兆し
翌朝、久々によく眠れたことを実感しながら、センテオトル以外の何かに感謝した。
「やっとまともな食料だ!」
当然これ以外の食料もそのうち見つけなくてはいけないが、トウモロコシの練り物をトウモロコシの葉で包んで、かまどの灰の中に入れる。しばらく焼けば完成だ。
「硬い。」
別に文句があるわけではない。単なる感想だ。ますます独り言が増えてきた。
「メッセンジャーって孤独だな。」
ただ、ニシュタマリゼーションを人々に伝えるためだけに、ボクは何でこんな思いをしなければいけないのか分からないが、食べると気力が湧いてきた。昨夜も食事を食べたし、今日は昼にも食事ができた。夜の分も残してある。
「センテオトルよー!」
腹が満たされると自分のおかれている状況に別の不安が出てきた。
「ボクこのままの感じでいいのー!?」
返事がない。返事がないということは多分よいのだろう。
「しかしだるいな。」
そう言いながら、岩場を降りていく。
「うーん、ご利益はあるみたいだな。」
昨日、トウモロコシをもいだ辺りは、新しい房が沢山出てきている。「トウモロコシを豊作にするパワー」はあながち嘘でもないらしい。本当は間引かないといけないかも知れないが、そんな方法は知らない。
「ということは……」
狼をずらずら引き連れながら、村の畑のボクがパワーを使った辺りに行ってみると、小さい穂がいくつも出てきていて確かに沢山実りそうに見える。ボクの姿を見た村人達は目を丸くしているが、それがボクの取り巻きの狼のせいだとすぐに分かった。
「お前らは見た目が物騒だからな。」
別に、ボクに懐くわけでもなく、何となく近くにいる。なんだか、多方面に向かって申し訳ない気がして、僕は岩場に戻る。頬を伝う汗が口に入ると塩味が大げさに美味しく感じた。
「そういえば塩分って不足するとやばいんだよね。」
足りないモノだらけだ。雨が降ったり、寒くなってきたらどうすればいいのかも分からない。
「洗面器かバケツが欲しいな……」
そう呟きながら、雨が降ったら思う存分、体を洗ってやると心に誓った。