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その名はニシュタマリゼーション  作者: 古川モトイ
20/21

転移

 ボクは神殿の壁に必要な知識を書き残す作業を始めた。文字ではなく村の絵が得意な女性に頼んで、絵で描いていくのだ。神殿の一番奥の部屋の中にはセンテオトルに選ばれた人間しか入ってはいけないことも。ほどなくして、その子供は生まれた。彼女が特別な存在である事を村人たちに話すと、村人たちは一様に喜んだ。その子を神殿の奥の部屋に連れて行くと、センテオトルは彼女を野獣が見分けて襲わないようにする祝福と、彼女が住む所でトウモロコシが豊作であるように祝福をした。


「ボクのときはあんなに痛かったのに、この娘、泣かないんですね。」

「痛くないように祝福したもん。」

「ウソでしょ!?」


ボクはその娘を部屋の外で待つ母親に返した。


「ボクはこれでお別れです。」


娘の母はすぐに意味を察したようだ。


「預言者様、私たちをお見捨てにならないで……」

「ボクの成すべきことは全て終わりました。」


ボクはルデリクを呼んだ。


「ルデリク王子、今までずっとボクを支えてくれてありがとう。」

「ワタシはいつまでもアナタにお使えするつもりです。」


ルデリクは泣いている。


「センテオトルとボクを信じてくれて、本当に感謝してるよ。ボクはセンテオトルを見て知ってるけど、ルデリクは見ていないのに信じている。ボクには真似できないことだ。」

「夢でお告げを見た朝、ワタシの人生は変わったのだと悟りました。私も連れて行ってください。」

「それはダメだ。キミは成長したキミの娘に仕える責任がある。幸福な家庭で育ててあげて。どうせ、故郷には帰るつもりないんだろう?」


ルデリクはまだ何か言い足りなさそうだったけれど、もうこれで十分だろう。奥の部屋からセンテオトルが何かささやいている。


「今もしかして神が何かお話しに?」


ボクはそうだと頷いた。


「一つだけ!一つだけお願いがあります!!一目だけでいいので、ワタシもワタシの神様の姿が見たいのです。」


ボクがセンテオトルに確認すると「これだけ新人が深い人物にそこまで言われたら断れないと」言われた。


「娘と母親はちょっと建物から出て。王子、多分気絶するから。三日三晩は目が覚めないと思うから。明日の朝になったら寝てると思うから様子見に来てあげて。」


娘はセンテオトルを見ても何ともないのだが、娘を抱いた状態で母親が気絶するとまずい。建物の外に出た事を確認すると、信心深い村人が何人か集まってきた。


「多分、お前たちは光しか見えないぞ。」


靴を脱いで、ルデリクと数人の村人が一番奥の部屋に招き入れる。


「じゃあ、村の皆にもよろしく。元気で。」


ボクは異世界に転移する準備が始まったのを感じていた。自分の体が光り輝き始める。


「では行こうか。」


センテオトルが姿を現した。


「ルデリク、ボクの横にいるのがセンテオトルだ。」

「預言者様見えます!センテオトル様が見えます!」


センテオトルは微笑んでいる。


「目を覚ましたら、今見たことと、今まで見たことを記録して、村人や娘に伝えて。そうしたら、いつまでもトウモロコシもニシュタマリサリシオンも失われずに民と共にあるから。」


ルデリクの後ろの三人も目を見開いている。姿は見えていなくとも声は聞こえるようだ。ボクはなんだか名残惜しくなって、全員と握手して回った。最後はルデリクだ。


「預言者様!」

「ルデリク王子、お世話になりました。ありがとうございました。」


ボクは握手しながら深々と頭を下げた。顔を上げると涙でびしょびしょのヒゲの王子の顔が霞みつつあった。

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