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16話 4月10日 第二王子ライル・ガウス

ご覧いただき、ありがとうございます。

ブックマーク、評価をして下さった方、感謝です。

「―――」


 ディアナは、目の前の、たぐいまれな容姿を持つ少年に、思わず見入ってしまった。


 白髪に薄い金色を乗せたような、やさしい色合いの髪に、中性的とも取れそうなかわいい顔立ちは、比較的整った容姿の人が多いこの世界でも、しっかり美形カテゴリに入るだろう。


 そして何より気になるのが、瞳の色の濃さ。

 多少紫がかっているものの、黒にとても近い色をしている。

 瞳の色が黒に近いことに比例して、体内に持つ魔力も多いとされるこの世界。

 ならば、目の前の少年は、まちがいなく強力な魔力の持ち主だろう。


 ……強い魔力を持っていて、その上超美形な人、とくれば。まさか、これはあれですか。やっぱりゲームの攻略対象者だったりするんですか。……ていうか、確か攻略対象者に、明るい金髪キャラさんいたような? えっと、まさかの第二王子さまですか? そうなんですか? あああ、はっきりしないのか、もどかしい…! 前世の自分の顔とか、弟の顔は置いておくにしても、せめて、ゲームの攻略対象者と悪役令嬢たちの顔を覚えていたらよかったのに…!


 この辺があらかじめわかっていたら、すこしは対処のしようもある…はず。とディアナは思う。


 ……みのるに桃ソーダ食べられた記憶とか、思い出してる場合じゃないはずなんだけどなー………。

 前世(まえ)から、成績優秀な双子の弟には、バカだのドジだの残念すぎるだの、いろいろずたぼろに言われてはいたけれども、本当にそうかもしれない。と落ち込むディアナだった。


 ……きっと、今、この世界でまた出会えたとしても、同じような関係になるんだろうなー…。


 ディアナが、想像の翼をななめの方向に広げていると、一歩分ほどディアナの前にいるクライヴが、固い声で言った。


「………ライル殿下」

「…!」


 その名前を聞き、ディアナの顔が思わず引きつる。


 ……ライル…。それはもしかして、いやしなくても、あれだよね…。フロンド王国の第二王子さまのお名前だよね……? ということは、やっぱり……攻略対象者…!


 そう言えば、白薔薇の茂みの奥から、白い壁みたいなものがちらりと見える。


 ……あれって、ゲームの中で、ライルが使ってた、かまくら式の休憩場所だよね。……たぶんそう。


 そんなことを考えつつ、クライヴが頭を下げるのに合わせて、カーテシーをした自分はえらいと思う。


「ああ、かしこまった挨拶はいいよ。学園内では地位なんて関係ないんだし。君がクライヴの婚約者の、ディアナ・サルーイン嬢かな? ちょっと顔を上げて見せてよ」

「は、はい」

「上げなくていい」

「へっ?」

 クライヴの思わぬ言葉に、ディアナの声が裏返った。


 ……上げなくていいって、どゆこと?


 クライヴの意図がわからず、とりあえず頭を下げたままかちんとかたまっているディアナの耳に、ライルのあきれたような声が聞こえて来る。


「顔を見るくらいいいだろ? 別に減るものじゃないんだし」

「減ります」

「お前の神経が?」

「それもありますね」

「話したら面白そうなんだけどなー」

「……あなたが女性に興味を持つとは、めずらしい」

「別に、異性として興味を持ってるわけじゃないよ。それは絶対ないし、ありえない」


 ……ちょっと待ってどういうこと? わたし、好きでもない相手に、告白する気すらないのにフラれたんですけど。


 ディアナが口をとがらせるのも、無理ない話と思われる。


「あ~あ、すねちゃった」

「……!」


 ディアナは頭を下げたままなので、口の動きは見えないはず。それなのに、ライルは的確にディアナの心情を察していた。


 ……な、何? この人、人の心が読めたりするの? そんな魔法あったっけ?


「あ、今度は焦ってる?」


「……!!」


 からかうような口調で言われて、さらにあせる。だって、ライルの言うことは、全部当たっているのだから。


 ……こ、この人怖いかも……。


「え~。それはちょっと失礼じゃないかな?」


「……!!!」


 ……ひい~! ばれてる! 怖がったのもばれてる! え、ちょっと待って、この人超能力持ってたりするの?! ええっ? ゲームでそんな設定あったっけ?!


 頭を下げたまま、あたふたしているディアナ。ライルは、そんなディアナの様子も楽しんでいるように思える。姿は見えないけれども、何か雰囲気的に。


 というか、カーテシーはいつまで続けなければいけないんだろう。まあ、小さいころから母がつけた家庭教師に仕込まれて来たので、あと数分は何とかなるけれども。

 どうしようかと困っていると、ディアナの背中から肩にかけて、ふわりと腕が回った。


「もういいよ、ディアナ」


 穏やかな声で言われると同時に、クライヴが、抱きかかえるようにしてディアナを立たせてくれる。

 その後、くるりと体が反転し、ディアナの視界が、深みのある青色に染まった。

 それが、クライヴのクラバットだと気づくのに、さほど時間はかからなかった。


「えー。そうまでして、おれに見せたくない訳?」


 背を向け、その向こうにディアナを隠すクライヴに、ライルは不満の声を上げた。

 けれど、声のトーン自体は変わっていないので、真剣に怒っている訳ではないのだろう。


「では、失礼いたします」


 クライヴは、ライルに答えることなく、一方的に一礼すると、ディアナを連れて、もと来た道を引き返す。

 ライルは、軽く肩をすくめてクライヴたちの背中を見送りつつ。


「ふーん。ちょっと面白いことになりそう……かな?」


 と、ひとりつぶやくのだった。

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