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第52話 伏する功労者

どろろ(2019)良き

無限におすすめ

 馬車の姿にも似た屋根から手引きの柄まで黒い鋼の荷車が2つ、横に並んでその縦幅3mの図体をガタゴト揺らす。引いて歩いているのはルイとメーティスである。1時間毎に代わる代わる引いて歩き、残りの仲間で荷車を取り囲む。荷車の荷台は前方の、これまた鋼造りの扉を固く閉め、その広い収納に幅を取ってテントとバッグを積んでいる。

 荷車の音に引けを取らぬ、鉄底靴の大合唱。これだけで魔物を呼び寄せるのではと思われたが、どうにも襲われるペースが早まることは無かった。それでも1日近く歩いてローズトードの集団と2度の交戦を果たした俺達はフィールド戦に慣れを感じ、或いは油断したのかもしれない。

 それが現れることなど露にも思わなかった。

「…トロール…!」

 それは音も無く、気配も無く、知らぬ間に後方に現れていた。逸早く接近に気付いたメーティスがガブノレを召喚し、その時間稼ぎに乗じて総員が戦闘体勢を整えた。…しかしそれは時間稼ぎになどならない。滑空するガブノレに対しトロールはのっしりと正面から歩み寄り、その手に持つ鋼の棍棒を以て眼にも留まらぬ右薙ぎを放った。ガブノレは重い一撃に地面を転げ、白い羽毛を散らかしながら汗と血に塗れ、そして転げきる頃には風となってその場から消えていた。

 頭頂から後ろ向きに2本の小さな角を生やし、額にはたった1つ大きな目玉をギョロギョロと回し、その身の丈3mの緑の鬼は隆々とした腕で棍棒を提げて歩く。…その威圧感に誰一人声も上げられない。

 …ガブノレがあぁも容易く倒されるとは、何て強さなんだ。…先の一撃でもその剛腕さが見て取れる。それもそのはず、本来トロールはこんなにもアムラハンに近い場所に現れる敵ではない。此処から更に南にあるアムラハンの関所からカーダ村の範囲を縄張りとしていた魔物だったのだ。…それが関所の崩壊と共にこんな所にまで足を伸ばしてきてしまった。

 固唾を呑んでじりじりと、俺は仲間達より前へと歩み出た。トロールはパチパチと単眼を瞬いて笑うような細い口を更に笑わせ、ズンと深く身体を屈めて右足を踏み出した。そしてその巨体が走り出すと同時に俺も真っ向から立ち向かい、そうした俺にジャックが続いて走り出した。

 トロールはその岩のように重い容姿に反して俊敏だった。パーティでも足の速い部類のはずの俺でも追い付けない程の疾走で近づき、そして俺の反応を超えて素早くその棍棒で横腹を打ち飛ばした。全身が粉々に砕けるような衝撃と痛みに顔をしかめて空中を舞い、地面を擦っていく内にその傷は修復する。

 俺の直後にジャックも反対に打ち抜かれ、俺と同様に宙を舞う。しかし2回連続の横薙ぎがトロールに隙を生み、ルイはその隙を狙って駆けつけていた。肩の入った全力の拳はトロールの胸へとまともに命中し、少なくとも1回は攻撃を当てたことに一瞬は安堵した。

 …しかし、それは楽観だった。ルイの右手はトロールの胸にめり込んだだけで、その胸を貫くことも砕くことも、抉ることも叶わなかった。そして直ぐ様トロールの棍棒は振り戻され、ルイはその攻撃に俺のいる方へと飛ばされてきていた。

 男は誰1人手も足も出ずに地面を這いつくばり、その身体からは既に大量の汗を流していた。ガブノレが一撃に伏せられたように、俺達もその一撃を受けただけで絶体絶命の窮地に立たされていた。未だトロールと対峙している女達も、身体能力では一切歯が立たないであろうことが明白となり、全員動き出すことも叶わぬまま青くなって震えていた。

