パワーの覚醒
「パワーっつっても豊作って、もっと他にあるだろ?」
試しにトウモロコシ畑の一角に手のひらを向けてみる。
「豊作になりますように!」
何も起きない。
「オマエ何やってんだ人の畑に!!」
村人の一人が怒鳴っている。よろよろしてこちらに向かってくる。面倒はごめんだ。
「何もしてないって!」
ボクはその場を逃げるように去った。村の周りを囲んでいるトウモロコシ畑を出ると種が飛んだのか畑の境界があいまいなのか、野生化したらしきトウモロコシがちらほら実ったり害虫にやられたりしている。
「ボクが食うものがないんだけど。」
ボクはため息をつきながら自分の住処を確保する事にした。村にはしばらく近寄れないだろう。土器の作り方はわからないが石焼鍋は知っている。岩場に適当なくぼみを見つけたのでそこの落ち葉をかき出してそこで何とか調理する事にした。仲間はずれになっていたトウモロコシは立ち枯れしたかのように乾燥している。ソイツをもいできて食べようと思うが、その前に火をおこす方法を考える。
「くっそ!これかよ!」
乾燥した木の棒を木片にこすり付ける。超原始的な方法な上に成功する気もしない。汗だくになりながらひたすらに木の棒を擦る。
「……」
焦げ臭いにおいがしてきた頃にはそれを喜ぶほどの体力は残っていなかった。結局、火をつけることに成功したのは日が沈む頃だった。トウモロコシの乾燥したヒゲは火起こしに使えると、謎の知識が増えた。
「今日はもう寝よう。」
枯れ枝をしっかり用意して、火が消えないようにするとボクは岩場で眠った。