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その名はニシュタマリゼーション  作者: 古川モトイ
18/21

月夜

 冬があけると七面鳥はそこそこ数を減らしていた。食べたのだ。村人たちと長く過ごしている間に、彼らも当初は狩りを行なっていた事がわかった。しかし、呪いのせいで体が思うように動かなくなったのだと判明した。春が近付くと、村人の中に呪いが解けたと言い出す人間が現れ始めた。ボクは丁寧に「呪いではなく、塩が不足して人が倒れるのに良く似た病」だと何度も説明した。村人たちは後遺症を残しながらも、活発に動き回るようになり、沼で釣りも始めるようになった。ワニは狩られたり追い散らされたりしたが、王子は「ワニはエサさえ確保できれば皮が有用なので飼育を考えたほうがいい」と主張して、一部は村の周りの穴の中で飼育される事になった。この穴も王子が主張して堀り始めたもので、最終的にはつなげて堀にするつもりらしい。王子いわく「村が富めば攻め込まれる」ということだ。確かにそうかもしれない。王子は春になったら帰ると言ったまま、村に居座り、村の整備を推し進めた。トウモロコシの生産、七面鳥の飼育、干し肉の加工、トウモロコシの皮から作る生活用品の製造、家屋の整備、堆肥の製造、灌漑に村の防備といった事を平行して推し進めた。ボクはその頃にはもう口を開けて眺めているだけの人間になっていて、唯一「比較的、清潔に使えるおまる」にアイディアを出しただけだった。彼らの誰一人として「臭くない便所」が成立しうる可能性を考えていなかったからだ。おまるには青草の類が予め敷き詰められて、ブツは敷かれた青草ごと回収され、そのまま堆肥製造に回される。このやり方はその後まだ進化していったが、これによってハエや悪臭に悩まされずにすんだし、一度大雨が降ったときに、村人たちは歓喜していた。以前は大雨が降るたびに便所にしていた穴からブツがあふれていたらしい。以降、村人たちは自発的にトイレを改良するようになった。


「センテオトル、やっとゆっくり話す時間ができましたね。」

「うん。」


発展する村の中に、王子が気を利かせて作ってくれた場所があった。それがこのトウモロコシの神センテオトルの神殿だった。蔵の中に作られた、この小さな部屋はボクとセンテオトルがゆっくり話ができる、村内で唯一の場所だった。


「ニシュタマリゼーション、伝わりましたよ。」

「うん。」


センテオトルは小窓から月を眺めていた。

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