マルマジロの進む方向と、足が地面に落ちる瞬間を、一瞬にして読んだ、と」

 ……わたしは、クライヴさまのお役に立てれば、それでいいんだから。

「ああ。しかも、マルマジロの動きを止めた土の盛り方にも、まったく無駄がない」

「ええ。魔力のコントロール能力が高い証拠ですね」

「そうだな」

 ……みんなみたいに、ぐわっと魔法を放って、ぱぱっと魔物を倒せなくったって、……いいんだもん。くすんくすん。

「………クライヴさま!」

「ん?」

「わたしの力は、直接攻撃には向いていないかもしれませんけれど、がんばりますからっ!」

「えっ、あ…いや、でも、ディアナはまだ体が成長しきっていないわけだから、無理はダメだよ?」

「…! そ、そうでしたぁ…」

 クライヴに指摘されて、自分の現状に気づき、残念そうに肩を落とすディアナ。

 クライヴが、「大丈夫、あと一年もすれば、体は成熟するから」とディアナをなぐさめる。そこからすこし離れた場所で、ロナンドがライルに訊ねた。

「………サルーイン嬢、おれ達の話、聞いてましたかね?」

「聞いてなかったんじゃない? まったく」

「ずいぶん落ち込んでいるようなので、…もう一度ほめましょうか」

 そう言って、ディアナのもとへ行こうとするロナンドを、ライルが引き止めた。

「いいんじゃない? 落ち込ませておいて。おもしろいから」

「………そうですか」

「……まったく…。悪趣味ですわよ、ライル殿下」

「………。(うんうん)」

 ライルが傍観を決め込んだので、ロナンドはディアナの名誉回復を取りあえずあきらめる。

 アルテアは、とげとげしい口調で意見をのべ、ファルシナは、うなずくことでアルテアに同意した。

「……でも、大丈夫そうね」

 アルテアがそう言って、見つめた先には。

「………ディアナの魔力コントロールは正確だと思うよ。無駄もないし」

「本当ですか?」

「うん。おれのクラスにも、かなうヤツいないかも」

「えええ~?! そんなに褒めていただかなくても……」

「いや、本当だって」

 ディアナを正当に評価する、クライヴの姿があった。

「………フォローは万全。わたしたちの出る幕はないわ」

「ですねっ」

 お見事ね、とつぶやくアルテアを、ファルシナがうれしそうに肯定する。

 そんなファルシナに、アルテアが目を細めた。

「……とても不思議なんですけれど………あの二人の笑顔を見ていると、こちらも幸せになれる気がしますわ」

「! シャブリエ様もですか? 実はわたしもそうなんです」

「まあ…! わたしたち、気が合いそうですね」

「はい!」

「これからは…ファルシナ様とお呼びしても?」

「ええ、ぜひ!」

「わたしの事は、アルテアと」

「ありがとうございます、アルテア様!」

「まあ、うふふ…」

 美少女二人が、楽しそうに微笑み合う。

「じゃあ、次はわたしたちが先頭になってみます?」

「いいですね、それ!」

「いや、それはさすがに……」

 盛り上がる二人に、護衛のシンドが異を唱える。が。

「いいんじゃない? 初級の魔物に力負けするような子達じゃなさそうだし」

「いざとなれば、後方からフォローしますよ」

 実力者のライルとロナンドが口々に言うので、シンドは「わかりました」とあっさり引き下がった。

 魔法学園に入学したての新入生を先頭に立たせるなど、本来ならあってはならないことだけれど、このメンバーは例外だと、柔軟に考える。

「どうせなら、もう少し奥に行ってみるか」

「そうですね。このメンバーなら、中級に出くわしても問題ないでしょう」

「いっそ森の魔物を狩り尽くすか」

「さすがにそれは無理です。時間的な理由で」

 そんなことを言いながら、新入生を前衛に置いた形で、パーティは移動を開始する。

 結局、奥に入り過ぎてうっかり遭遇してしまったオークさえもあっさり倒し、シンドの度肝を抜いたのだった。

次回のタイトルは『自由研究…って授業なの?』


ディアナ「んまっ。塩パンんまっ」

ライル「………タイトルとかけ離れてるけど…。これも一応次回予告」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