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人名ではないんだよ
異世界に転移する作品が世の中に満ち溢れている現代、年間どれほどの人間が異世界に飛ばされているのか分かったものではない。そもそもボクが元いた世界がむしろ異世界だったのではないかと思うほどで、あの快適な世界を離れて分かるが、異世界なんてろくなもんじゃない。トイレが水洗ではない。エアコンがない。衣料の類がことごとく臭い。消臭剤がない。そもそも薬屋で売っている薬の大半がまともに効かない。とにかく、生活のレベルが劣悪なのだ。権力者になったとしても、元の世界にいた頃のほうが確実に良い生活をしていた。そうボクは権力者になったのだ。ボクを権力者に押し上げた秘密はたった一つ。ある技術をたまたま知っていたからだった。
その名はニシュタマリゼーション。