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その名はニシュタマリゼーション  作者: 古川モトイ
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道具がない

いろいろやっている間にボクは道具の重要性を感じ始めていた。とりあえず、杖になる棒はある。火箸の適当な棒だ。水を汲むたびに靴がぬれていては不便だ。バケツ代わりのものが必要だ。


「ああ、手が」


ふと自分の手を見るとこまかい擦り傷やかき傷が沢山できている上にだいぶ汚れている。鏡がないから分からないが、今ボクはどんな姿をしているのだろうか。水場の近くに新たに見つけた小さな岩のくぼみを石焼鍋として使ってニシュタマリゼーションをやった。これで翌日には食べられる。水を飲んでいるのでまだ死ぬ事はないが、このまま食べなければ本当に死んでしまう。


「ボクが飢え死にしたら、食ってもいいからな。」


何となくボクの周りにいる狼にそう声だけかけておいた。


「異世界ってブラックだな。」


先の尖った石で太目の枯れ枝を削る。その作業をしながら「竹」が見当たらない事に心底参っていた。竹ならば、こんなことしなくても、水を汲める器が簡単に作れるはずなのだ。


「ああ!クソ!」


水を汲める道具を作ろうと削り始めた太い枝は、真っ二つに割れてしまった。


「バケツぐらい……用意してくれていても良いじゃんかよ……」


なぜだかセンテオトルに面と向かって文句を言う気にはなれなかった。


「腹減ったし……」


割れてしまった木っ端を炉に放り込んで倒れこむ。


「あ」


その時、ひらめいた。ニシュタマリゼーションにこだわっていたが、今腹が減った現状はトウモロコシ焼いて食べれば良いだけではないかと言う事実に気づいたのだ。立ち枯れしていない穂を見つければ良いだけの話だ。生乾きの靴に無理やり足を突っ込んで、岩場を降りる。はぐれトウモロコシを物色して辛うじて葉が青いモノを見つけて収穫した。不意にパワーのことを思い出して「豊作になりますように!」と念じておく。収穫したトウモロコシは半分はアリに食べられていたが、何とか可食部分を見つけて焼きトウモロコシにして食べた。


「明日になったらこいつも食べれる。」


ボクはニシュタマリゼーションの途中のブツを見ながら、疲労感に抗わず眠る事にした。

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