表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その名はニシュタマリゼーション  作者: 古川モトイ
11/21

ハンティング

 トウモロコシの副産物を使った加工品の作り方を覚えたボクは、加工用の道具を真剣に欲していた。学校の社会の授業で習った磨製石器や打製石器に関する知識がこんなところで役に立つとは思いもしなかった。とりあえず手ごろな平たい石を刃にすると、それで水辺の植物が刈り取ろうと考えた。湿地はぬかるんでいるし、草が茂っていて怖いが、丈の高い草はロープを作るのに必要だった。トウモロコシの加工技術の中には縒る技術も含まれていた。トウモロコシの皮ではせいぜい籠を編むのが関の山だが、湿地の草を刈り取れれば、その技術の流用で頑丈なロープが得られるに違いない。


「ついでに池にアクセスできるように、道を切り開いてやる。」


村には井戸があったので水には困っていなかった。そして彼らは湿地には村人は近づかないようだ。センテオトルが何を考えているのかは分からないが、ボクはとりあえず、ある程度は豊かな暮らしを手に入れてやろうと決心していた。


「できれば魚が食いたいな。」


狼達が騒ぎ始めた。


「あ、ワニか。」


ボクは刈り取った草の束を抱えて、後ろに後ずさりする。


「いや、走ろう。」


走って逃げたが、アイツは食えそうだ。と言うか、アイツがいるということは、食える動物がいるということだ。あとはチラッと見えたが水鳥の類がいるようだ。逃げながら考えたが、鳥は結構どこにでも飛んでいる。何ならスズメはアホほどいるので、スズメを捕まえたら食える気がする。


「ワニはしばらくいいな。」


岩場まで走って逃げると、ボクはさっそくスズメ用の罠を作るための籠を作り始めた。罠なんて生まれて初めて作る。カゴにつっかえ棒をしてエサをまき、スズメが入ったのを確認してから紐を引く、例の罠を作ってみる。紐はまだ青いままの水辺の草だ。そもそもトウモロコシを干している段階から、スズメの類は散々周りにいた。


「食ってやるぞ……」


とりあえず、隠れるような物陰も、長いロープもないので地面に伏せてスズメを待つ。


「なんだこれ、すごいワクワクする。」


変なテンションになってきた。これは楽しい。狼達も何か気になる様子で遠巻きに見ている。


3羽のスズメが何も知らずに、いつもの図々しい顔でやってきた。普段は適当に手で払うだけだが今日はウェルカムだ。ボクは息をするのも忘れるほどに集中していた。地面に腹ばいになったボクは、チュンチュン言っているスズメと同じ目線で息を殺している。こうやって見るとなんという警戒心のないツラしてるんだ。


「取ったぁ!」


つっかえ棒を引くとカゴはスズメの上から落ちかかる。暴れたスズメはカゴから脱出しそうだったが、ボクがその上からカゴを潰さんばかりに押さえた。詳しくは書かないが、ボクはこの世界に来てから初めて肉を食べた。


「食べるところ少ないな。」


丸焼きにした。ほとんど骨だったが、捨てた骨は近くにいた狼がろくに噛まずに飲み込んでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