 俺も声すら上げられない。恐怖が喉に詰まって何も言えない。ただ沈黙して這い、顔を上げた格好でその光景を見つめるしかない。トロールが棍棒を振り上げてロベリアの前に進んだその時になり、漸く発せた言葉は「逃げろ!」の一つだけだった。

 ロベリアはガチガチと歯を鳴らして足を竦ませ、ただ振り下ろされる棍棒を見開いた目で眺めていた。そこへキィマが躍り出て、ロベリアは押し飛ばされるままに悴んだ両脚を縺れさせて横に倒れる。棍棒はキッと睨み上げたキィマの額を真っ直ぐに割り、キィマは首から腰に掛けてをへし折られてパタリと膝をついて倒れた。その身体は修復と共に見る見る黒褪せていく。

 やられる順番が変わるだけで、トロールはまたその棍棒を振り上げる。…そう思って皆が歯を食い縛る中、トロールはフラリと肩を揺らし、静かに背中から倒れていた。…何が起きたのか…、と訝しんで立ち上がり見ると、トロールは目を瞑り大きな胸をゆっくりと上下させて寝息を立てていた。

 …眠っている?…不思議に思いルイと共に顔を見合わせ、忍び足で近づいて見ると、確かにトロールは熟睡していた。ジャックも目を閉じて自分に『ヒール』を施すと恐る恐る歩み寄り、トロールを警戒しつつ急ぎ足にキィマの下に跪いた。行動不能の状態で脱力したキィマを抱き上げて、ジャックは悔しそうに唇を噛んでいた。

 キィマはジャックと眼を合わせて嬉しそうに微笑むと、覇気の無い掠れた声を上げた。

「『スリープ』を使って眠らせたよ。…今の内に」

 俺はまたトロールに眼をやり、その眠りが確かなのを認めると、「急いで退散するぞ…!」と小声で指示を出した。ルイと2人、音がしないようにそれぞれの荷車を頭上に持ち上げ、慎重に歩いて立ち去った。パーティの足の速さを省みれば、走って逃げて気付かれるよりはこの方がマシだろう。

 キィマはジャックが背におぶって歩き、延々と気遣って慰める彼女にジャックは自分の不甲斐なさを嘆いているようだった。皆がその様子に心配して声を掛けまいとしている中、レシナは1人呆れたような細い目をその2人に向けていた。


「…100クルド…ですか…」

「はい、復帰薬の購入ですとその価格になります。病院で手術しての復帰でしたら80クルドで可能ですが…。こちらは入院の必要はございませんので、来院したその日に手術していただくことになります」

 金羽根手帳を手に病院へ出向き訊ねると、その羽根の形の金箔を見た受付嬢はパーティ番号等の確認の後速やかに告げた。同行してもらっていたレシナと顔を合わせると、彼女は肩を竦めて顔を振るだけだった。

 …今の俺のパーティは16クルド、レシナ達のパーティは34クルドを所持している。合計しても50クルドしかなく、手術にしても足りなかった。

「…やっぱフィールドに出て金を貯めるしかないか…。…けど、もしもまたトロールが出てきたら…正直キィマさん抜きで戦うのは辛い」

「そうね。あまり確実な方法ではないわ。キィマがいても厳しいというのに…」

 レシナは片手を腰に当てて溜め息をつくと受付嬢を威圧するようにじっと見つめる。受付嬢は少し怯えたようだが、「よせ」と俺が間に割って入ると両者とも多少落ち着いた。

「おい、回復薬5つ」

 突如、皮の装備に身を包んだ屈強な魔人が横から受付嬢に注文を出した。此方が滞らせていたので素直にその場を譲って脇に逃げていると、男はその間に手短にパーティ番号の照合を済ませた。受付嬢は一礼して内線を繋ぎ、注文品を持ってくるように連絡を取っていた。

