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130話 5月18日 朝から波乱の予感?

 学園が休みのこの日、ディアナはどきどきしながら、女子寮のエントランスに備え付けてあるソファに座っていた。

 昨日の夜クライヴから、今日一緒に出掛けようと誘われたのだ。

 ……魔伝鳥って、ああいう風に使うんだー…。

 みのライルが二人に買ってくれた魔伝鳥。二人で相談して、本体はクライヴに持っていてもらうことにした。

 鳥の魔物の魔石を三つに割り、一番大きな魔石を鳥の形に削り、所有者二人の魔力をそそぐ。そして、小さいふたつの魔石に、それぞれの魔力をそそいで所持することで、二人の間を行き来するようになるアイテムだ。

 クライヴは、魔伝鳥のくちばしに手紙をはさんで、ディアナに送ってくれたのだ。

 ……魔伝鳥って、学園の敷地内とか家周辺とか、ちょっと遠くにいる人と連絡を取るのに便利だよねー。

 ディアナは、部屋に置いて来た手のひらサイズの鳥を思い浮かべてにんまりする。

 今日、クライヴに直接手渡してもよかったのだけれど、せっかくなので、今度は自分から手紙を出してみたい。

 女子寮から男子寮まで魔伝鳥を飛ばす魔力は、まだディアナにはないと思われるので、ちょうど真ん中にある公園あたりから飛ばしてみるつもりだ。

 ……クライヴさまは、きっと、寮の部屋から飛ばしたんだろうなー。いいなー。わたしも飛ばせるようになりたーい。

 ただ、これも魔力量の問題なので、なかなかに難しい。ちなみにディアナたちは、魔法の実技でも魔伝鳥を使ったけれど、下のクラスは授業を行わないと聞いている。

 ……ファルシナさまやアルテアさまなら、きっと余裕で飛ばせちゃうんだろうなー。学園の端から端までとか。

「……ふう」

 大きく開いてしまった実力の差を思うと、ついため息が出てしまう。けれど。

 ……まあ、しょせんモブはモブ。主要メンバーには到底かないっこないんだから、わたしはわたしなりにがんばるだけだ。うん。

 ディアナがあっさりと立ち直れたのには、理由がある。

 ……だって、ゲームの悪役令嬢Aならともかく、アルテアさまのお人柄なら、絶対にぶたぶた魔物を呼び出して、他の悪役令嬢を供物に捧げたりなんてしないだろうから……。ファルシナさまだって、逆ハーレムルートに向かって突き進んで行くような、恋多きお嬢さんではなさそうだし……。となればもう、魔物召喚イベントなんて、起こらないと思っていいんじゃないかな? まあ一応、最低限の警戒はしておいた方がいいのかもしれないけれども。

 ディアナが明るい未来を想像していると、寮の扉がこんこん、とノックされる。

 ……! クライヴさまかな?

 ディアナは、薄紫色のワンピースをひるがえしてドアへと向かう。この色なら、クライヴの青みがかった金髪とならんでも、きっと似合うだろう。

 ……今日のクライヴさまは、どんなお洋服を着ていらっしゃるかな?

 この世界の男性の服装は、だいたいパターンが決まっていて、今日のように日差しもある程度あってあたたかい日なら、みんな一様にシャツとパンツだ。おしゃれな人は、シャツの上にベストをはおったりもするけれども、柄はみんな無地。

 ……クライヴさまなら、ポロシャツも似合いそう。何とかして作れないかな? 問題はあのやわこい生地をどう調達するか……そもそも、この世界にポロシャツ用の生地が存在するかどうか……。あ、そうだ。みのライルに聞こう。

 わからないことはみのるに聞け、それが前世において、幼少からすりこまれたみのりの記憶だったりする。

 前世では、どうしてめだかは大きくならないの? とか、おとなりのおじさんは、どうしておひげを剃らないの? とか、今考えるとしょーもない質問を何度もしていた。そのたびに、みのるはめんどうくさそうにほおをひくひくさせつつも、何らかの答えをみのりに示してくれたのだ。

 みのライルとは、今は立場も違うし、なかなか話す機会も作れないのだけれども、幸いなことに、明日は月に一回のダンスパーティの日だ。この時ばかりは、ダンスにでも誘ってもらえさえすれば、堂々とみのライルと過ごせる。

 ……みのるも、何か話したいことがあるみたいだから…たぶん誘ってくるはず。どうせクライヴさまは、わたしと何曲か踊ると、着飾ったおねいさま方が大量に押し寄せて来て、引き離されちゃうだろうから、今回はちょうどいいってことにしておこう。うん。さみしいけれども。……まあでも、今日はこれからクライヴさまと二人で過ごせるんだから、思い切り楽しんで、クライヴさまを充電しておこっと。よしっ。

 そうと決まれば、とばかりに、いきおいよく扉を開けたディアナ。

「おはようござい……」

 けれども、扉の向こうにいた人物が誰か気づいたとたん、あいさつが尻つぼみになって行く。

 ……い、いかんっ。ちゃんとあいさつしないと…!

 ディアナは、扉を開け放つと、あわててスカートの裾をつまんで膝を折る。

「ます、カーサ殿下」

「ああ、おはよう。サルーイン嬢」

 ディアナの前に立つ、大物攻略対象者は、いつになく気さくに返事をしてくれた。

 けれども、カーサに応対するディアナの心情はパニック寸前だ。

 ……なっ…、なぜ、カーサ殿下がここに…!? 

 ゲームの設定では、カーサが女子寮を訪問する理由はただひとつ。ヒロインファルシナに会いに、だ。

 しかも、それも確か、八月か九月あたりの話だ。それまで、カーサとファルシナは、人目にふれないようにと学園の北に位置する森の中で逢瀬を重ねる。けれど、二人の仲に感づいたアルテアの、ヒロインに対する当たりが強くなってゆくにしたがい、カーサはファルシナを守るために、月に一度開催されるダンスパーティでエスコートをするようになる。

 ……って、いやいやいや! 今はまだ五月だし! ダンスパーティは明日だしっ!

 カーサの行動が知っている展開に当てはまらず、あたふたするばかりのディアナだったけれど、ふととある結論にいたる。

 ……あ、でも別に、ゲームでは語られなかっただけで、カーサ殿下がアルテアさまの方に会いに来ることだってあるんじゃないかな? なんせ婚約者なんだし。

 もし二人の間に恋愛感情がなかったとしても、なにせ、国を代表するカップル。将来の国王と王妃さまなのだ。多少形式的になったとしても、二人でお茶会をしたり、散歩をして、交流を深めようとしていたとしても、まったく不思議じゃない。

 そういうことなら、と安心して息をついたディアナ。けれどもそれも、ほんの一瞬のことだった。

「オランジュ嬢はいるか?」

「………」

 ……………はい?

次回のタイトルは、『恋する王太子』です。


ディアナ「うわ~んっ。カーサ殿下の恋が盲目すぎる~っ!!」

ライル「えっ、お前がそれを言うの?」

ディアナ「…えっ?」

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