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153/155

153話 5月25日 湖の狩人

残酷描写含みますので、苦手な方は飛ばしてください。

次回の前書きに、あらすじをつけておきます。

 パシャン……パシャン……。

 月明りが、夜の湖に銀色の光を注いでいた。

 パシャン…パシャ……。

 昼間は学園生たち…おもにカーサの憩いの場となっている東屋も、光の恩恵を受けてかすかな輝きの中にいる。

 パシャン……パシャン……。

 光の下、水面をゆらす音は、ひとつではなかった。

 魚の群れがいるのかそれとも……。

 もしこの場にカーサがいたら、おそらく興味深く湖を観察した事だろう。

 パシャン…パシャ……パシャ………バシャ!

 突然、水が大きく跳ねる音がした。

 それはまるで、何かが何かに追われているような、緊迫した音だった。

 バシャ! バシャバシャ! バシャシャバシャ!! バシャンッ!!

 水の中からぬうっと出て来た黒い影が、銀色に光る魚を捕まえようとしている。

 命を狩られてはなるものかと、必死に逃げ惑う魚に、黒い手のようなものが伸びて来た。

 バシャバシャバシャバシャ、バシャ!!

 魚が逃げるその背に、黒い手が迫る。

 はげしく水をたたく音は、まるで話せない魚の絶叫のよう。

 バシャバシャバシャン! バシャバシャン!!

 バシャバシャ! バシャ!

 バシャバシャッ! バシャ!

 バシャンバシャバシャ!! バシャバシャ!!

 いつしか、水しぶきが湖のあちらこちらからあがり始めた。同時に逃げ惑う魚の数も、それを追う黒い手も増える。

 やがて黒い手は、お目当ての獲物を捕らえ、次々と口の中に放り込んだ。

 黒い影の口はひとつではなく、影の中にまた黒い底なしの穴が開き、その中にどんどん獲物を入れて行くのだ。

 影は、獲物を捕らえては食べ、食べては捕らえをひたすら繰り返す。

 この湖の魚すべてを喰いつくさんばかりの勢いだ。

 けれども、たまに口に合わない魚がいるようで、一口食べては吐き出してしまう魚もあった。

 それまでは生き物なら何でも口にしていた彼にも、どうやら好き嫌いという進化の兆しが見えたようだ。

 常人ならばそのおぞましさに吐き気をもよおすかもしれない光景に、目を爛々と輝かせている者があった。

 その者は、あわい月光がそそがれる東屋の中で、恍惚とした様子で目の前の惨劇を眺めている。

「ふふふ……味の好みが出てくるなんて………。あなたもだいぶ成長したわねえ…」

 そうつぶやいた口もとがいびつに歪んで見えるのは、月の光の加減なのか、それともその者の心が生み出したものなのか。

 月光下での湖の狩りは、黒い影が空腹を満たすまで、ひたすら続けられるのだった。

次回タイトルは、『公爵さまとディアナ』で~す。


ディアナ「公爵さまと侯爵さまでは公爵さまの方がえらいんだけど、侯爵さまの方がえらそうに思えるのはなんでかな?

ライル「………候の方が、画数が多いからじゃないの?」

ファルシナ「いえ、ライル殿下、いくらディーでもそこまで単純じゃ―――」

ディアナ「おお! なるほどそういうことか~」

ライル「……あいつのおつむは単純に出来てるんだよ」

ファルシナ「………」

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