「なぁ、そこの」

 男はニタリと笑ってレシナに舐め回すような視線を向けて声を掛け、俺は然り気無く彼女を庇うように前へ出て「何か?」と訊き返した。

「聞いてたぜ、金が足んねぇんだろ?何なら俺がその金持ってやろうか」

「それは…ありがたい申し出ですが、生憎此方には出せる対価がありません」

「なぁに、ちょっとそこのお嬢さんと茶ァでも飲みに行けりゃあ満足なんだ。少し話してみるだけだ」

 …下衆か。

「大変申し訳ありませんが、彼女には既に相手がいますから…」

「何だ、もしや俺が何かするってぇのか?親切で言ってやったのに無礼な奴だな。なぁ嬢ちゃんそうは思わねぇか?それにどのみち金がなきゃ仕方無ねぇだろ。魔人に金を貸しちゃあどこへ逃げられるもんだか分からねぇから、金融だって貸しちゃあくれねぇんだぜ。なぁに5時間だ。それだけ付き合ってくれりゃあいい」

 男の言い分に頑なに対立する俺の肩を掴み、横へ退けたレシナはスタスタと男の前へ歩いていこうとする。予想外にあっさりした態度に内心困惑していながらも、俺はレシナの腕を掴んで引き止めた。

「馬鹿っ、何考えてんだ!?君にはルイがいるだろ、裏切るのか!?」

 レシナは機械のように表情を変えないまま、男の足元を見下ろしてその場に立ち止まる。そのまま言い返すことも、俺の手を振り解くこともしないレシナに、男は待ち倦ねて手を伸ばした。しかしそこへ回復薬が届いて「お客様」と呼ばれると、男はフンと不機嫌に鼻を鳴らしてそれを受け取って俺達に背を向けた。

「強情がよ…。生き死にの世界なんだぜ。その内にきっと気付くぜ、プライドや善意なんて一文にもならねぇことにな。あばよ、若死に野郎」

 そう言い捨てて去る背中を見送っていると、「あの…」と困った様子で一部始終を見ていた受付嬢が俺の顔を窺っていた。俺はそれに笑い掛け、「一先ず帰ります」と告げるとレシナを引っ張って病院を後にした。レシナは外に出るとやんわり俺の手を引き剥がした。


 疎らにテントが張っている門前の広場の隅に、隠れるようにしてポツンと2つのテントが張られている。その片方が入口を開け放ち、その外からメーティスとロベリアが中を覗いて申し訳なさそうにしていた。

 2人が気付いて迎えてくれる中、俺とレシナはそのテントに入ってキィマの様子を見た。キィマはテントの真ん中に横たわってジャックに手を擦られ、テントの隅にはルイが胡座をかいて考え込んでいた。

 レシナはルイの傍に脚を畳んでぴとりとくっつき、媚びるように笑い掛けて脚や手に触れた。ルイはキィマに眼をやって不謹慎に思ったのかレシナを遠慮気味に押し退け、しかしレシナはキィマのことなど興味無いのかそれをやめなかった。俺はレシナの行動に疑問を抱いたが、口を出す気は無いため放置してルイに訊ねた。

「防具屋、行ってくれたか?制服…いや、探査旅行服の修繕は頼んだか?」

「あぁ、頼んできたよ。いいお爺さんだったな、何か凄い皮の鎧おすすめされたけど」

「そっか、そいつはお疲れ。…で、キィマのことで話があるんだが」

 と、今度はジャックを向いて告げた。ジャックは鬼気迫る程の真剣な表情で俺を見上げ、キィマを握る手に優しく力を込めた。キィマはそんなジャックを心配するように見つめ、俺はその2人の愛し合う姿に感銘を受けつつ話した。

「先に言っとくと、キィマさんにはHP機能を取り戻す手術を受けてもらうことになる」

 ありがとう、とジャックとキィマが同時に礼を言い、2人は互いに顔を見合わせて少し笑い出していた。それを暫し微笑んで眺め、ジャックが振り向くと話を続けた。

「俺達も当然金を出す。そもそも俺が指揮出来なかったのが始まりだし、キィマさんはロベリアを庇って行動不能に追い込まれたんだからな。…けど、それでも合計で50クルド。手術代の80クルドには届かない。キィマさんが抜けて黒魔法要員が減ればフィールドでの戦闘も厳しいだろう」

