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134話 5月19日 入会をめぐる…戦い…?

「こんにちは、ライル殿下」

「やあ、クライヴ」

「今日もディアナの相手をしていただき、ありがとうございました」

「礼には及ばないよ。おれ自身、彼女をおもしろいと思っているからね」

「おもしろい、ですか……殿下にとっては最高のほめ言葉かもしれませんね」

「クライヴがそう思うなら、おれはそれでかまわないよ」

「そうですか。ところでディアナ」

「は、はいっ」

 二人の間に、何やらぴりぴりとした空気がただよっているなと思っていたところで、突然話を振られてしまったディアナは、思わずぴゃっと背筋を伸ばす。

 ……だってだって、クライヴさま、何だかとってもイイ笑顔しちゃってるし…! この場合はこわい方の…!

 まるで、言い逃れは許さない、とでも言われているようだ。

 ディアナは、怒られるようなことは何もしていないのに、親の機嫌が悪いというだけで、冷たく当たられて、途方に暮れる子供のような気分になっていた。

 肩をちぢこませながら、クライヴの言葉を待つディアナに、クライヴはやっぱりイイ笑顔を向けながら問う。

「今、ライル殿下と何を話していたんだい?」

「えっ……それは」

「おれが主催している同好会に、サルーイン嬢を誘っただけだけど?」

 ディアナの言葉を遮るようにして、ライルが言った。するとクライヴは、今度はライルに厳しい目を向ける。

「わたしは、ディアナに聞いているのですが」

「いやあ、だって今、サルーイン嬢は静かに怒るお前に怯えているようだから、うまく口が動かないんじゃないかと思って」

「…!」

 ライルの言葉に、クライヴははっとした表情でディアナを見る。

「…ごめん。ちょっと強引だった」

「え、いえ、わたしは…」

 ディアナは、胸の前で両手をぱたぱた振る。けれどもクライヴの申し訳なさそうな表情は変わらない。

 ……いや、別に、笑いながら怒るクライヴさまは、確かにちょっと怖かったけれども、それもわたしが見たことのない貴重な表情というか、カメラがあったらぱしゃぱしゃ撮っておきたいレベルでレアというか。だからね、みのライルくん。

「サルーイン嬢も気の毒に。我が魔動具開発研究同好会の活動に興味を持っただけで、婚約者に怒られてしまうなんて」

 ……そんな風に、クライヴさまの傷口に、塩をすりこむでないよ?

「……っ」

 けれども当のクライヴは、ディアナの願いもむなしく、悔しそうに唇を引き結んだ。

「わ、わたしは本当に……」

「まさかクライヴは、」

 クライヴをすこしでも元気づけようと声をあげるディアナをさえぎって、ライルが問う。

「婚約者だから、というだけの理由で、サルーイン嬢の活動範囲を制限するような事は、しないよね?」

「…っ」

「うわ、図星か」

「ですがライル殿下、まだ先日の教室での事件も解決していません。そんな時に、ディアナの行動範囲を広げるのは、承服いたしかねます」

 ……教室の事件とは…、アレか。罪なき小鳥ちゃんを、まきぞえで死なせてしまった事件か。確かにまだ、事件の動機も犯人も、何ひとつわかってないよね。

「学園を警備する騎士の数は増やした。少なくとも、学園の中で活動する分には問題ないだろう」

「……それだけではありませんっ」

「何?」

「魔動具開発研究同好会の会員は、現在殿下おひとりですよね? そこへディアナが同好会員として活動を始めれば、殿下にそのおつもりがなくても、まわりは殿下のお心がディアナにあると思うでしょう」

「主に我が母上とか?」

「それに、殿下とディアナが二人で部屋にこもるとなれば、あらぬ噂を立てる者が出て来るかもしれません」

「まあ、それはそうかもね」

「お気づきであれば、誤解を受けるような行動は控えていただきたい。特に、ディアナを巻き込むような事は」

 もうクライヴには笑う余裕がないのか、その表情からわかるのは彼の憤りだけだった。相手が相手だけに、声を荒げるようなことはしなかったけれど、もしも目の前に立つのがライルでなければ、クライヴは相手の声を無視し、とっくに立ち去っていたことだろう。あるいは、何らかの脅しに近い発言をしているかもしれない。

「……」

 クライヴが漂わせる怒気に、ディアナの心が不安で包まれる。

 ……ここで、同好会に入るのをやめると言えば、クライヴさまはご満足かな? でもでも、みのライルと、安心して会話が出来る場所は欲しい。なにせわたしの命と、クライヴさまとの未来がかかっているんだから。でもやっぱり、クライヴさまのおっしゃる通り、この世界で未婚の男女が一室の中で過ごしたとなれば、あほな噂が流れ出る可能性はけっこう高い。……ていうかさ、男女が一緒に部屋にいただけで、そういう関係になるって思っちゃう感覚もかなり問題なんじゃないの? そう思う人って、かなり高い確率で自分も同じことしてるよね。はっきり言って、めいわくです。別に、男女ふたりきりの教室で、本を読んだっていいじゃないのさ。ごはん食べたっていいじゃないのさ。ぶーぶー。

 と、ディアナが心の中でぶちぶち文句を言っている間も、クライヴはライルに怒りを向け続ける。けれども、当のライルは、いつもの飄々とした表情で、クライヴの視線を受け止める。

 ……おや。どうやらみのライルに策がありそうな気配。となれば、あとは、クライヴさまが乗っかってくださることを祈るばかりか………。

 ライルの表情から、彼の腹の内を軽く察したディアナが、こっくんと喉を鳴らしながら、ライルの動向を見守っていると。

 その彼は、まるでコンビニに行ってお茶でも買って来るー、とサンダルをはいて出かけるかのような軽い口調で、クライヴにこう言ったのだった。

「だったら、お前も入る? 同好会」

「―――は?」

次回のタイトルは『入会騒動決着。そして新たな火種。』で~す。よ~ん。


ディアナ「クライヴさま色のハンカチ、大切にしまってます!」

ライル「いや、ハンカチなんだから使いなよ」

クライヴ「使う用にもう一枚買って来ようか?」

ライル「やめろバカップル」



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