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63話 4月24日 イベントは、忘れたころにやってくる?

 楽譜をながめつつ、たたただだん! と、指を机に激しく打ち付けるクレディリックを横目に、ちょうどやってきた教師のアレクに鍵を返し、ディアナとクライヴは教員室を出た。

 パメラとリュークの姿はすでにない。二人で睦まじく去ったのか、それとも個別に目的地に行ったのか。

 その辺はわからなかったけれど、さきほどの問答を繰り返さずにすんだことに、ディアナはほっとした。

 ……でも、オルヘルスさまとは、明日も教室で会うわけだし………。また何やかんや言われるのかなあ……。

 先ほどパメラにどなられたことを思い出し、ゆううつになったディアナは、クライヴとつながった手に意識を向けてみる。

 教員室でアレクに鍵を返す時、いったん離された手は、またすぐにクライヴによってすくいあげられた。

 教員室を出たら、またパメラと対峙するのかもしれないと思っていたディアナは、このクライヴの行為に勇気をもらった。

 クライヴが何を思ってディアナと手をつないだのかはわからないけれど、婚約者として大切にされている自覚はある。

 ………甘えちゃいけないのはわかってるんだけど……不安な時に手をつないでもらったりなんかしたら、寄りかかりたくなるよう~………。でも、あんまり甘えちゃうと、ヒロインに心変わりされた時のショックが大きいし……。……いや、そもそも、クライヴさまはわたしに恋愛感情を持ってるわけじゃないんだから、心変わりもなにもないんだろうけど………。

「………、…」

 言いようのない不安を抱えつつ、ディアナの手を引き、半歩前を歩くクライヴの背中を見上げる。

 ………こうやって、クライヴさまと一緒にいられるのは、いつまでなんだろう…。

 クライヴとヒロインが、どのくらい親密になっているかわからないし、ついさっき、恋に落ちた気配のするパメラも気になる。ダンスパーティの時にディアナと同じ髪飾りをしていた、イルマのことも。

 ………あれ、もしかしてわたし、ライバル多い?

 ヒロインはともかく、パメラとイルマは、憶測でしかない。

 けれど、ディアナの目線では、どこからどう見てもクライヴは素敵な人だ。

 攻略対象者だけあって、容姿はいいし成績も優秀。その上性格もとても良い。

 こんな男の人がそばにいたら、とりあえずぜったい目は引く。そして、親しくなれたものなら、恋愛に進展させたいと願うのは当然だと思う。

 ……あ、でも…。………わたしじゃあ、ライバルにはなれないか……。

 クライヴもさっき言っていたけれど、ディアナとクライヴは、家同士の縁……または国策よって結ばれただけの婚約者。惚れた腫れたの関係ではないのだ。

 ……まあでも、結局クライヴさまが好きになるのはヒロインなんだから、パメラとイルマは、わたし同様失恋か……。むしろ同士だ。恋にやぶれた時は、三人でお茶会でも開いて、ぜひともお互いをなぐさめ合いたいものだね。

 同じ人を好きになったもの同士、つらい気持ちを分かち合えるのではないかと考えつつ、ディアナはクライヴの半歩後ろを横を歩く。

 クライヴは特に何を話すでもなく、先導するようにディアナの手を引いて、校舎の中を進む。

 自分の思考を整理するだけで手いっぱいだったディアナは、クライヴがどこに行こうとしているのか知らないまま歩いていたのだけれど。

 ひたすら階段を登って、目の前に現れた扉をクライヴが開けると、明るい陽射しが伸びてきて、ディアナを包む。

「………ここは?」

 ディアナが目をぱちくりさせながら発したつぶやきに、クライヴが答えた。

「屋上だよ」

「屋上?」

「そう」

 クライヴにうながされるまま、屋根のある廊下から、青空の下へと足を踏み入れるディアナの視界に、前後左右に伸びる、大きな金属のかたまりが入る。

「これって………」

 左右にはまるで鷹が大きく羽を広げたかのような翼がついていて、後方にも、三つ小さなものがある。

 前方は、メジロやツグミのような小鳥の頭のようにまるく、そして、先端はくちばしのようにすこしとがっている。

「ちょうどいい機会だから、入学式までに、ディアナを家に迎えに行けなかった埋め合わせを、させてもらおうと思って」

「………、あ」

 そういえば、学園に来る寸前もらった手紙に、迎えに行けなくてごめん的なことが、書いてあった気がする。

 その直後に雷に打たれ、前世の記憶を思い出したので、すっかり忘れていたのだけれども。

 クライヴは、学園の屋上にでんと置かれた、十メートルはあるだろう物体を見ながら言う。

「これは、ライル殿下が開発したもので、魔動翼機と言うんだ。風の魔力で浮かせて空を飛ぶ乗り物だよ」

「……………」

「最近まで、殿下に依頼されて魔動翼機の試運転をしているんだ。それで、安全が確保されたから、人を乗せてもいいだろうってことになって………」

「……………」

 クライヴの話を聞いていたディアナは、自分の顔から血の気が引いていくのを自覚していた。

 ………あ。これ、ゲームのイベントだ………。

次回タイトルは『葛藤』です!


みのり「わああ~っ、やかんが噴いてる~っ!」

みのる「それは沸騰。」

みのり「ぐふっ」

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