「…なら、どうすんだ?」

「この前リザードさん…防具屋の爺さんに聞いたんだけどな、探査旅行服ってのは幾重にも特殊加工して作られるものだから結構な値になるんだ。それを売れば1つで40クルドにもなる。それを足せば90クルドで、手術も可能になるんだ」

 ジャックはハッと息を呑み、膝で立って身を乗り出しながら「俺のを売って金にしてくれ!」と叫んだ。彼女のために、何か少しでも自分から力になりたいのだろう。その気持ちはよく分かった。とはいえ俺にも多少のプライドがある。だから一言だけ、

「…パーティのリーダーとして、同盟の指揮として、これは俺が負うべき責任だ。お前にはまた別のことをしてもらいたい。その時に防具も無しで戦われては此方が困るんだ」

 と、そのような抵抗をした。しかし、やはりジャックも気持ちを変える気は無い。ジャックは俺を睨んで「いいや、ダメだ!」と首を振って強く訴えた。

「お前が言う『別のこと』ってのは、きっとトロールとの再戦の作戦とかなんだろ?それは俺も引き受けてやるさ。だがな、それでも俺はここだけはお前には渡せねぇんだよ。キィマの手術代ってんなら、その糧になるのは俺だ。俺じゃなきゃ嫌だ!何をどう言われても、これだけは譲れねぇ!」

 ジャックの猛然とした叫びにキィマは感激し、泣きそうな顔で笑っている。俺はそれを眺めて思わず笑みを溢し、「…なら、分かった」と了承した。ジャックは安心したように座り直し、しかしまだ気は抜かず俺の目を見ていた。

「…で、それは明日そうするとして、問題のトロールな。さっきも言ったが、お前の事だし、もう作戦くらい思い付いてんだろ?」

「まぁな。かなりゴリ押しだが、現状だとぶっちゃけ他にやり方は無い」

「お前が言うんならそれしかねぇな。話してくれよ」

 ジャックは信頼を笑みで示して促した。俺は頷き、外の2人も招き入れて話して聞かせた。流石にテント1つにこの人数は辛いものがあったが、キィマを抜きにして話す訳にはいかない。全て説明し終えると、

「うん、ゴリ押しって言うか行き当たりばったりだな。1手目が迷子じゃねぇか」

 とジャックが呆れて鼻で笑ったが、別案は出なかった。…正直その1手目が最大の難関だ。しかしそれさえクリアすればことはスムーズに運ぶ。そのある意味賭けの多い作戦のため、各々にシミュレーションを命じてその日もテントで一夜を明かした。


 手術を経てその翌日から資金集めのフィールド探索を再開した。ローズトードとの戦闘を数回こなし、その間にもトロールとの戦闘のイメージを固めて各々が自身の役目のために努めた。そして3月4日、正午を過ぎてまた陽が少し傾く頃、その時は訪れた。

 遠くから轟音と共に高速で駆けつける緑の巨体、その数は2体。前回以上の緊張が背中を駆け巡る中、その2つの影がまだ遠い内に俺達は作戦を開始した。

 俺はキィマと共にパーティより15m程前に出てトロールの接近に備え、その後方にメーティスとルイを挟んで待機したジャックは左右に並ぶロベリアとレシナに肩を掴まれる。前方の俺達に守護されながら、ジャックは肩伝いに『パワー』、『スピード』の魔法を受けて身体能力を向上させ、自身でも『パワー』を使用する。それらの魔法は成功に10秒掛かり、それを繰り返す予定のため、邪魔が入らないように俺達が絶対の守備を貫かねばならない。ルイはメーティスと後ろ3人を守るための最終防衛ラインと言った所だが、出番が来ないのが理想的な立ち位置だ。

 作戦開始からまさに10秒、トロールは俺達の前に近づききり、俺はその1体へ向かって駆け出していた。ジャック達のための時間稼ぎは俺が命懸けで務める。しかし俺もただ真っ向から戦う訳ではない。ある程度の手段は用意してきた。

