異世界にケツから
椅子に座った状態で椅子を引かれると後ろ向きに転ぶ。丁度その感じでボクは後ろ向きに転んだ。
「次から異世界に転移するときには立った状態にしよう。」
そう言いながら立ち上がる。着の身着のままで来てしまった。財布も携帯もない。
「まあ、必要ないんだろうな。トウモロコシの神様!見てますか!聞こえてたら返事してください!」
遠くのほうから「見てないし、聞こえてないよ」と微かに聞こえた。何となく薄情さは感じていた。ボクの目の前にはえらく雑な畑があった。一目で分かるトウモロコシ畑だ。畑では現地人が収穫をしていた。こちらに気がつく。
「旅のお人か?」
声をかけてきた男性は今にも倒れそうで皮膚がボロボロだった。これは知ってる。ペラグラだ。なるほど、ボクがここに連れてこられたのはこういうわけか。
「ボクは何とかってヤツのメッセンジャーとしてここに来たんだ。その皮膚の病気を治せるかもしれない。」
その男性は視点が定まらない様子で、ボクの顔の辺りを見ていた。両手で力なく抱えるトウモロコシを見ながらボクは慎重にもう一度言った。
「その皮膚の病気を治せるかもしれない。……治せなくても、そこそこ良いところまではやれるだろう。」
「旅のお人、アンタは呪いを解けると言うのか?」
ボクは「なるほど呪いか」と妙に納得した。
「呪いじゃない。病気だ。多分、ボクがここに来た経緯から考えると、それはペラグラって病気なんだよ。」
ボクは半信半疑の男性に連れられて村へ向かった。