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死の書  作者: 上林
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Never END

「暑いな...」

セミの鳴き声が鳴り響く真夏日。太陽はもうだいぶ高くあがってしまったみたいだ。

本当なら朝のうちに実家に着きたかったのにな...と考えながら、太陽照り返すアスファルトの上を男は仏頂面で歩く。

「ブルル…」携帯が鳴った。嫌な予感がする。日差しで見えにくくなった液晶の画面に目を凝らすと、「母」の字が表示されていた。イヤな予感は当たるもんなんだな…。

「母さん、ごめ…」「今何時だと思ってんのー!」言い終える前に怒鳴り声で遮られる。暑さで参ったこの体に、高音の怒鳴り声はさすがに堪える。

「ごめんて、引っ越しの手伝いできなくて。昨日までテスト期間でずっと寝てなくて寝坊しちゃったんだよ。」

正直に理由を話し、謝る。

「ほんとコウイチはいつもそればっか!前に一緒に買い物付き合ってくれるって言ったときも同じようなこと言って寝坊してたし!男手はコウイチしかいないからすごい頼りにしてるのに!どうせ、母さんとの約束なんてどうでもいいと思ってんでしょ…」

最初の勢いはどこにいったのか、電話越しに聞こえる声は段々と震えていく。

めんどくさい…。頭にその一言がよぎってしまった。こんな感じでも、女手一つで自分を19年間育ててくれた母だ。そんな大切な人にめんどくさい…か。俺は冷たい人間なのかもしれない。自己嫌悪したあと、母のご機嫌をとることにした。

「ほんとごめんって。まだ全部は片付け終わってないでしょ?着いたらあとは俺やるから、母さんはゆっくり休んでてよ。あと母さんの好きな鶏のさっぱり煮、今日作るからさ。楽しみにしててよ。」

震えた声がピタリと止む。どうやら作戦は成功したようだ。

「ほんと?!あとやってくれるの?!。やっぱコウちゃん優しいー!。あとは蔵が手つかずなのよー、ほら!あそこホコリっぽいからコウちゃんにしてもらえるとすごい助かるの!。さっぱり煮もすごい楽しみ!コンビニ弁当は飽きてたところなのー。じゃあ待ってるね!バイバイ!」

一方的に話され、電話は切られた。蔵…か。

長く続く坂道に目を向ける。あと10分くらいで着くかな…と考えながら太陽照り返すアスファルトの上を男は仏頂面で歩く。

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