 俺と対峙したトロールは素早く棍棒を脇に引き、俺はそれが振り始まるより先に上空へと跳び上がる。棍棒を振ったトロールも、真横で立ち止まっていたトロールも俺を見上げて混乱したように口角を少し下げる。俺は空中にて既に召喚して現れていたガブノレの背中に乗り、その翻筋斗(もんどり)打つ飛行にしがみつく。そしてその眼下で俺を見上げていたトロールは、その隙を突いたキィマの『フリーズ』を避けもせず食らう。腰を引いたまま腕だけを伸ばした彼女の手の先から、冷気の霧が放射されてトロール達に纏わりつき、その霧は忽ち氷の柱と化す。

 体温がこの氷結に対抗して上昇し、溶けた氷からトロール達が抜け出しても、その頃には10秒は稼げているだろう。しかしそれだけで終わらせるつもりはない。ガブノレから元の場所に降り立つと、またトロール達に身体を向けて突の構えで待機する。ガブノレの召喚を一旦解除し、意識が戻ったメーティスは胸の前で指を組んで『祈り』を始める。…メーティスにはまだ働いてもらう必要があるため、MPは少しでも回復してもらった方がいいのだ。

 暫くして予定通りトロールが氷を破って復活し、2体は共に俺を向いて駆け出した。2体の意識が俺に向くことも計算に入れていたことだ。作戦に従い、キィマは俺の前へと躍り出て右手を突き出す。2体は此処で『フリーズ』の主を知り、それを警戒する。確かにトロールの足ならば魔法が来ると分かれば簡単に避けられるだろう。…しかしこれはフェイントだった。キィマは向かって左手にいるトロールにその手を指し、トロールは警戒を強めてキィマを睨む。そしてまんまとキィマの目を見てしまい、『スリープ』の発動を許していた。

 眠りについた1体は走っていた勢いのままバタリと倒れ込み、残る1体はそれを見てキィマの足下に視点を変える。そしてキィマの正面に辿り着き、矢継ぎ早に棍棒を振りかざす。キィマは透かさず飛び退くが、彼女がリーチを抜け出せない内から棍棒は振り下ろされていた。しかしそれも計算内だ。俺は彼女が跳びながら後方に差し出した左腕を掴むと、グッと素早く引いて彼女の後退を助ける。棍棒は靡いたキィマの前髪を掠めて地面を打ち、トロールは腹立たしげに顔を上げる。そしてそこへガブノレが現れ、トロールの興味がそちらに逸れると共に俺達は勝利を確信する。

 ガブノレはその青い目を稲妻のように光らせ、その発光を眼にしたトロールは『スリープ』に掛かって眠りこける。前回の戦いでスリープの効果はそれなりに長く続くことは分かっている。これで心置き無くジャックの強化に専念出来た。10、20と時間が経ち、ジャックの身体はトロールと戦う準備を整える。作戦開始からこれで40秒、身体能力向上の期間は魔法が掛かってからの80秒だ。…万全な体勢で臨めるこの50秒の内に決まれば俺達の勝利、決まらなければ劣勢となり最悪全滅だ。

 一同の視線が集まる中、ジャックはキィマに笑い掛けた。「見てろ、ぜってぇ勝つから」と、いつかと同じのような台詞を残し、ジャックは地に伏せて眠るトロール達の下へと走り出した。その巨体を蹴飛ばし、貫き、打ち砕く。トロールの攻撃はそれを超える俊敏さにより全て避け、対してジャックの素早く重い攻撃は全てまともにトロールの肉体を打ちのめしていく。それぞれに2発ずつ、たったそれだけの攻撃でトロールは黒褪せて倒れ、両者とも最期にジャックの拳を胸に受けて灰となって消えていった。

 ジャックは舞い上がるそれを見届けて息を整えると、いつもの活発な笑顔を湛えて振り返り勝利のピースを向けていた。皆が安堵と喜びに頬を弛めると、真っ先にキィマが駆け寄っていってジャックに抱き着いていた。

