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その名はニシュタマリゼーション  作者: 古川モトイ
7/21

水場

「夢か。」


家で寝ている気がしていた。しかし、目を覚ますとそこは異世界の岩場の荒地だった。臭い。獣に顔を舐められている。


「火が消えている……」


ケモノは狼の類だろうか。よく分からないが明らかに肉食なのに、ボクは襲われていなかった。これで食い殺されていたらセンテオトルを労働基準監督所に訴えているところだ。起き上がると、自分の体がじっとりと汗ばみ、3日風呂に入っていないことで頭はかゆいわ、体は臭いわ。


「風呂も洗濯機もない。」


だけど獣の群れはいた。やっぱりこいつらは狼か犬の類だ。なぜか襲ってこない。


「オマエラがいるってことは、結構早く火が消えたな。」


ただ、焚き火を見るとまだややくすぶっている気がする。ボクは燃えそうなものをかき集めると再点火似挑戦した。


「助かった。」


腹は減ったが、火はまた手に入った。狼(よく似ているが少しだけ違う気がする)の群れは少し距離を置いた。


「そうか風か。」


天候は穏やかだったが無風ではない。昨夜集めた薪が燃え残っているという事は途中で消えたのだ。石を拾い集めてかまど状に石組みをした。


「鍋があればなぁ…」


ボクは水を入手するべく岩場を散策すると岩の裂け目に水がたまっていた。


「飲めるのかな?」


見ると狼達は飲んでいる。


「ああ、水を汲む器がないや。」


ボクは長いため息をついた。独り言が増えている。とりあえず、手で掬って水を飲む。とても美味しい。ひとしきり考えた後に、自分のはいている靴を脱いで念入りに土を叩き落とした。自分の靴下の匂いを思うととてもこれで水を汲む気にはなれなかったが、背に腹は替えられない。靴で水を汲むと近くの別のくぼみに移した。


「火も持ってこなきゃ。」


さっき暖炉らしきものを急造で作った時に少しコツはつかんでいた。手早く石組みをすると、火種を持ってくる。狼たちはその様子の一部始終を暇そうに見ていた。


「オマエラもそろそろ餌のこと考えろよ。」


塗れた靴を暖炉で乾かしながら、ボクはやっと食事の支度を始めた。1日ぶりだった。

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