表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/155

20話 4月12日 決意。

初めて来て下さった方、ブックマーク登録をして下さった方、評価をして下さった方、感謝です!

そして、誤字(よけいな文字)を指摘して下さった方、ありがとうございました。助かります。

 ぽこん。ぽこん。ぽこん。

 

初授業の翌日は、休日だった。

 ディアナは、朝起きて、動きやすい長袖のワンピースに着替えると、さくっと朝食を食べ終え、昨日のうちに確保しておいた鍛錬場にこもった。それからかなりの時間をかけて、もくもくと地面に穴を掘っている。


 真剣な表情で、地面に流れる魔力を読み取り、比較的土がやわらかそうな場所を選んで、ぽこんと穴を開けて行く。


 しばらく続けると、四坪…畳八畳分ほどの部屋が穴だらけになった。ひとつは直径十センチメートルほどの大きさだけれど、数はたくさんある。


 ……ま、数だけはね。


 ふう、と息を吐くと、お次は、自分の魔力を込めた土で、薄く穴をふさいでみる。これで、一見穴がある場所はわからない。いわゆる落とし穴の出来上がりだ。


 この簡易落とし穴、領地でたまに母に連れられて出かけた魔物狩りで、よく使ったものだ。一角ねずみや赤とげうさぎなど、小型の魔物を狩るのにとても役立ってくれた。


 「………」


 ディアナは、できたてのほかほかな穴の前にちまっとしゃがみ込んで、考える。


 ゲームで召喚されたぶたもどきの身長は、一番背が高かった悪役令嬢Aとくらべても倍以上はあったし、体重にいたっては3倍…いや、5倍はあるのではないかと思う。

 逃げ惑うご令嬢のひとりが、ぷっちんと踏みつぶされたくらいだ。足の大きさも相当なものだろう。


 「………」

 ディアナは、両手を交差させて、ぎゅっと自分を抱きしめた。


 ……だめだ。こんなちっちゃな穴よりも、ぶたぶたぶーの足の方がぜったいおっきい…。


 敵が落とし穴に足を引っかけているうちに、少しでも逃げられればと思ったのだけれども、今のディアナには、これ以上大きな穴は作れない。


「……とすれば、どうするのがいいか……」


 たとえ、ふごふごぶたさんが目の前に召喚されたとしても、何とか逃げ切れる術を身につけなくては。

 もっともっと強くなって、魔法も使えるようになって、知識もたくわえなくては。


「………あれ?」


 ……そういえば、魔物って、どうやって召喚するんだろ。


 召喚の仕方を知れば、止める方法も解るかもしれない。あとは、バンパイアのニンニクと十字架じゃないけれど、何か、弱点みたいなものがあれば、そこを突くのもいいかもしれない。


「……よし、これで行こう。…って、うわ、もう退出時間か」


 見上げた柱時計は、ちょうど昼食時を示していた。


 ……お腹も空いてきたし、寮に戻ってごはん食べよう。それから、召喚のしかたを調べに、学園の図書館に行こっと。


 所蔵量は、王立図書館の次に多いらしいから、さぞかしいろいろなジャンルの本が置いてあることだろう。

 ただ、今日は、図書館の前に行かないといけない場所がある。

 今日の午後、攻略者の中でただ一人の教師、マリス・レスタンクとヒロインの、出会いイベントがある

のだ。


 マリスが学園の花壇の手入れをしているところに、偶然ヒロインが通りがかり、ちょっと元気のない草花に、光の治癒魔法を当ててあげる、というイベントだ。ゲームでは、魔法を当てるかどうか、選択できるようになっていた。


 魔法を使うと、地の魔力属性を持つマリスは、花壇を大切にしているので、とても喜んでくれる。

 この出会いイベントを通過すると、マリスが担当している実技授業、土地の開墾に参加してみたり、途中からは、不治の病に罹ったマリスの実母のために、二人で協力して薬草を育てたりすることで、愛を育めるのだ。


 ちなみに、ゲームのマリスは、登場した当初は、子爵家の次男と名乗っていた。けれど実は彼、アルテアの家と同じく、フロンド王国の建国時に公爵位を叙勲されたエフタル家の長男だったりする。


 でも、マリスが生まれる前に、どこぞの魔術師が、「まもなく生まれるだろう子は、現公爵をやがて死にいたらしめる」なんて預言したせいで、マリスの父でもあるエフタル公爵に、遠縁の子爵家へと養子へ出されてしまうのだ。


 マリスを攻略中、ヒロインも、何度かエフタル公爵に会う機会があるのだけれど、その度に、実父のはずの公爵が、マリスを厄災扱いした上で罵倒する。けれど、決して追い返したりはしないところに、マリスへの複雑な愛情を感じるのだ。


 この父子の確執を取りのぞけるルートは、ヒロインとのハッピーエンドのみ。

 けれど、その場合は、エフタル公爵がマリスをかばって死ぬことになる。


 ……ううむ…。何だか、すっごく重い。


 今、ディアナがいるここは、ゲームの世界では決してない。それ重々承知している。


 たとえば、ゲームの中では、悪役令嬢Eのイルマ・ダントンと、第二王子のライル・ガウスが婚約していたけれど、現時点で双方に婚約者はいない。


 ゲームとは確かにところどころ違う。けれども、限りなく近い世界でもあると思う。


 事実、ディアナを含め、他の悪役令嬢たちは、みんなゲームの攻略対象者と婚約をしているのだ。彼らの動きに注意を払い過ぎて、無駄ということはないだろう。


 ……ちょっとしたことにも気づいて、必要なら対処していかないと。


 「………。」


 まずはお昼を食べて、それから花壇に行く。そして、ヒロインとマリスの出会いイベントを見て、その後は、図書館で、魔物の召喚に関する本を探すのだ。


 「……うん、がんばる…!」


 ディアナは、足に力をこめて立ち上がると、痛いくらいに両手をぐっと握り込み、自分の決意を確かなものにするのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

おもしろい、続きが読みたい等思っていただけましたら、ブックマーク、あるいは評価ボタンをぽちっとしていただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