21話 4月12日 食事の量はピンキリですか。
お越しいただきありがとうございます。
ブックーマーク、評価をして下さった方、感謝です。
今回、黒びかりする虫の表現があります。苦手な方は、この話はすっとばし、次の話の上部に掲載されているあらすじを読んでください。次の話は、一時間後に更新される予定です。すみません…。
ディアナが寮の食堂に行ったころには、昼食を注文できる時間ぎりぎりになっていた。
あせるあまり、メニューもろくに見ないで、ボードの一番上に書いてあったものを注文し、適当に四人掛けのテーブルにつく。
好き嫌いはあまりないので、大丈夫だろう。
……いや、ゲテモノ類は苦手だ。
カエルのフライとか、いなごの佃煮とか、バロットとか。
特に、〇〇〇リなんか、絶対に、絶対に食べたくない。
たとえ、豚肉よりもはるかに栄養価が高かろうと、血行がよくなろうと……!!
……でも、抗がん作用があるって話も…。……ううう……。もしも、もしも、病気になって、本当に、本当に効き目があるんなら………食べる……のかな?
なんて考えていたら、ちょっと気が重くなったので、気を紛らわすためにもぶんぶんと首を振り、ほくほくと湯気の立つ紅茶をいただく。
………うん、おいしい。
口の中に、ピーチの甘い香りがほんわりと広がり、思わず笑顔になるディアナ。
……せっかくポットで用意してもらったんだから、たくさん飲んじゃおっと。
こうしてディアナがほっこりとしたところで、食堂のおばちゃんが料理を運んできてくれた。
ロールパンが三つとフライドポテト。メインは大きなもも肉の野菜添え。それに加えて、野菜たっぷりのクリームシチューが、大皿にこんもりとつがれている。
……わー…。
焼き立てのロールパンの、甘いバターの香りに鼻をくすぐられ、ディアナは思わず笑顔になった。
「たくさん食べるんだよ」
ディアナの笑顔につられたのか、おばちゃんも、にかっと気前よく笑う。
「ありがとうございます」
……と、いい返事はしたものの。
ディアナは、目の前に並べられた料理の多さに、ちょっと戸惑った。
……おいしそうではあるんだけれども…。
あらためてメニュー表を見てみると、どうやら、ボードの上から下に行くにつれて、量が少なくなっていっているようだった。
……よく見て注文すればよかった…。
てんこもりの野菜のとなりで、こんがり茶色に輝く二本のもも肉を見て、ディアナはちょっと悲しくなった。
できるなら、注文したものを残したくない。けれども、目の前に鎮座する食べ物たちは、ディアナの胃袋の大きさを遥かに凌駕している。
とまどいつつも、とりあえずクリームシチュをいただこうとスプーンに手を伸ばしたディアナの耳に、さわやかで、それでいてやわらかい女の子の声が聞こえてきた。
「昼食の時間、もう終わりですか…!?」
「そうだよ。まだ食べてなかったのかい?」
「はい……」
おばちゃんの質問に答える女の子の声が、やけに沈んでいる。
「ごめんねえ、できれば作ってあげたいんだけど…。今日はめずらしく食材も全部なくなっちゃったんだよ」
「そうですか……」
「……」
スプーンに伸ばした手をいったん引っ込め、ディアナは視線を声がする方へ向けた。
食堂の入口に立つ二人の人物。一人はいわずもがな食堂のおばちゃん。そして、もう一人は。
うつむいているせいで、顔はストロベリーブロンド色の髪にかくれている。けれども。
「………」
……髪の色がストロベリーブロンドの子って、そうそういないよねー………。
「……やっちゃったか~……」
そう小さくつぶやきながら、よれよれした様子で顔を上げたのは、やはりというか予想通りの人物、ヒロインファルシナ・オランジュだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
おもしろい、続きが読みたい等思っていただけましたら、ブックマーク、あるいは評価ボタンをぽちっとしていただけるとうれしいです。