「やった、やったよ!ジャックが勝った!」

 子供のようなはしゃぎようのキィマにジャックは照れ臭そうに顔を赤くして笑い、

「へっ、よゆーよゆー!当たり前だっての!」

 と胸を張る。続いてルイ、ロベリア、レシナと歩いていき、それぞれがジャックを讃え、あるいは労っていた。メーティスもニコニコと嬉しそうに笑いながらトタトタ歩いていこうとしていたが、ふと俺を振り返って足を止めていた。

 俺はただのんびりした心地でジャックとキィマを眺めていただけだった。引き返してきたメーティスに「どうした?行かないのか?」と不思議に思って言うと、不意ににへらとだらしなく笑ったメーティスは俺の手を握って横に並んだ。

「レム、嬉しそうだね。2人が仲良くしてるの見てる時って、レム、いつも笑顔だよね」

「まぁ、そりゃあ…」

「レム、今日は…っていうか、ここ最近は、だね。…とにかく、お疲れ様。勝ったのはレムのお蔭。…レム、かっこいいよ!」

「お、おー。それはどうも」

 纏まりの無い、というより筋の無い会話をしているメーティスに、俺は変に思って首を傾げていた。何が可笑しいのか、メーティスはそうした俺の様子にクスクスと笑っている。意味が分からず混乱していながらも、2人で手を繋いだまま遠くでワイワイ賑わっているジャック達を眺めた。彼らが俺達に気付いて騒ぎながら歩いてくるのを見ていると、不意にメーティスがまた俺を向いた。俺もそれに顔を合わせると、メーティスは一層締まりの無い笑みを浮かべた。

「お帰り、レム」

 突然のその言葉に益々分からなくなった俺は苦笑混じりに「どういう意味だ?」と訊き返す。「どういう意味だろうねっ」とメーティスははぐらかして笑った。…まぁ、彼女が喜んでくれるならそれでいいのだろう。

 …1年後にはクリスの力になれるといいな。楽しそうに肩を組むジャックとキィマの姿を眺め、仰いだ青空に胸を馳せた。

レム

Lv.12 HP39 MP24 攻39 防31(26) 速39 精13 属性:氷

装備 旅人の服(防5)

黒魔法 コールド(50秒間防10低下、消費MP6)、

バイオ(毒、消費MP6)


メーティス

Lv.12 HP46 MP12 攻13 防31(26) 速39 精25 属性:炎

装備 旅人の服(防5)

コマンド 祈り(5秒でMP1回復)

召喚 ガブノレ(5秒でMP1消費)


ガブノレ

HP20 攻30 防20 速30 精15 耐性:なし

行動 引っ掻く、突つく、飛翔、スリープ(相手を眠らせる、消費MP8)


ロベリア

Lv.12 HP48 MP24 攻26 防18(13) 速26 精13 属性:風

装備 旅人の服(防5)

白魔法 ヒール(HP30回復、消費MP3)、

パワー(80秒間攻20上昇、消費MP6、10秒必要)、

ノーウィンド(風魔法を無効とする半径10mの空間、5分持続、消費MP12)


ジャック

Lv.12 HP42 MP36 攻26 防26 速39 精13 属性:炎

装備 布の服

白魔法 ヒール、パワー


ルイ

Lv.12 HP52 MP24 攻39 防44(39) 速26 精13 属性:風

装備 旅人の服(防5)

白魔法 デトクス(状態異常解消、消費MP5)、ノーウィンド


キィマ

Lv.12 HP32 MP24 攻13 防18(13) 速26 精15 属性:氷

装備 旅人の服(防5)

黒魔法 コールド、

フリーズ(防20低下、10秒停止、消費MP12)、バイオ、

スリープ


レシナ

Lv.12 HP20 MP36 攻13 防31(26) 速13 精14 属性:風

装備 旅人の服(防5)

白魔法 ヒール、

スピード(80秒間速10上昇、消費MP8、10秒必要)、

キュアー(HP120回復、消費MP15)、

ディフェンス(80秒間防15上昇、消費MP6)


トロール

HP120 MP0 攻80(70) 防60 速50 精10 耐性:なし 弱点:なし 経験800 金40

装備 棍棒(攻10、耐性500)

行動:殴る、棍棒で殴る、防御

持ち物 回復薬

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