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その名はニシュタマリゼーション  作者: 古川モトイ
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その名は

「どこだここは。」


「見慣れた」我が家だった。モノがあふれかえる「現代」だ。ボクはと言うと、数年間の開拓作業でボロボロになったデニム以外は全て異世界の服を着ていた。


「え!?」

「あ、ただいま。」


一瞬、元の時間に帰ってきたのではないかと期待したが甘かった。がっちり4年間ぐらいが経過していたようだ。母はボクを見てへたり込んだ。センテオトルは決して器用な神ではないことはボクもよくよく承知していた。ボクはこれまでのことをポツポツと話しながら、少しずつ、元の生活に戻っていった。ボクの部屋も服も全てあの時のままだった。普通、異世界に行って帰ってきてもなかなか信じてもらえないのだと思うが、僕の場合、トウモロコシの皮で編んだブレスレットやワニ革に七面鳥の羽飾りがついた上着を着ていたのですぐに信じてもらえた。このごろは風呂に入っていると、急に父や母が覗きに来る。またどこかへ行ってしまうのではないかと不安になるそうだ。


「もっと食べろよ。」

「頂きます。」


父はやたらと食事のときにモノを食べさせようとする。ボクは日焼けして、筋肉がついていながらもかなり細くなっていたので、食べさせないといけないという使命を感じているようだ。二人とも「働け」とも「勉強しろ」とも何にも言わない。むしろ、ボクから異世界の話を聞いては「たくさん働いたんだな」とか「たくさん勉強したんだな」と言う。でも、いつまでもこうして親に養ってもらっているわけには行かない。頭を切り替えて働き始めなくては。


「家から通える職場じゃダメなんかね?」

「母さん、やりたい仕事なんだから。」


ボクはやっぱり農業をやることにした。ここ数年の経験から生きていくのに、それほどたくさんの荷物はいらない事が分かっていた。リュックサックにそこそこのモノをつめると、両親にしばしの別れを告げた。


「また、仕事安定したら顔見せに帰ってくるから。」

「病気になるんじゃないよ?」


家から最寄のバス停を目指して歩き始める。家が視界から消えた頃、見知った顔が近付いてきた。


「よう、久しぶり。元気そうだな。」

「そちらも、お変わり無い様で何よりです。」

「うん、ありがとう。」


しばらく並んで歩く。


「次の世界は、トウモロコシ自体が無いんだ。」

「そんなところにトウモロコシ持ち込んでいいんですか?」

「気候や土壌はバッチリなんだ。」


皮袋を渡された。


たねですね。」

「よろしく頼むよ、預言者。」

「一個だけお願いいいですか?」

「なんだ?」

「月イチとかでいいんで両親に手紙だけ届けてもらっていいですかね?」


センテオトルが立ち止まった。


「そういうのは『手紙の神様』に頼んでくれないと。」

「それぐらいケチケチしないでやって下さいよ!」


トウモロコシと人類の新しい冒険が始まる。一つの技術を携えて。その名はニシュタマリゼーション。

 ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。ニシュタマリゼーションと言う単語に偶発的に出会ったのは以外に近年の事です。世界中で様々な農作物が主食となるべく育てられています。脱穀に手間がかかる小麦やコメは日本人にも馴染み深いものです。ジャガイモは日本ではほぼ副食として。ジャガイモは他のファンタジー作品でも取り上げられているのを見た覚えがあります。変り種としては例えば毒(青酸系)を抜かないと食べられないユカイモやドングリの類とか、どうやって食べる方法に気づいたのか不思議で仕方ない。それらの中でもピカイチに変わっているのが「トウモロコシ」です。処理しないとビタミンB3不足で奇病を発症するその作物はなんと単位面積当たり最大の熱量を産する農作物でもあります。過去にネットゲームを作る規格に誘われて世界設定を行なっていたとき、その作品が開拓モノであったため、農作物についていくらか調べモノをしました。「単位面積当たり~」はその時に知り、「トウモロコシやべーな」という印象をずっと引きずっておりましたが、今回のテーマになったニシュタマリゼーションと言う技術に行き当たったのはそのもっと後の話です。

 ゲームを立ち上げようとそれぞれに頑張っていたメンバーは、首謀者が休止状態になったことで作業を続けられなくなり、チーム自体は雲散霧消してしまいました。しかし、私たちは幸運にもその後に「マインクラフト」というゲームに巡り合う事になります。そのネットゲーム製作チームのメンバーの一人がサーバーを建ててくれて、そこで結構遊ばせて貰いました。近年、そのサーバー管理人が「マインクラフトでマルチサーバーを立てよう!」と題した本を上梓されて、私も一冊手元に取り寄せました。そしてそのサーバーは今も続いております。その数年の年月、彼が彼なりのクリエイティビティを絶やさずにいた様子を遠巻きながらまぶしく眺めておりました。それは大変に幸せな事で、それも今も続いております。さて、私は、本業は学習塾の経営でして、その話題の本は塾の教室の本棚に置いてあるのですが、塾の中学生の生徒の何人かが食い入るようにその本を読んでいました。私自身は実はマルチサーバーを建てた事は過去に数回あるので斜め読みして書棚に納めたのですが、彼らは熟読していました。良い買い物をさせていただきました。

 話が少しそれました。アーク・サバイバル・エボルブという名前の通りのサバイバルゲームをやっていたときですが。中でキャラクターが脱糞をする要素があります。この脱糞現象はあまりコントロールできなくて、例えばオンラインゲームで友人が家に遊びに来て脱糞していくわけです。これは私の中で大変にショッキングで、そういわれてみるとさいとうたかお先生の「サバイバル」でも用便のシーンなどが結構ピックアップされていたことを思い出しました。それから考えるとマインクラフトなどはゲーム世界が「清潔すぎる」事になります。この「清潔すぎる」ことに関しては、私は幾らか足掻いておりまして、例の企画倒れになったネットーゲームの世界観を使って書き下ろした「コスモス」という小説では、宇宙時代の不衛生さを描写しております。今回も異世界転移というテーマを扱いながら衛生環境のギャップを少々描写してみました。文章の密度は私の中では比較的抑えたほうですが、その辺の「なろう」におけるバランス感覚はどの辺が正解なのかもわからないので、まあ今回も好き勝手やりました。また、他の作品もお目を通していただけましたら幸いです。

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